大好きだった愛するペットとの別れ。
動物を飼うということは、いつかはその瞬間が訪れます。
そんなとき、あなたは何を思いますか。
今回読んだのは、泉ゆたかさんの『君をおくる』です!
短編集ですが、様々なペットとの出会いと別れが描かれています。
ここでは、『君をおくる』のあらすじや感想を紹介していきます。
Contents
『君をおくる』のあらすじ
憧れだったはずの仕事を辞め、前に進めなくなってしまった明日香。
彼女の前に現れたのは、アパートの塀の上にいるサビ猫の「ぶーさん」だった。
ぶーさんは、近所に住むみんなから愛される猫。
明日香も、近くをとおるときは、ついついぶーさんを探してしまう。
ある日ぶーさんの様子がおかしくなった。
たまたま出くわした少女から、ぶーさんが病気になったと言われて困惑をする。
自分にはどうしようもないと葛藤をするが、悩んだ末に動物病院へ連れていくことになった。
その古びた動物病院で思いがけず、ぶーさんは明日香の人生をかえることになる。
そして数年後、お別れの時が訪れた。
不登校になった娘のために飼うことになったミニブタのサクラちゃん。
離婚のために、別れることになった愛犬のクッキー。
泣き虫な獣医師とアメリカンショートヘアのタタン。
彼らとの出会いとお別れ、幸せを描く、4つの物語。
家族との別れは苦しいからこそ大切にしたい
ペットは家族。
実際に飼ったことのある人ってそういう印象を持つと思います。
思い返せば自分が子どもの頃って、親がいろんなペットを飼っていました。
犬ににわとり、チョボ、うさぎ、インコなどなど。
愛犬との時間はとても幸せでしたし、小学生の頃に、散歩中に何度も逃げられて泣いて家に帰ったのもいい思い出です。
私が二歳の頃に飼い始めて、高校生の時に亡くなりました。
大きな病気もなくて、老衰だろうって話でしたが、当時の私はもう悲しくて、まともに受け止めることができてなかったです。
いま思えば、もっと丁寧に別れをすればよかったなって思います。
もうすぐ小学生になる子どもが犬を飼いたいと言っていて、正直なところ、
「絶対世話できないでしょ」
と反対する気満々だったのですが、『君をおくる』を読むと、悲しい別れもあるし、責任もって育てなくちゃいけなくて大変だけど、それ以上に子どもにとっていいものがあるのかなと感じます。
飼い主としての責任
さて、『君をおくる』は4つの短編ですが、良い話ばかりではないんですね。
「クッキー」というチワワの章では、夫婦と男の子の三人家族の元に、可愛らしいチワワがやってきます。
仕事で精神的に病んでしまった父親が、なぜか買ってきてしまうんですね。
でも、家に来たところで父親が世話をするわけではない。
母親に全部丸投げで、家の中は荒れ果てて、しまいには母親は離婚を決断する。
逃げるように息子だけを連れてシェルターへ。
離婚をするにあたって、気がかりだったのは、置いてきてしまったクッキー。
そこから、犬の保護をしている団体と通じることができて、クッキーは別の飼い主にもらわれていくのですが、これがもう、本当にひどい話で。
父親が勝手に買ってきたので母親たちにどこまで責任があるのかって難しいですが、きっと、飼っていた生き物を放り出していく人ってそれなりにいるんだろうなって。
ときどきニュースでも、ちゃんと面倒を見なくて、繁殖してしまった多頭飼いや、捨てられたペットが野生化する問題も取り上げられていますよね。
最後まで面倒を見ることができないのであれば、飼うべきではない。
そう思わされる小説でした。
おわりに
ペットを飼うという点では、読むといろいろ考えさせられる一冊でした。
生き物を飼うって、簡単に考えちゃいけないとは思うんですよね。
できることだって制限されるし、しなくてはならないことも増えるし。
それを理解した上であれば、双方にとって幸せな時間をもたらせてくれるものでもあるんだろうなと思います。