小説を書く

どの小説新人賞に応募すればいい?検討する基準や選び方。

小説の新人賞に応募するとき、自分に合った新人賞を選ぶことが重要です。

でも、たくさんある中からどのように選べばいいのでしょうか。

ジャンルなのか、賞金なのか、選考委員なのか。

ここでは、新人賞の選び方を考えていきます。

カテゴリーエラーとならないように気をつけていきましょう。

Contents

カテゴリーエラーすると落とされます。

カテゴリーエラーというジャンル間違え

カテゴリーエラーという言葉を聞いたことはありますか。

必死に書いて創り上げた小説。

応募してみたものの、その新人賞の募集要項に合っていなかったり、公募先が求めている傾向に沿わなかったりすることを言います。

新人賞を受賞するということは、その出版社などからデビューをするということ。

そのレーベルには求めている作品というものがあります。

これが思いっきり間違えていることがあるようです。

純文学の賞に、本格ミステリーを送るのはおかしいですよね。

歴史小説を多く輩出する賞に、純文学は似合いません。

募集要項は割とわかりづらい

ただ、どの賞にどんな小説を送ればいいのかって、何も知らない状態だと迷うと思います。

たとえば、集英社が主催する小説すばる新人賞だとこうした募集要項があります。

エンターテインメント小説。ジャンル不問。日本語で書かれた自作の作品に限ります。

(『小説すばる』ホームページより)

ふむふむ。

ジャンル不問のエンターテイメント小説。

楽しい小説なら、割となんでもよさそうだなという印象を受けますね。

一方で同じく集英社のすばる文学賞だと、

応募原稿は、未発表小説に限る。

(『すばる』ホームページより)

となります。

「おお!これは未発表作なら何でもいいのか」

そう思ったあなたは間違えています。

すばる文学賞は、純文学の新人賞です。

エンタメ系とか、ミステリーはそぐいません。

もう一つ、『このミステリーがすごい!』大賞の募集要項です。

エンターテインメントを第一義の目的とした広義のミステリー。『このミステリーがすごい!』エントリー作品に準拠、ホラー的要素の強い小説やSF的設定を持つ小説でも、斬新な発想や社会性および現代性に富んだ作品であればOKです。また時代小説であっても、ミステリーとしての要素や冒険小説的興味を多分に含んだ作品であれば、その設定は問いません。

(宝島社ホームページより)

ここまで書いてくれると、かなり選びやすいですね。

本格ミステリーだけでなく、ミステリー要素さえあればなんでもよさそうです。

さて、募集要項を3つ提示しましたが、これだけだと、

「決めた!私が応募するのはここだ!」

と断言するのはちょっと怖いですよね。

ジャンルを明確にすることが重要!

新人賞を選ぶ上でまず重要なのが、自分の小説がどのジャンルに属するかを明確にすることです。

自分が書いている小説。

これから書こうと思っている小説。

自分が好んで書く小説。

これらはどのジャンルに当てはまりますか。

はっきりとミステリーとか、恋愛とか、純文学とかわかるならそれが一番いいですね。

もし、はっきりとしなくても、

「たぶんこっちよりかな」

というイメージはつけておいた方がいいと思います。

小説には、大きくわけて3つの種類がある

小説のジャンルを新人賞に応募することを前提に大きくわけるとしたら3つになります。

〇大衆文学

〇純文学

〇ライトノベル

の三種類です。

これとは別に、ライト文芸を入れる考え方もありますね。

こちらは大衆文学とライトノベルの中間のような立場になります。

ただ、

「うちはライト文芸を募集しています!」

と言っている新人賞はないので、ここでは大衆文学の一部という扱いにしています。

傾向としてはあるんですよ。

軽いタッチの小説が多く出ている新人賞、みたいな。

芸術的な純文学

純文学は芸術。

そう言われていることを聞いたことはないでしょうか。

ふだん目にするようなありきたりの情景であっても、なんでこんな表現が出てくるのかってくらいに、繊細で美しい文章で綴られます。

純文学は哲学とも言われます。

登場人物の心理描写が見事な作品が多く、

一方で、読みづらい、硬いという印象を持つ人もいますね。

大衆文学は比較的わかりやすいけど、純文学は抽象的な内容も多くてわかりづらさがあります。

芥川賞を受賞するのは、純文学の小説です。

読者を楽しませる大衆文学

純文学が芸術だったのに対して、大衆文学は娯楽と言われています。

募集要項に、エンターテイメント作品と書かれていれば、そこは大衆文学の領域です。

一言で言えば、

「おもしろい小説!」

それが大衆文学です。

一般的に刊行されている中で、純文学を除けば、ほとんどが大衆文学と考えて大丈夫です。

〇恋愛

〇青春

〇ミステリー

〇時代小説

〇SF

ジャンルというと、こうしたものはだいたい大衆文学だろうなというイメージです。

もちろん、純文学で、恋愛要素やSFの要素があるものもあります。

そのあたりの線引きはけっこうあいまいなところがあります。

展開に胸が躍るライトノベル

ライトノベルは、文章が平易で、会話が多く、小説の合間にイラストが入っているのが特徴です。

登場人物は比較的若いことが多いですね。

10代〜20代くらいがメインで、ファンタジー要素や、学園もの、恋愛ものが主流です。

ライトノベルの初期の人気作といえば、神坂一さんの『スレイヤーズ』や、秋田禎信さんの『魔術師オーフェン』、谷川流さんの『涼宮ハルヒの憂鬱』がありますね。

異世界転生が流行ってからは、『この素晴らしい世界に祝福を!』や、『転生したらスライムだった件』、『Re:ゼロから始める異世界生活』なんかがアニメ化もされています。

『小説家になろう』のようなネットでの小説投稿サイトが誕生してからは、ライトノベル系の小説を書く人の人口はかなり増えたのではないでしょうか。

3つの中から一番近いものを選ぶ

応募する新人賞を選ぶためには、まずこの3つのうちでどこに該当するかを考えましょう。

新人賞自体が、大衆文学を対象としたもの、純文学を対象としたもの、ライトノベルを対象としたものにわかれているからです。

ライトノベルは、はっきりとジャンルが違うとわかるので迷うことはないでしょう。

問題は残りの二つです。

純文学っぽい小説が大衆文学向けの新人賞を取ることもありますし、その逆もないわけではありません。

ただ、それでも、新人賞を受賞してデビューをした場合、その新人賞の傾向に、その後の進路もある程度拘束されるものです。

小説家の平山瑞穂さんは、2004年に第16回日本ファンタジーノベル大賞を受賞して、『ラス・マンチャス通信』でデビューしています。

元々、純文学を志望していた平山瑞穂さん。

何度小説を応募しても落選することから、他の新人賞に応募したところ予想外に受賞してデビューすることになったようです。

本当に書きたいのは純文学。

でも求められているのはエンタメ系の小説。

そのあたりでかなり悩み、苦しんだようです。

ファンタジーの賞を受賞した人が、次にがちがちの純文学は出せないようです。

純文学の新人賞でデビューした人が、いきなり二作目で明るく陽気な恋愛ものなんて書けませんよね。

言われてみればたしかにという気がします。

新人賞の選び方

さあ、自分の進む道がわかったら、次はどの新人賞を選ぶかになります。

新人賞において、ジャンルが決まったらある程度、自分が応募する新人賞は絞ることができます。

純文学なら、『すばる文学賞』、『新潮新人賞』、『文學界新人賞』、『文藝賞』、『群像新人文学賞』、『太宰治賞』などがあります。

大衆文学だと、広義のエンタメ系の新人賞と、ミステリーをメインとしたもの、児童文学を対象としたものなどがあります。

その中から更に絞り込んでいくには、いくつかの選ぶポイントがあります。

好きな出版社・レーベルから選ぶ

新人賞を受賞した場合、その出版社からデビューすることになります。

「どうせなら、自分の好きな出版社から自分の本を出したい!」

そういう考え方も一つです。

私は、単行本の表紙が固くて、スピン(本にくっついているしおりに使える紐のこと)がついているものが好きです。

だから、応募するならそうした本を出している出版社がいい。

好きな作家さんや好きな作品がある出版社というのもありです。

本を取ったときの感覚で好みってありますよね。

文庫本だと角川が好きだったりします。

賞金から選ぶ

これ、結構重要なことです。

新人賞は様々ありますが賞金額にもかなり違いがあります。

現時点で、一番高額なのは、『このミステリーがすごい!』大賞でしょうか。

なんと賞金1200万円!

本業の年収を軽く飛び越えちゃっています。

これプラス、本が出れば印税がもらえるんです。

これだけあると、小説家の道を歩もうと思ってもしばらく余裕がありそうですね。

次に多くて500万円くらいだったと思うのでかなり破格な賞金です。

賞金はなくて、出版したときの印税と記念品って賞もあります。

有名な新人賞だと50万円~300万円くらいの印象ですね。

締切日から選ぶ

自分の執筆のスピードと現状を考えてみると、だいたいいつぐらいなら完成するかという予測ができると思います。

今ある新人賞を見て、

「この新人賞なら間に合いそう」

というところに目標を定めて書き出すのもありです。

どの新人賞に出すかを決めるのは、目標設定という意味合いもあります。

締切日がないと、だらだらと書いていつまでたっても完成しないということに陥りかねません。

ページ数から選ぶ

小説を書いてみたけど、思っていたよりも長くなった。

逆に、意外とコンパクトに収まってしまった。

そういうケースもあります。

また、自分が得意な長さっていうのも人によってはあるのでは。

短編から応募できる賞もあれば、かなり長めの長編小説まで扱っている賞もあります。

純文学の賞だと、賞によってかなり応募可能なページ数に幅があるので、そこも選ぶポイントとしていいかなと思います。

選考委員から選ぶ

どうせ新人賞に出すのなら、尊敬する作家さんに読んで欲しい!

それもすごくいい選び方です。

大好きだったあの本を書いた人に自分の小説を読んでもらえる。

それってとてもわくわくすることです。

もちろん、最終選考まで残らないとその夢も儚く散ってしまいますが、小説を書くモチベーションが無茶苦茶高まります!

おわりに

小説の新人賞に応募するためには、ジャンルを見定めて選ぶことが重要です。

いくつかの候補が出てくると思います。

その中から、上記したような自分なりの理由で選んでみてください。

それでもどこにすればいいかわからないときは、その新人賞を受賞した過去作をいくつか読んでみましょう。

自分の作品がどこに近いのかなということがなんとなく把握できると思います。