森見登美彦

世界の表と裏。森見登美彦『夜行』あらすじと感想。

世界には表と裏がある。

これが正しいと感じているものがすべてではないことも。

今回読んだのは、森見登美彦さんの『夜行』です!

森見登美彦さんといえば、『夜は短し歩けよ乙女』、『有頂天家族』といった不思議で楽しい話が多いですね。

でも、それだけでなく、少しぞっとする話、不思議な感覚に陥る話もたくさん書いています。

『夜行』は後者ですね。

京都を舞台にした不可思議な世界がここにはあります。

ここでは、『夜行』のあらすじや感想を紹介していきます。

『夜行』のあらすじ

同じ英会話スクールに通う仲間が10年ぶりに鞍馬に集まった。

とある事件により、この10年は集まることができなかったというべきか。

10年前の鞍馬の火祭。

当時、仲間だった6人のうちの一人である長谷川さんが忽然と姿を消した。

長谷川さんは、何の痕跡も、手掛かりも残さずに消えたのだった。

鞍馬の火祭に集まった5人は、そろって鍋を食べ始める。

少しずつ降っていた雨は、次第にその強さを増していく。

そんな中、それぞれが過去に出会った不思議な旅の話を語り始める。

尾道、奥飛騨、津軽、天竜峡・・・。

その旅のどこにも、不思議なことに、岸田道生という銅版画家の連作絵画「夜行」という作品が存在していた。

そして、「夜行」と対をなす誰も見たこともない作品「曙光」。

夜はいつでもあなたの側にある。

世界の表と裏が入り混じるとき、物語は進んでいく。

不思議な世界に引き込まれる

森見登美彦さんの作品って、『夜も短し歩けよ乙女』のような、おもしろおかしく読めるものがある反面、突然、ぞっとする話があるから驚かされます。

京都が舞台というのもその要因なのでしょうか。

古都に潜む不可思議な世界。

『きつねのはなし』でも、『宵山万華鏡』でも、今回の『夜行』でも。

これが京都ではなくて別の町が舞台だったらまた違った感じがするのかもしれません。

観光名所としても人気の京都。

古から続くそんな場所だからこそ、実は本当になにかあるのではないかという気持ちにさせられます。

また、京都の描写が見事なんですよね。

読んでいて脳裏にその様子がはっきりと思い描けてしまいます。

もちろん、すべてを行ったことがある場所ではないのに。

世界の表と裏

『夜行』と『曙光』。

闇に沈んだ夜と、一日が始まる瞬間の輝かしい一瞬。

世界の表と裏。

対をなすものって、どこか不思議なつながりがあります。

まったく逆のものなのに、そこには確かに切り離せないものが。

主人公の大橋くんが紛れ込んだのもそんな世界。

よく、ふたつの世界を描く作品ってありますよね。

米澤穂信さんの『ボトルネック』も、もしもの世界とタイムリープが混じり合ったような作品でした。

こうした作品って、別の世界線も綿密に考えておかないときれいに読めないんですよね。

『夜行』はそのあたりがすごくすっきりと読めて、ぞくっとするものもあっておもしろい。

たとえ似たような話があったとしても、これは森見登美彦さんにしか書けない世界だと感じました。

おわりに

どちらかというと、森見登美彦さんの作品だと、ちょっとおちゃらけたふざけた作品の方が好きなのですが、『夜行』もまた、ぐっと引き込まれてページをめくる手が止まりませんでした。

ありそうでない。

ないようでありそうなそんなお話。

ちょっとだけぞくっとして、読者をのめり込ませる不思議な魅力のある小説でした。

さて、こうした本を読んだ後は、四畳半シリーズのような楽な小説を次は読みたくなりますね。