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沖縄に行こう!偏見と先入観を打ち破れ。坂木司『楽園ジューシー』あらすじと感想。

沖縄に行きたくなる!

沖縄料理が食べたい!

そんなことを思わせてくれる小説でした。

今回読んだのは、坂木司さんの『楽園ジューシー』です。

全然知らなかったんですけど、前作があったんですね。

『ホテルジューシー』。

『楽園ジューシー』にも出てくるホテルの名前がタイトルになっていました。

でも、そちらを読んでいなくても楽しめます。

偏見とか、思い込みとか、人間のいきづらさとか。いろんなことを考えさせてくれる小説でした。

ここでは、『楽園ジューシー』のあらすじや感想を紹介していきます。

Contents

『楽園ジューシー』のあらすじ

外国人のような外見のザック。

日本生まれ日本育ちの彼は、ハーフではなくミックス。

いろんな国にルーツを持って生まれた。

でも、その外見からいじられ、偏見を持たれて育ってきた。

大学生になったザックは、あるときアルバイトの募集を見つける。

それは、沖縄にあるホテルジューシーが、短期間のアルバイトを探しているものだった。

自分の外見が気にならない場所を求めて、沖縄のホテルジューシーでアルバイトをすることにする。

偏見とか思い込みって誰にでもあること

『楽園ジューシー』。

タイトルだけ見ると、すごく明るくて楽しそうなイメージが湧いてきます。

沖縄でおいしそうな食べ物を求めて旅をするのかなーみたいな。

たしかに沖縄のいい部分やいろんな沖縄料理も出てきます。

でも、それだけではないのがこの小説。

テーマの一つとして、人の持つ偏見ってのが出てきます。

主人公のザックがそもそも外国人に間違えられる風貌で、ザックを見た人はまず一瞬ぎょっとする。

観光地では外国人旅行客に間違われる。

英語をしゃべってみろといじられる。

慣れてきてもやっぱりそうした偏見って苦しい。

ザックも諦めながらもどこか嫌な気持ちが胸の中に残ります。

でも、そんなザックも割と先入観や偏見を持って人に接してしまっているんですね。

沖縄っていえばこういう雰囲気とか、自分は相手からこういう風に思われるもんだとか。

相手をよく知らないうちに簡単に相手はこういう人だと決めつけたり。

それって誰にだってあることですけどね。

私だって、考えてみれば決めつけてしまっていることは結構あります。

ときどき、

「あっ、あれはよくなかったな」

と反省できるのも、小説の力なのかなと思います。

大きい単位で見ないで個人を見よう

ホテルジューシーのオーナー代理。

昼間はずっと調子が悪くて眠そうにしているけど、夜になるとできる男になる。

そんなオーナー代理の言葉が割と響きました。

「大きな言葉は誰も幸せにしないよ」

「簡単で強くて大きくて、そして愚かな言葉はたくさんある」

「だからさ。小さな言葉で、目の前の人をちゃんと見れば、案外悪くないかもしれないよ?」

(坂木司『楽園ジューシー』P175より)

人はよく、

「〇〇は本当に駄目だ」

みたいな言葉を使いたがるんですよね。

最近の若者は~、政治家って~、だから男は、だから女は、てな具合に。

そういう言い方をすればなんとなく、外れてはいないような気持ちにはなるんですよね。

そして、そうした対象に対する理解をすることから遠ざかってしまっている。

でも、やっぱり、誰しも一人の人間なんです。

若者ってくくりに入る人でも千差万別。

逆に年配の方でも、老熟している人もいれば、子どものような人もいる。

大きなくくりではなく、目の前の一人に視点を向けること。

そうすることで、これまで見えてこなかったものも見えてくるし、新しい関係も生まれるのだと思います。

おわりに

『楽園ジューシー』のジューシー。

てっきり、

「このお肉ってジューシーでおいしい!」

とかの意味のジューシーだと最初思っていました。

でも、全然違くて、沖縄の方言で、沖縄風の炊き込みご飯のことなんですね。

『楽園ジューシー』の中で紹介されていました。

炊き込みご飯ってまた考えさせられる名前でした。

ザックもいろんなものが混じっていて、沖縄もいろんな文化が混じっていて、人間もまたいろんな要素が絡み合いながら生きている。

読めば読むほど、この言葉が深く感じていく小説でした。

『ホテルジューシー』のほうも読んでみたく、機会を見て手に取ろうと思います。