町田そのこ

不幸かどうかは自分が決める。町田そのこ『うつくしが丘の不幸の家』あらすじと感想。

家族の形はさまざまあるもの。

そこにある幸せも、不幸も、他人から見えたものと、本人たちが感じるものはまた別物。

幸せを決めるのは他人ではない。

そう思わせてくれる物語です。

今回読んだのは、町田その子さんの、『うつくしが丘の不幸の家』です!

町田そのこさんといえば、『52ヘルツのクジラたち』が有名ですね。

本屋大賞を受賞して書店でも大きな一角を埋め尽くしていました。

そんな町田その子さんは、家族の機微を描くのが見事で考えさせられます。

本書では、”不幸の家”と呼ばれたとある家をめぐる5つの短編が収録されていました。

ここでは、『うつくしが丘の不幸の家』のあらすじや感想を紹介していきます。

『うつくしが丘の不幸の家』のあらすじ

うつくしが丘は、新興住宅地として開発が進んだ地域であった。

交通の便は多少悪いものの、子育てには向いていると、新規の住民が次々にうつくしが丘に移り住んでいった。

美保里と譲は、うつくしが丘にある築25年の家を購入した。

二人は、その家の一階をリフォームして『髪工房つむぐ』は2日後にオープンする予定であった。

自分達の店を持つというのに、美保里の気持ちは沈んでいた。

オープン直前の忙しい時期に、譲が隣町の実家の理容店にヘルプで呼ばれてしまっていない。

元々、譲が実家の理容店を譲り受ける予定で、そのために必死に働いてきたのに、譲の両親は、実家を出て出来ちゃった婚で帰ってきた義弟に家を継がせることにしたのだった。

それなのに、困ったときには譲を呼びつける義父にも、ほいほい従う譲にも美保里は怒っていた。

さらに、近隣住民と思われる年配の女性に、

「不幸の家と知っていて買ったのか?」

と尋ねられる。

この家は、建てられてから次々に住民が変わっていく家だというのだ。

「不幸の家なんて知っていたら買っていなかった!」

ショックを受ける美保里だったが、隣の家に住む老婦人に声をかけられ、話をするうちにその考えにも変化が生まれていく。

5つの「不幸の家」にまつわる話

『うつくしが丘の不幸の家』は、5つの短編からなる小説です。

その舞台は、いずれも、うつくしが丘にある一つの家。

最初の短編は、美容室を開くために家を購入した夫婦。

この時点で、この家は築25年なんですね。

読んでいくとすぐに気づくのですが、次の短編はその前の「不幸の家」の住人の話になります。

そうやってどんどん時代がさかのぼっていくんですね。

いかにしてこの家が、「不幸の家」と呼ばれるようになったのかがわかって、短編だけでも面白いのに、二重に楽しめます。

ある短編で、

「これってなんなんだろう?」

と疑問に感じていたものが、次の短編、次の次の短編で明らかになって、ちょっとにやりとしちゃいますね。

幸せは自分が決めること!

さて、『うつくしが丘の不幸の家』では、「不幸の家」と呼ばれる場所が舞台となっています。

でも、果たして本当に不幸なのか。

25年の間に、4組も住人が替わる一軒家。

たしかに不吉なものを感じますよね。

「どうしてあの家の住人はすぐに入れ替わってしまうのだろうか」

と思うのも変な話ではありません。

でも、たとえその家の住人が不幸だったとしても、それは家のせいではない。

家が不幸を招き寄せるわけではない。

本書の中では、こんなセリフがありました。

「しあわせなんて人から貰ったり人から汚されたりするものじゃないわよ。自分で作りあげたものを壊すのも汚すのも、いつだって自分にしかできないの。他人に左右されて駄目にしちゃうなんて、もったいないわよ」

(町田そのこ『うつくしが丘の不幸の家』より)

結局は、自分の幸せを決めるのって自分なんですよね。

周りのうわさとか、誰かがこう言っていたからなんていうのは関係ない。

自分の目で見て、自分が選んで行動して、その結果を自分がどう感じるか。

周りからぱっとしないと思われていても、幸せいっぱいの人もいます。

逆に、周りから羨ましがられるような生活をしていても、少しも幸せを感じていない人もいます。

だから、どんな信念を持って生きているかって大事。

考えること、とにかく考えること。

なにも考えずに生きていると、すぐに周りに翻弄されて、流されて、どこか自分の望んでいたのとは違った場所にたどり着いてしまう。

自分が望むものをしっかりと見て、そのために行動できる人が、幸せになるんだろうなって感じます。

子離れって難しい……

『うつくしが丘の不幸の家』では、家族の話も当然出てきます。

その中で、子どもと親の関係も。

難しいですよね、親としては子どものことはとても気になってしまう。

ついつい手助けしようとしてしまうし、先回りして障害を取り除きたくなる。

でも、そうすることも親のエゴな場合もある。

小学生低学年くらいまでならそれもありなんでしょうね。

でも、高学年、中学生となっていけば、自分で考えていくことができるようになります。

高校生以上ともなれば、自分で選択して責任を持つことも必要。

また、親がこうしたらいいと思うことが、そのまま子どもの幸せになるわけでもない。

それでも、人生の先輩としては、いろいろ苦言を呈したくもなる。

もうね、ずっとそのあたりって悩みながらのものなんでしょうね。

家族の関係に正解なんてない。

つねにお互いが尊重し合う中に、その瞬間のベストがあるんだろうと思いました。

おわりに

まだ、町田そのこさんの作品は、本書を含めて三冊目です。

いや、しかし、それにしても三冊ともおもしろかった!

これならデビュー作から全部読んでみたいと思わされる作品でした。

町田そのこさんって、デビューがそんなに前じゃないんですよね。

だから全部読もうと思ってもそんなに大変ではなさそう。

それでいて、家族や小さい地域での話が多いから、余計に考えさせられるものがある。

今回の『うつくしが丘の不幸の家』も、自分のいまあるものを見つめ直すいい機会になりました。