オカルト現象を科学的、論理的に解明していく。
最初読んだときは突拍子のない話に思えました。
でも、読んでいくうちに、オカルトとミステリを混ぜ合わせた不思議なロジックに惹き込まれていきます。
今回紹介するのは、東野圭吾さんの、
『予知夢』です!
<探偵ガリレオ>シリーズの二作目になる短編小説です。
『予知夢』は5つの章から構成されている作品となります。
Contents
『予知夢』のあらすじ
ある邸宅に坂木伸彦が忍び込むところから物語は始まります。
坂木はベランダをつたい、2階で寝ている森崎礼美の部屋へと侵入。
坂木が礼美に触れようとしたときに、侵入者に気づいた礼美の母親が、護身用の猟銃を持って現れ撃退。
坂木は、逃げる途中にひき逃げをした容疑で逮捕されました。
坂木は2か月ほど前から礼美につきまとい行為をしている男でした。
手紙を送ってきたり、高校の帰り道で待ち伏せをしたり。
警察は当初、ストーカーが部屋に侵入しようとして、逃げるときにひき逃げをした事件として処理をしようとしていましたが、坂木の供述を聞いて困惑をします。
坂木は言います。
「彼女と自分とは結ばれる運命にある。そのことは十七年も前から決まっていた」
坂木は、17年前に森崎礼美という女性と結ばれることを夢で見たと主張しているのです。
被害者の礼美は現在16歳。
なぜ坂木はこんなことを言っているのか。
坂木のことを調べていくと、小学生の作文や、卒業のときの寄せ書きにも、『森崎礼美』という名前が出てくることが発覚します。
果たして本当に予知夢だったのか。
それともただの偶然か。
草薙刑事は、ガリレオ先生こと湯川学に真相を解明するよう依頼をします。
これが、『予知夢』の最初の短編、『夢想る』のあらすじになります。
他の短編の中にも、【ポルターガイスト】、【心霊写真】、【火の玉】といったオカルト現象を思わせる事象が出てきます。
偶然と考えるか必然と考えることができるか
東野圭吾さんの『予知夢』は、先ほど書いたようにオカルト現象のような事象がいくつもでてきます。
それを偶然と捉えて事件を終えようとするか、必然としてその因果関係を探ろうとするか。
その考え方でその後の展開が大きく変わります。
『予知夢』の中での湯川のセリフです。
”すごい偶然が起きた場合、それはもしかすると必然だったのではないかと考えてみるのは、科学の世界では常識なんだ”
(東野圭吾『予知夢』より)
すごく含蓄のある言葉だと思います。
これは現実の世界にも当てはまることですよね。
例えば、私はスポーツのテニスをしています。
市のテニス大会にもときどき参加しますが、自分よりも格上の相手に勝ったとき、自分よりも弱い選手に負けたとき、
「今回は運が悪かった」
「偶然が重なったから」
と思ってしまったらもうそこから成長できないですよね。
何事においても、原因と結果というものがつきまといます。
盲目的に起きた現象を、
「そうなんだな」
と思うのではなく、
「なぜそれはそうなったのか」
と思考できる頭を持ち続きたいですね。
終わりに
<探偵ガリレオ>シリーズの中では、『予知夢』はそこまで人気が高くないかもしれません。
その後に出た『容疑者Xの献身』や『真夏の方程式』などの長編がとても素晴らしい作品であり、映画になったことによって更に知名度が上がったからです。
私も割とそんな感じで、そこまで注目していた作品ではなく、
「ガリレオシリーズだし一応読んでおこうか」
くらいの気持ちでした。
でも実際に読んでみると、少ないページの中に、驚きと新鮮さが散りばめられています。
オカルトという一見、取っつきにくそうな場面も、東野圭吾さんの手にかかると、とてもすんなりとした気持ちで読むことができます。
この『予知夢』もまた、東野圭吾さんの名作の一つと言えるでしょう。