〈小市民〉シリーズ

米澤穂信『巴里マカロンの謎』あらすじ・ネタバレあり。11年ぶりの〈小市民〉シリーズ!

もう新作はでないと思っていました!

ついに11年ぶりに米澤穂信さんの〈小市民〉シリーズが発売されました!

〈小市民〉シリーズの第4巻のタイトルは、

『巴里マカロンの謎』です!

 

てっきり、『冬季限定~~』という作品が来ると思っていたのでびっくりです。

『巴里マカロンの謎』は〈小市民〉シリーズ初の短編集。

〇巴里マカロンの謎

〇紐育チーズケーキの謎

〇伯林あげぱんの謎

〇花府(フィレンツェ)シュークリームの謎

の4編からなります。

小鳩くんと小佐内さんがまだ高校1年生なので、『春季限定いちごタルト事件』と『夏季限定トロピカルパフェ事件』の間の話になります。

どの作品もほっこりしつつ読まさせていただきました。

『巴里マカロンの謎』あらすじ

巴里マカロンの謎

舞台は名古屋に新しくオープンした洋菓子店。

そのお店のティー&マカロンセットで注文できるマカロンは三種類。

小鳩くんはマカロン要員として小佐内さんのお供をします。

 

小佐内さんが席を外しているときに注文したマカロンが届きます。

まずは小鳩くん。

パーシモンとバナーヌとカカオのマカロン。

そのあと小鳩くんが少し目を離したすきに小佐内さんのマカロンも机に置かれます。

小佐内さんも戻ってきていざマカロンを食べよう……。

ところが、小佐内さんのお皿にはあるはずのない4つ目のマカロンが存在した!

小佐内さんは迷いに迷っていたので自分がどのマカロンを注文したのかが思い出せない。

いったいなぜ4つ目のマカロンは置かれたのか、4つ目のマカロンはどれなのか。

 

時間軸としては、高校1年生の9月半ば。

夏休みにとある理由で帰宅が大幅に遅くなったのを、小佐内さんに文化祭の準備だと説明してもらったことがあり、そのお返しとして名古屋まで行くことに。

小鳩くんは特に苦労をすることもなく、マカロンを特定。

しかし、マカロンの中には指輪が入っていて……。

一つのマカロンにまつわる様々な想いが錯綜する一作です。

紐育(ニューヨーク)チーズケーキの謎

前編の『巴里マカロンの謎』から1か月後。

10月の涼しい金曜日に小佐内さんに誘われます。

「こんどの日曜日、つきあってくれない?」

と。

それは中学校の文化祭へのお誘いでした。

『巴里マカロンの謎』の際に知り合った古城秋桜がお菓子作り同好会に参加しているため、そこで出されるニューヨークケーキを食べにいくというもの。

ニューヨークケーキに舌鼓を打ち、それぞれ文化祭を楽しむ小鳩くんと小佐内さん。

しかし、そんな二人が事件に巻き込まれる。

グラウンドの中央に設置されているキャンプファイヤー。

小佐内さんは古城さんと一緒にそこに近づくと(マシュマロを焼いて食べようとしていた!)、後方から慌てて走ってくる男子学生が!

直前で気づいた両者が避けようとして、小佐内さんと男子学生は衝突してしまいます。

そのあと、男子学生を追いかけてきた先輩とおぼしき男たち。

男たちは逃げていた男子学生を暴力をふるったあと、小佐内さんにCDを出すよう要求し、そのまま拉致していきます。

よく連れ去られる小佐内さん。

果たして小鳩くんは無事に小佐内さんを助け出せるのか、消えたCDの行方は!?

伯林(ベルリン)あげぱんの謎

年の終わりが見えてきたある日。

とあるので、おそらく12月ころの出来事です。

新聞部のアンケートを届けに向かう小鳩くんは、新聞部の友人・堂島から依頼を受けます。

新聞部では、ちょうどそのころ、ドイツ風揚げパン『ベルリーナー・プファンクーヘン』を記事にすることになっていました。

ベルリーナ・プファンクーヘンとは、

「名前の通りベルリン名物で大きさはふつうゲンコツ大、パンはただ揚げただけじゃなく、中にジャムを入れている。

年末なんかにこの揚げパンをたっぷり用意して、いくつかにはマスタードを詰め、みんなで食べて誰にマスタード入りが当たるか遊ぶゲームがあるそうだ」

(米澤穂信『巴里マカロンの謎』(伯林あげぱんの謎)より)

といった食べ物のようです。

実際に新聞部員でマスタード入りを一つ用意して、食べてみることにしました。

しかし、なぜか全員が「おいしい」揚げパンを食べたと申告。

小鳩くんはこの解決を頼まれます。

なぜ全員が「おいしい」と言ったのか。

マスタードは本当に入っていたのか。

新聞部員の小さな嘘や自尊心がまた話を複雑にしていきます。

小鳩くんは真相にたどり着けるのか。

花府(フィレンチェ)シュークリームの謎

年が明けて小鳩くんは小佐内さんに誘われておしるこを食べに甘味処へ。

2杯目のおしるこを注文しようとしたところで小佐内さんの携帯電話がなります。

電話をかけてきたのは古城秋桜さん。

飲酒の疑いをかけられて学校を停学になった、無実なのに!と。

 

自分が飲酒をしたと嘘をついた犯人を知りたいという古城さんに小佐内さんは尋ねます。

「隠されたことを知ろうとすれば、たいてい代償を払うことになる。

こんなことをしてまで知りたい訳じゃなかったと思うことがあるかもしれない。

それでも?何が何でも?」

(米澤穂信『巴里マカロンの謎』(花府シュークリームの謎)より)

何が何でも知りたい!という古城さんのために、小鳩くんと小佐内さんは無実を証明するために動き出します。

二人の関係を思いながら

最初にも述べたとおり、『巴里マカロンの謎』は小鳩くんと小佐内さんが高校1年生のときの出来事です。

『春季限定いちごタルト事件』で小市民の星を目指していた二人。

『夏季限定トロピカルパフェ事件』でお互いの本性を再確認し、互恵関係を解除した二人。

この二つの事件の間に起きた出来事ということで、その時期の二人の関係を思い返しながら読ませてもらいました。

『春季限定いちごタルト事件』のころよりも少し距離が近く、『夏季限定トロピカルパフェ事件』よりもまだ遠慮がある。

この『巴里マカロンの謎』を読んだあとだと、『夏季限定トロピカルパフェ事件』の見え方も少し変わってくる気がします。

また読み返したくなってきますね。

今回もおいしそうな食べ物が……

〈小市民〉シリーズでは毎回おいしそうなスイーツが登場します。

今回もまたこちらの食欲を刺激する描写がいっぱい。

おしるこも食べたくなるし、ニューヨークチーズケーキの作り方で、そんなにふつうのチーズケーキと違うとは知らなかった。

ベルリン揚げパンもうちでもぜひやってみたい!

こんなパンみたいです。とてもおいしそう……。

巴里・紐育……読めません

今回は4編のタイトルに海外の都市の名前が使われています。

でもパッと見て読めませんよね。

〇巴里=パリ

〇紐育=ニューヨーク

〇伯林=ベルリン

〇花府=フィレンチェ

それぞれ上記のようになります。

こうして漢字にしてみているのもおもしろいですね。

『巴里マカロンの謎』とは関係ないですが、ほかにも海外の都市を漢字にすると、

〇維納=ウィーン

〇那波里=ナポリ

〇馬徳里=マドリード

〇羅馬=ローマ

〇倫敦=ロンドン

なんてものもあります。

こういったタイトルのちょっとした表記一つにもいたずら心というか、言葉一つ一つを選んでいるなと感じさせられます。

米澤穂信さんの作品のこういうところがとても好きです。

目の前の状況の中で最善を尽くしているか

『紐育チーズケーキの謎』の中で、文化祭で出されたチーズケーキをおいしそうに食べる小佐内さん。

いつもおいしいスイーツを食べているはずの小佐内さんに、小鳩くんが疑問を投げかけます。

それに対する小佐内さんの返事。

「いつだって最高のものを求めるのは求道者っぽくて格好よく見えるかもしれないけど、実際は何を食べても『あれに比べればね』なんて言っちゃうスノッブに過ぎない」

(米澤穂信『巴里マカロンの謎』(紐育チーズケーキの謎』より)

スノッブというのは、『俗物』という意味。

「知識・教養をひけらかす見栄張りの気取り屋」といった意味でも使われます。

文化祭のケーキよりも、最高の素材を使ってプロが作ったものの方がおいしいのは当然。

でも大切なのはそこではない。

いま目の前にある状況だけでどれだけ思いを込めて真摯に向き合ったのか。

最善を尽くしたのかということが大事なのである、と。

物語自体には特に影響を与える場面ではないけれど、こうしたセリフが随所に出てくるのも、米澤穂信さんの作品を読む楽しみの一つです。

おわりに

さて、ひさしぶりの〈小市民〉シリーズも満足です。

『冬季限定~~』が出てくるのがいまから楽しみですね。

『巴里マカロンの謎』の最後で、

口許に両手を当て、目を潤ませ、小佐内さんはかろうじて言う。

「ええと、ねえ、わたし、死ぬの?」

(米澤穂信『巴里マカロンの謎』(花府シュークリームの謎)より)

小佐内さんがとても幸せな気持ちになれたのは読んでいてうれしい気持ちになります。

どんな幸せなことがあったかは本作を読んで確かめてください。