浅倉秋成

これは他人ごとではない!浅倉秋成『俺ではない炎上』あらすじと感想。

まったく身に覚えがないのに、何かの加害者として扱われる。

たまにそういった被害が実際に起きています。

ネット社会の弊害の一つ。

防ごうとして防げるものでもないからまた怖い。

今回読んだのは、浅倉秋成さんの、『俺ではない炎上』です!

これは、本当に、かなり怖い!

さすがに殺人犯にされることまではなくても、なりすましも、炎上も、他人事ではない!

浅倉秋成さんは、『六人の嘘つきな大学生』が人気となったことで名前を知った人も多いと思います。

本作も、かなり話題にも人気にもなるだろうし、映像化したらすごくおもしろそう!

ここでは、『俺ではない炎上』のあらすじや感想を紹介していきます。

『俺ではない炎上』のあらすじ

山縣泰介は、妻と娘を持つ50代の会社員。

大帝ハウス大善支社の営業部長を務めている。

ある日、部下を連れて商談に出かけ、喫茶店にいると、少し離れた席の若者が泰介の写真を撮ろうとしたり、注意しようとすると慌てて逃げだしたりした。

違和感を覚えるも心当たりのない泰介のもとに上司からすぐに会社に帰ってくるように指示が飛ぶ。

会社で泰介は、支社長から叱責とともに見せられたのはTwitterだった。

「たいすけ@taisuke0701」というユーザーが、公園で女性が血だまりの中に倒れている様子を投稿をしたもの。

【血の海地獄】と書かれたその投稿は、リツイートが繰り返され、炎上し、殺人犯として、泰介の名前や写真などのプロフィールがネット上に拡散されていたのだった。

しかし泰介には当然、身に覚えがない。

女性を殺害するどころか、Twitterすらやったことがなかった。

無実なのだから、誤解なのだから、すぐに事態は収まると考えた泰介だったが、この瞬間から、泰介を取り巻く環境は一変する。

会社の同僚からも疑いの目で見られ、自宅ではツイートを見た若者がいたずらをする。

俺はなにも悪くない。

だが、泰介に成りすましたアカウントは、10年前に作られており、振り返ってみると、泰介の自宅の花壇や泰介のゴルフバックの投稿、泰介の言いそうな言葉が投稿されている。

泰介をよく知る人であればあるほど、間違いなく泰介だと確信をできるものだった。

いったい誰がなんのためにこんなことを?

容疑者として追われることとなった泰介。

警察だけでなく、正義感を振りかざした世間、名を上げようとするユーチューバーたちも、泰介に制裁を加えようとする。

逃げ続ける中、泰介は、自分を陥れた真犯人を見つけ出すことを決意する。

どう収拾するのか謎過ぎておもしろい!

いやー、『俺ではない炎上』おもしろかった!

正直、こんなことが自分の身に起きたら、即、詰んでいます。

警察から逃げる気力なんてわかないだろうし、見つかるまでどこかに閉じこもっていそう。

これね、よく構成が考えられています。

単純に、逃げて、犯人特定して、大逆転!

じゃあおもしろくないわけですよ。

主人公の泰介に、

「ここまでいけば助かる!」

と思わせておいて、何度、突き落とすのか。

その落差がはっきりと何度も展開されるから、読者は読む手が止まらなくなるんですね。

逃げながら、なにも反撃の手段もないのに、どうやって真犯人を見つけるのか。

警察の当てにならなさ具合もあって、泰介に同情しつつも、そこからの挽回に期待してしまう自分がいました。

無責任な圧倒的多数

『俺ではない炎上』は、おもしろいだけでなく、無責任な圧倒的多数を感じる小説でした。

本の中で、何度も、Twitterの投稿が書かれている場面が出てくるんですけど、これがまたリアル。

確かにこんなツイート見たことあるわーってやつばっかで。

それでいて、どの人も、自分は関係ないけど、自分は悪くないけど、世の中にはこんなやつらがいる、って言っているんですね。

泰介を貶めたり、警察をなじったり、泰介とニアミスした人たちをあげつらったり。

一人一人は、なにも悪いと思わず、自然にしていることなのに、それが悪意となって、降りかかってくる。

でも、それって、自分にだってありうることなんですよね。

よく政治家の発言とか、ツイートだとか、いいねにすごく反応した記事が出てきたりします。

私もそういうのを見ると、

「こんな政治家、さっさと辞めればいいのに」

なんて思っちゃいます。

それでどうこうするわけじゃないですけど、その情報がどうかなんて吟味せずに、自然と思うことなんですよ。

それって、実際怖いことです。

『俺ではない炎上』だって、無実のはずなのに、圧倒的な大多数の手によって、泰介は殺人犯に仕立て上げられてしまいます。

現実にも、デマなのか誤解からなのか、とある会社にクレームの電話が大量に来たり、関係ない家がある事件の加害者の家とされたりしたこともありました。

そこに自分がこれからも関わらないかって、断言できる人ってなかなかいない気もします。

おわりに

『俺ではない炎上』はすごくおもしろかったんですが、読んでじゃっかん混乱する人もいると思います。

実際に、ネット上には、『俺ではない炎上』の解説をしているブログもありますしね。

真相の部分で、

「えっ! そうなるの?」

と驚かされます。

そうした部分は、浅倉秋成さんの巧みなところなのでしょうね。

1989年生まれなのでまだ若い作家さんなのに見事!

これからの作品も楽しみにしています。