渡辺優

あなたはどんな夢を見るか。渡辺優『自由なサメと人間たちの夢』あらすじと感想。

夢という言葉にはいろんな意味がある。

一般的には、寝ているときに見る夢、叶えたい希望を指す夢。

でも、そんな夢でも一つとして同じものはない。

今回読んだのは、渡辺優さんの『自由なサメと人間たちの夢』です。

渡辺優さんは、『ラメルノエリキサ』で小説すばる新人賞を受賞しデビュー。

本作が第二作目となる短編集です。

夢や大切としているものをテーマに様々な視点から描かれていて、これほど自由に書けるものなのだと驚かされました。

ここでは、『自由なサメと人間たちの夢』のあらすじや感想を紹介していきます。

Contents

『自由なサメと人間たちの夢』のあらすじ

希死念慮を持ち続けてわざと入院する女性。

職場の事故で片腕が義手になり、そこに強さを求める男性。

明晰夢を見るために努力を続ける大学生。

情緒不安定でうまく生きられないけど、自分を変えるために憧れのサメを飼うキャバ嬢。

心のよりどころは人によって異なるけど、それがあるから人は生きていける。

多種多様な生き方を示す7つの短編集。

ちょっと変わった7つの短編

〇ラスト・デイ

〇ロボット・アーム

〇夏の眠り

〇彼女の中の絵

〇虫の眠り

〇サメの話

〇水槽を出たサメ

『自由なサメと人間たちの夢』には、変わった7つの短編が入っています。

少しわかるような話もあれば、ぞくっとする話もあります。

自分が生きていく上で、支えとなるものってなにかなと考えさせられます。

ここに出てくる登場人物は、いずれもちょっと問題を抱えていて、でも、それって割と世の中を見てみれば、決して不思議ではないのかもしれない。

強さに憧れを持つのは男性特有?

『自由なサメと人間たちの夢』の中の「ロボット・アーム」というお話。

仕事の事故で片腕を失った男性が主人公です。

最新の義手を腕につけるんですが、最初は保険の適用範囲内で、ふつうの人と同じくらいの能力の義手を選びます。

でも、ちょっと欲が出てくるんですね。

色を一見して義手だとわかるようなメタリックな色に変更します。

復帰した職場の人たちが、

「かっこいいなー」

と羨望のまなざしで見ることに快感を覚えてしまいます。

更に、義手の能力を上げていくことを考えちゃいます。

義手の握力を60kg→80kg→120kgとどんどん上げて。

男性にとって、義手が強さの象徴のようになっていくんですね。

元々、自分にあまり自信がなかった男性。

だからこそ、わかりやすい強さを求めていきます。

これって、わからなくはないんですよ。

ファッションを変えるだけでちょっと自信がついたり、肩書にこだわってみたり。

女性でもあるのかはわかんないけど、男性にはよくありますよね。

内面が強ければそんな部分を気にすることはなくなるけど、それもそれでなかなか大変。

どこに自分の拠りどころとするものを求めるかってことですね。

おわりに

渡辺優さんは、2016年にデビューしました。

そこから、現時点で、7作品が単行本となっているんですね。

1年に1冊ペースってところです。

1987年生まれとまだお若い方なので、この先、いったいどんな作品を生み出してくれるのかとても楽しみです。

まずは、デビュー作の『ラメルノエリキサ』がおすすめです。