住野よる

忘れてしまってもいいんだ。住野よる『この気持ちもいつか忘れる』

好きな作家さんと好きなアーティスト!

好きな人たちがコラボしたら最強じゃないですか!

こんな素敵な企画が行われていたことを知らなかったなんて!

今回読んだのは、住野よるさんの『この気持ちもいつか忘れる』です!

本作は、住野よるさんの7作目にあたる長編小説ですね。

なんと、THE BACK HORNとの共同制作によって生み出された作品で、楽曲を聞きながら小説を読むことで、より深く物語に入り込んでいくことができます。

本気で知らなかったことにショックです。

遅くなりましたが、読んで聞いて大満足です!

ここでは、『この気持ちもいつか忘れる』のあらすじや感想を紹介していきます。

Contents

『この気持ちもいつか忘れる』のあらすじ

高校生の鈴木香弥(カヤ)は、人生をつまらないものだと感じていた。

無気力に学生生活を送り、クラスメイトともほとんど関わりを持たない。

学校が終わればすぐに家に帰り、一人で走りに行くのが日課だった。

ある日、ランニングをしていたカヤは、休憩しようと立ち寄った、使われなくなったバス停で目と爪だけが光った存在と遭遇する。

それは異世界の少女、チカだった。

チカの世界では日常的に戦争が行われており、その避難所がとカヤの世界のバス停とつながっていたのだ。

お互いのことや周りで起きていることを話すカヤとチカ。

そうする中で、二つの世界が、ほかにもリンクするものがあるのではないかと感じ、二つの世界に干渉する方法を探して実験を行ったり、互いの文化を教え合ったりして過ごしていた。

カヤはチカと交流を深めるうちに、彼女に向けた恋心に気がつく。

何者でもなかった自分に生まれた特別なもの。

カヤにとってチカとの時間が何よりも大切なものとなっていく。

THE BACK HORNとの共同制作という素敵な試み!

いやーふつうに小説を読もうと思ったら冒頭に書いてあるじゃないですか!

THE BACK HORNとの共同制作によって生まれた作品であると!

遡ること二十年くらいですかね。

THE BACK HORNってすごく聞いていたな―。

『罠』とか、『幾千光年の孤独』とか、『コバルトブルー』とか、『サニー』とか。

すごく好きで、あの低く独特の声がいいんですよね。

さわやかさとか青春とかってものではなく、もっと深く泥臭い感じの曲が多いんですけど、それがいろいろ悩んでいた十代の頃にヒットしたんです。

小説を読んで久々に聞いたら、やっぱり最高に素敵でした。

さて、この『この気持ちもいつか忘れる』の最後にも、THE BACK HORNの楽曲の歌詞がのっています。

さっそく聞こうと思ってYouTubeを開いたら、『輪郭』や『突風』は出てきましたね。

CDも買っちゃおうかな。

てか、買えるのかな?

初回生産で本についてたみたいだけど。

共同制作だけあって、小説と楽曲がぴったりで。

曲を聞きながら小説のシーンが思い浮かぶってなかなかできる体験じゃないですね!

特別というものを特別視すること

カヤにとって人生はつまらない。

クラスメイトたちが何かのふりをして生きているのも馬鹿らしいし、どこか見下すような気持ちで生きていました。

でも、チカという存在がカヤを変えていく。

少しずつ、自分にとって特別になっていくチカ。

それがカヤの生きる原動力に変わっていきます。

そこからのカヤって、情熱的と言えばいいですが、盲目的でちょっとやばい。

特別ななにかを特別視しすぎて、周りが見えなくなっていきます。

この特別なものを求める気持ちってやっぱり誰にでもあるんですよね。

誰かにとって特別でありたい。

自分自身が周囲とは違う存在でいたい。

特別だと思える存在に出会いたい。

特別に対して求めるものは違っても、特別ということは、人にとって憧れなのかなって思います。

ほかの作家さんの小説でも、特別ななにかをテーマにしたものってけっこうあるんですよね。

先日読んだ渡辺優さんの『アヤとあや』でも、特別じゃなくなっていく自分に苦悩する姿が印象的でした。

芦沢央さんの『僕の神さま』も、特別ってことを考えさせられる小説でしたね。

いろんな作家さんがこうして描くほど、特別ってことはやはり特別。

自分の中で特別なものってなんなのだろうって考えさせられます。

いつかは忘れてしまうもの

自分にとっての黄金時代っていつでしょうか。

ピークとか、青春とかいろんな呼び方がありますね。

カヤにとってはチカと出会ったあの時期がまさにそれ。

でも、どんなに輝かしかった時代でも、いつかは忘れてしまうもの。

あのときの記憶は残っていても、そのときの熱や感情や質感をそのまま持ち続けるってことはできない。

だからといってそれは悪いことではないんですね。

そのときがあるから自分がいる。

その人にとってどんな意味があるのかって、その人にしかわからないし、その人にしか決められない。

「特別なんだ。出会うものや人の全てが。その中で、なにから影響を受けるのか、それを自分で決めるの」

(住野よる『この気持ちもいつか忘れる』より)

このとおりなんですよね。

特別って思うかどうかって自分次第で。

実際に特別じゃない人なんていない。

自分にとってなんでもないことでも、ある人にとってはそれは特別なもの。

私も自分だけの特別を大切にしていきたいです。

おわりに

小説を読んでから、ずっとTHE BACK HORNを聞き続けていて、当時の友人たちがどうしているのか気になってきますね。

過去は過去だけど、こういうきっかけで連絡を取り合うのもいいなって思いました。

この小説で住野よるさんの作品も5作読みました。

いまは三歩を読んでいるところで、これがまたストレスなくほっこりした気持ちで読めて好き。

このまま住野よるさんも読み切ります。