教育

『塀の中の教室』安部顕。元法務教官による少年院という場所。

少年院って聞いてぱっとどんなところか思いつく人は少ないと思います。

この本は少年院をよく知らない人でも簡単にイメージがわくいい本だと感じます。

今回紹介するのは、安部顕さんの『塀の中の教室 「少年院は教育機関」元法務教官が語る更生の現場』です!

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Kindle本なので、現時点では書店なんかには置いておらず、電子書籍でのみの販売となります。

もしかしたらそのうち、紙の本になるかもしれませんが。

ここでは『塀の中の教室』の簡単な内容と感想を紹介していきます。

Contents

著者の安部顕さん

著者の安部顕さんは、元法務教官の心理カウンセラーです。

法務教官というのは、少年院や少年鑑別所で働く公務員のことですね。

現役の法務教官だったときから、Twitterで匿名の法務教官として2018年から発信を開始していました。

2021年3月に法務教官を退職し、カウンセラーとして活動しながら、教員や学童指導員等に多雨する研修も行っているそうです。

さて、少年院といっても、いろんな種類があります。

いまは第1種少年院、第2種少年院といった呼び方をしますが、期間が約1年の少年院と半年程度の少年院にわけられていたり、非行性によって、入る少年院がわけられていたりします。

中には何度も非行を繰り返して、少年院が2回目3回目という非行少年が集まっている少年院もあります。

安部顕さんの働いていた少年院はその中でも比較的一般的な少年院にあたるというイメージでいるといいかなと思います。

前半は少年院というものについて

少年院って存在や名前は知っていてもどんなところか具体的に知っている人って少ないと思います。

ましてや、ネットで調べようにも、国の法務省のホームページなどで紹介されている内容って、堅苦しい書き方をしていてよくわからないんですよね。

その点、『塀の中の教室』では、具体的にどんなことをしているのかが紹介されているのでかなりイメージがわきやすいと思います。

たとえば、

〇少年院の全体像

〇少年院での時間割

〇週末の教育活動

〇少年院の中での勉強

〇どんな子が入ってくるのか

〇法務教官の役割

なんてことが書かれているんですね。

これを読むだけでもなんとなく少年院での生活が見えてきます。

後半は著者の体験から感じること

後半には、著者の安部顕さんが法務教官として勤務してきて感じたことがつづられています。

安部顕さんは、法務教官として、現場で働き続けてきた方です。

直接かかわってきたからこそ感じるものが多いのだと思います。

『塀の中の教室』の中でも、子どもたちがどのように少年院の生活を送ることで変化してきたのか、少年たちの内面や非行にいたった背景もまた読んでいて興味深いものでした。

また、少年院を出た後の話にも少し触れており、少年たちにとっても、少年院を出ることが終わりなのではなく、人生再出発のスタートなのだと感じさせられます。

ほかの本よりも現場に近い一冊!

元法務教官が書いた本……というのはそれなりに存在します。

私自身もそうした本を興味があって買っては読んでいますが、『塀の中の教室』は、その中でも少し毛色が違うかなと思います。

というのも、元法務教官と名乗っていてもそこには明確なキャリアの違いがあります。

法務教官って国家公務員なんですよね。

なので、転勤はつきものだし、一般の職員の幹部になる職員とがいます。

そして本を出すのは、幹部コースの人だった割合が高い!

当然、幹部となるような人って、現場で直接少年たちに接する機会が少ないです。

勤務して最初の数年くらいでしょうか。

だから、法務教官を辞めて本を出すころには、感覚が幹部のものとなっていて、現場の第一線にいる人とは熱量も違うものです。

 

また、元法務教官といい、本を出している人の経歴を見てみると、どちらかというと法務教官歴が短い人がけっこう多い……。

まあたしかに一年でも働けば元法務教官は名乗れます。

だからうそはついていないのですが、数年働いただけで、

「私は少年院をよく知っている」

ということは実際にはないわけです。

だからそうした人の本ってもっともらしいことは書いていても、現場で直に関わって得てきた情熱が伝わってこないこともあります。

『塀の中の教室』を書いた安部顕さんは、正確なところはわかりませんが、経歴的に、現場で10年以上は少年の相手をしてきているように感じます。

そうした人だからこそ、本の内容にも納得できる部分が多いのかなと思いました。

おわりに

『塀の中の教室』は、少年院についてこれから知りたいという人にはぴったりの本です。

初心者向けというか、導入の本にはいいかなと思います。

読んでいて、

「本当はもっと言いたいことがたくさんあるんだろうな」

ということを感じます。

でも、この本では、少年院というものを知ってもらうことに主眼が置いてあるような感じでしたので、かなり抑えて書いているのかなと思いました。

個人的にはもっと深く切り込んだものもいつか読んでみたいですね。

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また、『塀の中の教室』以外にも少年院について書かれた本はいくつかあるのでこちらも紹介しておきます。