住野よる

住野よる『君の膵臓をたべたい』書評。もっと早く読めばよかった……。

この本のタイトルを最初に見たときは、

「またよくわからないタイトルの本だな」

と思いました。

でも読んでみると、これほど強い思いがこもるタイトルは多くはないと感じます。

 

今日紹介する本は、住野よるさんの

『君の膵臓をたべたい』です!

すでに映画にもなった大人気作ですが、ずっと読まずに置いていました。

今はそれをとても後悔。

もっと早く読んでおけばよかった!と声を大にしていいたい!

そんな素敵な『君の膵臓をたべたい』を紹介していきます。

Contents

『君の膵臓をたべたい』はどんな本か

あらすじ

高校生である主人公【僕】は、ある日病院のロビーのソファーの上に、一冊の本が置き忘れていることに気づきます。

何気なく手に取ってタイトルを見ると、『共病文庫』と手書きの文字が。

その『共病文庫』は、クラスメイトである山内桜良がつづった秘密の日記でした。

 

【僕】は、彼女が膵臓の病気にかかっていて近い将来、死んでしまうことを知ってしまいます。

そこから【僕】と山内桜良の友人とも恋人とも違う特別な関係が始まります。

 

彼女は家族と【僕】以外には、一番の親友にも病気であることを秘密にしていました。

彼女は【僕】が与えてくれる”真実と日常”を求め、【僕】との時間を大切にします。

周りへの興味を持たないようにして、周りからも興味を持たれようとしない【僕】は、彼女と過ごす日々の中で、少しずつ自分が変わっていくことに気づきます。

いきなり山内桜良の葬儀から始まる

読み始めて驚きました!

いきなり物語の主要人物である山内桜良の葬儀から始まります!

 

「えっ。そこから始まるの?」

というのが正直な感想で、どういう展開になるのか先が読めませんでした。

 

本書を読む前は、なんとなく『君の膵臓をたべたい』というタイトルから、

「主人公の恋人が膵臓の病気になったから、主人公がその膵臓をなくしてしまいたいと思っているのかな」

と想像をしていました。

でも実際はぜんぜん違う意味だったんですね。

それに、もし、恋人が死んでしまうとしても、物語の後半だろうと思っていました。

いい意味で予想を裏切られる小説でした。

主人公の名前がなかなか出てこない

読んでいくとすぐに気づきますが、主人公の名前がぜんぜん出てきません。

 

映画版でも【僕】とあらわされていました。

誰がが【僕】を呼ぶときには、【秘密を知ったクラスメイト】、【おとなしい生徒】、【地味なクラスメイト】、【仲良し】といった表現で記述されています。

 

実際に本の一部を引用すると、

”「だから、結局【秘密を知ったクラスメイト】くんにしか頼めないよ」”

といった文章になっています。

なぜ、こういう表現をして、主人公の名前を出さなかったのかも読みながら考えていくとおもしろいです。

 

『君の膵臓をたべたい』は、

「どうしてこういう書き方をするのだろう」

読者に考えさせる場面が多く読みごたえがあります。

『君の膵臓をたべたい』の映画について

映画は、実写版として、2017年に上映されています。

2018年にもアニメ版が上映されます。

 

実写版では、原作と違い、【僕】や山内桜良の高校生の話だけでなく、桜良が死んでから12年後の世界も描いています。

原作を読んでその先が気になる人は、実写版を見てみるのもいいと思います。

2018年1月にDVDで発売がされています。

 

実写版の【僕】の高校生の頃を、北村匠海さん。

12年後の【僕】を小栗旬さん。

また、山内桜良を浜辺美波さんが演じています。

それ以外にも北川景子さんや上地雄輔さんも参加しています。

 

原作と違う点も見ていると出てくるので、原作を読んだ人は映画を、映画を見た人は原作を読んでみると、また違った感動を味わえると思います。

『君の膵臓をたべたい』を読んで思うこと

病気とわかったらじぶんだったらここまで強く生きれるか

本書の中の山内桜良は、とても明るい女子高生です。

周りとのつながりをとても大切にして、周りのことを考えて行動しています。

いつも明るく楽しそうにしている姿が印象的です。

 

とても、膵臓に病気があってこれから死んでしまう人とは思えない。

【僕】もそれがあるから、きっと桜良が本当に近いうちに死んでしまうということに実感が持てなかったのだと思います。

 

もし、私が余命数年だと宣告されたら……。

果たして桜良のように生きられるだろうかと感じます。

もっと落ち込んで投げやりになっているような気がします。

 

もし自分だったら……と今の自分を振り返り、今大切に思うものを再認識させてもらえました。

人はいつ死んでしまうかわからないもの

「自分は病気もないし、健康だし、90歳くらいまで生きるだろう」

と漠然と考えていました。

 

でも実際にどうなるかなんてわかりませんよね。

桜良のように急に病気だとわかるかもしれません。

出勤途中に事故にあってしまうかもしれません。

 

私だけでなく、私の周りの人についてもそうです。

 

そう思うと、いまあるこの日々をただなんとなく過ごしていることがもったいなく感じます。

いつでも連絡を取れると思っている友人のことがふと頭に浮かびます。

もっといま目の前にあるものを大切にしていきたいと思いました。

本書で気に入ったセリフ

『君の膵臓をたべたい』の中には、素敵なセリフがたくさんあります。

 

その中でも気に入ったものを一つだけ紹介します。

”違うよ。偶然じゃない。私達は、皆、自分で選んでここに来たの。君と私がクラスが一緒だったのも、あの日病院にいたのも、偶然じゃない。運命なんかでもない。君が今までしてきた選択と、私が今までしてきた選択が、私達を会わせたの。私達は、自分の意思で出会ったんだよ”

(住野よる『君の膵臓をたべたい』より)

本書の中で桜良は、すべての出来事を偶然だとか、運命だとかではなく、自分たちがこれまで選び抜いてきたものなのだと言います。

 

この考え方はとても好きです。

自分が選んできた積み重ねで、今の自分がいて、今の環境がある。

これからも自分が何を選んで生きていくかであると思います。

終わりに

この本については、もっと早く読んでおけばよかったというのが正直な感想です。

私は年間60~80冊くらいは本を読んでいますがその中でも、気に入った本のかなり上位に入る良書でした。

自分の生き方や、自分のやりたいこと、大切にしたいもの、人とのつながりと、多くのことを思い起こされます。

小説で涙が出てくるという体験も久しぶりでした。

まだ読んでいない人にはぜひ手に取ってもらいたい一冊です。