住野よる

自分らしく生きることを知る。住野よる『麦本三歩の好きなもの』

世の中には自分の好きなものがたくさんあります。

それを実感することってあまりないですけどね。

この本を読んでいると、身の回りのことにもう一度、目を向けてみたくなりました。

今回読んだのは、住野よるさんの『麦本三歩の好きなもの』です!

住野よるさんの作品にしては、全体的にゆるっとふわっとしていて、とても読みやすくて楽しい。

のんびりと読書を楽しみたいときにぴったりな一冊です。

ここでは、『麦本三歩の好きなもの』のあらすじや感想を紹介していきます。

Contents

『麦本三歩の好きなもの』のあらすじ

麦本三歩は図書館に勤務している20代の女性。

三歩には好きなものがたくさんある。

モントレーが好き。

チーズ蒸しパンが好き。

麗しき友人のファンサービスが好き。

radikoが好き。

そんな三歩は、周囲から、「ぼうっとしている」「食べすぎ」「おっちょこちょい」と言われることに納得していない。

仕事をしては、失敗ばかりで怒られもするが、先輩たちには可愛がられていて、

「三歩だからね」

と見逃してもらっているところもある。

基本的に穏やかな性格の三歩だが、時には怒り、時には涙をながす。

急に二日酔いのような症状に襲われて、周囲が引くような突拍子もない行動をするが、あとになって自分でも恥ずかしくなってしまう。

なにか特別なことがあるわけではない。

でも、ここにはこころを穏やかにさせてくれる何かがある。

そんな麦本三歩を巡る物語。

ゆるいようで奥が深い一冊

読み進めていて思ったのは、

「なんかゆるーい小説!」

ってこと。

住野よるさんといえば、デビュー作の『君の膵臓を食べたい』で、たくさんの人を感動させました。

『よるのばけもの』や、『青くて痛くて脆い』では、人間の内面を鋭く描いています。

『この気持ちもいつか忘れる』なんかも、特別でありたい人の心を見事に表現していますね。

住野よるさんってそういう作品を書く人みたいなイメージが私の中にあったんでしょう。

ところがどっこい!

『麦本三歩の好きなもの』にはそうした切実なものがなくって、ちょっとかわった子の日常が描かれています。

これがまた、ついにやりとしてしまいたくなるおもしろさで、

「住野よるさんってこんなのも書けるんだ!」

と驚かされました。

のんびりまったり本が読みたい人にはぴったりですね。

自分の言葉を使って伝える大切さ

よくある言葉ってなかなか使い勝手はいいけど、それが本当の自分の言葉かというと、自信を持ってそうだとは言えない。

悩んでいる人に、一般論をいうのは簡単。

自分の言葉って、それだけ責任があることだと思うから。

三歩は、学生時代の友人の悩みを打ち明けられて、なんていえばいいかと考えた上で、自分の言葉で話します。

きっと、人によっては三歩の発言は危険だって思うかもしれないし、状況によってはよくないかもしれない。

でも、三歩の真摯な言葉だからこそ、友人にもその想いが伝わったんじゃないかなって感じる場面でした。

私達が生きていて、どれだけ自分の言葉をだれかに伝えているかな。

そう考えてみると、私はけっこう楽な生き方をしてきたかもしれない。

自分に正直に生きること

いつもほんわか生きているように見える三歩にも悩むときがあります。

ある日、猛烈に、「仕事にいきたくねー」と思っちゃうんですね。

いや、これはすごくわかる。

私も、別に体調が悪いわけでも、仕事でなにか失敗したわけでもないのに、無性にさぼりたくなる気持ちが湧き出てくることってあります。

それでも、

「行くしかないよなー」

と思って仕事にはいくわけです。

三歩は行きたくないなーと思っているうちに、職場の最寄り駅を通り過ぎてしまう。

そこで、「遅刻します!」って言えばいいのに、風邪を引いたっていってさぼる。

急に時間が空いてしまった三歩は、誰にも見つからないうちに帰ればいいのに、なぜか本屋に行っちゃうんですね。

まあでも、本意ではなかったのか、そこから何日も、どうにも胸がもやもやして調子が悪い。

職場の人たちは三歩がさぼったことに気づかず、それどころか体調を心配してくれる。

そのまま黙っていればいいのに、それはそれで本当にいいのかなと思い悩みます。

なんかね、こういうちょっとしたことだけど、自分が偽ったことって、周りはわかんなくても自分だけはわかっている。

それってけっこうダメージになっているんですよね。

黒いものがちょっとずつ溜まっていくような。

いずれはそれにも慣れちゃうのかもしれないけど、慣れたくもない気持ちもあり。

心の健康ってすごく大事で、自分がどういう生き方ができるのかなってことにもよるんですよね。

ちょっとくらいの嘘は平気って人もいれば、それで罪悪感を覚えちゃう人もいる。

自分はどうなんだろって自問自答したくなるエピソードでした。

おわりに

三歩すごくよかったですね。

実はこれって続巻も出てるんですね、こっちも読まなくては。

住野よるさんの小説もあと読んでないのは4冊かな。

少しずつ読み進めているけど、どれもおもしろい。

うん、たぶん好みがわかれるものもあるけど、『よるのばけもの』とか。

でも、それはそれで味があっていいなって思います。