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ミステリーといえばこれ!アガサ・クリスティー『そして誰もいなくなった』あらすじと感想。

世の中にミステリー小説は数限りなく存在しますが、この作品を知らない人はいないでしょう。

今回読んだのは、アガサ・クリスティーの『そして誰もいなくなった』です!

この作品に影響を受けた作品はとても多く、そちらも一緒に読んでみるのもおもしろいです。

ここでは、『そして誰もいなくなった』のあらすじや感想を紹介していきます。

Contents

『そして誰もいなくなった』のあらすじ

イギリス、デヴォン州の兵隊島。

ヨット好きの大金持ちがこの島を買い取り、豪奢な邸宅を建てたが、その妻が船酔いをするため、売りに出された。

新聞にでかでかと広告が出され、最終的にオーエンという人物がその島を買い取ることになった。

この一連の話はゴシップ誌で様々な推測がなされ、多くの人の耳にするところとなった。

 

そんな兵隊島に、年齢も職業も異なる8人の男女が招かれた。

一週間前にオーエン氏に雇われたという使用人の夫婦が8人を出迎えたが、招待状の差出人でこの島の主でもあるオーエン夫妻は遅れるといい姿を現さなかった。

もてなすために必要なものはそろっていたため、皆、自由に過ごすことになる。

一人一人に個室が用意されており、その部屋には10人の兵隊のことが書かれた古い童謡の詩が額に入って飾られていた。

夕食の時間になり、全員が部屋から出てきて集まることになる。

その部屋の丸いテーブルには、小さな陶器の10個の兵隊人形が置かれていた。

部屋の詩と同じように兵隊島になぞらえているのだと話しながら夕食を楽しみ、みなが休んでいるときであった。

急に人間のものとは思えない声が部屋に響く。

それは、使用人を含めたその場にいる10人を糾弾するものであった。

それぞれが過去に罪を犯しているという告発であった。

驚き憤慨するもの、恐怖に震えるもの。

みなが告発内容を否定する。

そして、自分達への招待状が虚偽の物であったことに気づく。

不安が広がる中、一人がグラスに入った酒を一気に煽った瞬間、激しくむせて顔を歪めたあとその場に倒れ込んで死んでしまう。

さらに翌朝には、別の女性もまた寝室から死んでしまっていた。

残された者たちは、それが部屋に掛けられていた童謡の詩になぞらえたものであること、10個あったはずの兵隊人形が8個に減っていることに気づく。

タイトルが盛大なネタバレなのにおもしろすぎる!

私自身、『そして誰もいなくなった』は、タイトルだけはずっと知っていました。

このタイトルってまたすごいですよね。

もうタイトルが盛大なネタバレになっているっていう。

「この小説全員いなくなるのか!」

って読む前に思っちゃいますよね。

だからなんとなく、これまで読んでこなかったのですが、読んでびっくりです。

誰もいなくなるってわかっているのにすごくおもしろい!

いったい誰が犯人なのかがさっぱりわからず、登場人物が疑心暗鬼に陥っていく姿がまた見事でした。

影響を受けた数々の名作たち!

『そして誰もいなくなった』は数多くの名作たちに影響を与えています。

絶海の孤島、クローズドサークル、見立て殺人。

ここから波及して生み出された作品はどれくらいになるのでしょうか。

たとえば、綾辻行人さんの『十角館の殺人』があります。

新本格ミステリーのブームを巻き起こしたと言われる超有名作ですね。

ミステリーサークルの部員たちが無人島に集まる中で、外部との連絡が取れないまま殺人事件が起きていくという話です。

この小説を一番好きな作品としてあげる読書家の人も多く、読んで間違いのない一冊です。

私が個人的に好きなのは、米澤穂信さんの『インシテミル』です。

高額バイトにつられて集まった男女が、閉ざされた建物の中で殺し合う話です。

こんな簡単な話ではないんですけどとりあえず。

私は『インシテミル』を先に読んでいて、すごく好きになりました。

今回、『そして誰もいなくなった』の中身を知らずに読んだものだから、

「あれ?展開の仕方が『インシテミル』そっくりじゃない?」

と妙な気分になってしまいました。

出だしの登場人物の紹介とかすごくデジャブで、そこでようやく、『インシテミル』って、『そして誰もいなくなった』から来ているんだなと気づいたわけです。

そういえば『インシテミル』の中に、『そして誰もいなくなった』のことが出てきていたなと今さらながら感じました。

それ以外にも、タイトルがそのままのものもけっこうあるんですね。

夏樹静子さんの『そして誰かいなくなった』

イヴ・ジャックマール、ジャン・ミシェル・セネカルの『「そして誰もいなくなった」殺人事件』

今邑彩さんの『そして誰もいなくなる』

このあたりはなかなか大胆ですよね。

このへんも合わせて読んでみたいです。

おわりに

アガサ・クリスティーの中でも特に有名な『そして誰もいなくなった』でした。

初めて読んだクリスティーの作品でしたが、思っていた以上におもしろく、昔の本だからという偏見を持っていた自分が恥ずかしいです。

次は『ABC殺人事件』とか読みたいですね。

これも米澤穂信さんの『クドリャフカの順番』に影響を与えているそうなので、かなり気になっています。

昔の有名なミステリーを読んでおくと、いまの小説ももっといろんな視点で楽しめるようになるんだなって感じます。

海外のミステリーもこれから挑戦していきます。