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アリバイ崩しといえばこの名作!松本清張『点と線』のあらすじと感想。

推理小説の有名な著者は数ありますが、日本においてはこの人を知らない人は少ないでしょう。

今回読んだのは、松本清張の『点と線』です!

松本清張といえば、この『点と線』以外にも、『眼の壁』、『砂の器』、『ゼロの焦点』など、有名な作品が数多くあります。

1953年には、『或る「小倉日記」伝』で芥川賞も受賞していますね。

いまでは、文藝春秋が主催する『松本清張賞』という長編小説の文学賞があるくらいです。

ここでは、『点と線』のあらすじや感想を紹介していきます。

Contents

『点と線』のあらすじ

××省における汚職事件の重要参考人であった佐山が東京から遥か離れた博多で遺体として発見された。

佐山は、料亭「小雪」で女中として働いていたお時と寄り添うように倒れていた。

警察は、捜査の手が上司に及ぶのを防ぐために佐山が自殺を試みて、交際相手であったお時が、同情して心中した、いわゆる情死であると断定をする。

佐山とお時が東京駅で、仲睦まじく、夜行特急列車「あさかぜ」に乗り込むところは、機械工具商会を経営する安田辰郎と、「小雪」で働くお時の同僚が見ていた。

状況的にもおかしな点はなく、ありふれた情死だとだれもが思う中、二人の人物が疑念を持つ。

博多のベテラン刑事・鳥飼重太郎は、佐山が持っていた車内食堂の伝票から、事件を探り始めた。

また、××省の汚職事件を追っていた本庁の刑事・三原もまた、狭山の死の真相を知ろうと行動を開始する。

時代を感じる中身なのにいまも楽しめる名作!

『点と線』は昭和46年に出版されました。

当然、時代を考えると、いまと異なる点がたくさんあるんですよね。

携帯電話なんてもちろんありませんし、船の便だと、乗客は自分の名前を紙に二枚書いて、一つを出発地点、もう一つを到着地点に保存するなんてシーンも出てきます。

いまの世代の人たちからすると、そんな時代もあったんだなと思う場面が多いのに、それでもおもしろく、どきどきさせられるからすごいと思います。

この時代の警察も、いまと捜査方法もかなり違うでしょう。

地道で蜘蛛の糸をたどるような険しい捜査。

だからこそ、感じ入るものがあるのかもしれません。

勘違いしていた点と線

『点と線』というタイトルを聞いて、私は思いっきり勘違いしていたんですよね。

よく、点と点をつないで一本の線にする、なんて言い回しもありますよね。

だから、証拠(点)同士をつなげていって、一つの真実(線)にたどり着くって意味だと思っていたらこれが大間違い!

この点と線は、思い込みとか先入観のことを指していたようです。

この思い込みは、小説においてもとても重要なキーワードです。

そこに本当に妥当性はあるのか、自分の主観ではなく、事実としてそれは正しいのか。

人間ってあまりに簡単に誘導されてしまうのだと思いました。

私自身も、点と線って言葉に勝手に先入観を持って小説を読み始めてしまいました。

もっと、フラットで客観的に見ることのできる力が必要だなと感じます。

おわりに

時代がかなり昔のなので、そういった小説が苦手な人は読みづらいかもしれません。

でも、気にならない人なら、文章もいまにあったもので出ていますし、単純に推理小説として楽しめます。

割と序盤に犯人はこの人だろうとわかるのですが、どうしてもその人のアリバイが崩せない。

三原刑事がどうやってそのアリバイを崩していくのか見ごたえのある小説でした。