シンプルな表紙とタイトルに惹かれて手に取ると、短めながら、ぎゅっと思いの詰まった5編の小説がそこにはありました。
今回読んだのは、宮田愛萌さんの『きらきらし』です!
女性アイドルグループ・日向坂46の元メンバーである宮田愛萌さんが、万葉集の歌を膨らませて生み出した短編集。
というか、私はこの方を知らなかったわけですが、芸能人って文才のある人って多くないですか。
宮田愛萌さんがどういう人間だったかを抜きにしても、ふつうに『きらきらし』が好きでした。
120ページほどで、グラビアも3分の1程度あるため、小説としての文量は少ないものの、一作一作を丁寧に書いたことが伝わる作品です。
ここでは、『きらきらし』の感想を紹介していきます。
Contents
『きらきらし』のあらすじ
「ハピネス」
「坂道の約束」
「紅梅色」
「好きになること」
「つなぐ」
あらすじ……と思いましたが、いずれも短めの作品なので、あらすじ=ネタバレになりそうな気も。
なのでちょろっとだけ。
どの短編にも、題材となった万葉集があるそうです。
短編にはその歌が添えられていて、その意味を考えながら読むとより深く世界に入れる気がします。
一作目の「ハピネス」は、主人公の女性が、交際相手に結婚を申し込み、了承されるシーンで始まります。
一見、幸せそうに見えるシーンなのに、それを絶望だと表現する。
そして、大好きな人の兄と自分は結婚するのだと言います。
それってどういうことなのだろうと、とても興味を惹かれる冒頭でした。
そこにいたったワケや、大好きな人を巡る主人公の心情を繊細に描いています。
そのほか、引越しをする少女が図書館で出会う不思議な青年の話、大学の授業で親しくなる男女の話、好きということを考える話など、短いながらすっと入ってくる短編たちです。
きらきらしたもの
きらきらしたものって、誰にでも実はあるんだと思います。
それって、特別ななにかではなくて、気づかないうちにそばにあるものかもしれない。
その一瞬一瞬に浮かび上がるだけのものかもしれない。
周りから見たら、なんでもない出来事なのかもしれない。
でも、そうした一つ一つが、その人を作って、人生に色付けをしていくものなのだろうなと感じさせられます。
宮田愛萌さんの『きらきらし』も、なにかとんでもないことが起きているわけじゃないんですよ。
すごいミステリー要素があるとか、伏線回収がーとか、どんでん返しがーとか、そういうことじゃなくて。
日常にちょっと色を添える。
それでいて、邪魔をするわけでもなく、読んだ人の心に暖かいものをくれるような話です。
小説っていろんな要素があって、
「感動した―!」
とか、
「すっごくどきどきさせられた」
という小説もそれはそれでおもしろくてすごく好き。
でも、ちょっとした日常に、ほっとした気持ちや、満足感をくれる小説も必要だなって思わせてくれます。
おわりに
どれも好きな短編なんだけど、たぶんこれってもっと書けたんだろうなって気はします。
あえて短くしてあるのかな?
写真のページが多かったりもしたから、そのせいで小説部分が短くなったのだとしたら、ちょっと残念ではあるんですけど。
もう少し読んでみたかった。
短編同士が、繋がっているところもあって、そうしたところもやっぱり読者としては楽しいところ。
次は中編から長編くらいの話をぜひ読ませてもらえたら嬉しいなって思います。