宇山佳佑

運命の赤い糸が存在したらどうする?宇山佳佑『いつか君が運命の人』

もし、自分の小指から伸びる赤い糸が見えたらどうしますか。

もうどきどきですよね。

でも、それに翻弄されてしまいそうだなとも。

今回読んだのは、宇山佳佑さんの『いつか君が運命の人』です!

連作短編のようなこの小説。

どの話にも不思議な指輪が登場します。

この指輪をつけると、運命の赤い糸を見ることができる。

そんな不思議な指輪とせつない恋の物語です。

ここでは、『いつか君が運命の人』のあらすじや感想を紹介していきます。

Contents

『いつか君が運命の人』のあらすじ

「指輪って、心とつながるものなんだよ」

その指輪をつければ、「運命の赤い糸」が見える――。
切ない願いが込められた指輪がつむぐ、ひとつなぎの恋物語。

「自分なんかじゃ絶対に無理だ」と思っていた片想いの相手と、運命の赤い糸で結ばれたいと願いつづけたら――「僕らはあの頃と変わらない」
つれない恋人との関係に不安を抱いていたところ、指輪の力で相手が運命の人ではないことを知ってしまい――「どうして機嫌のいいときしか好きって言ってくれないの?」
……など、奇跡の指輪”をめぐる6つの恋模様を収録。

(集英社文芸ステーションより)

運命の赤い糸が見えるのってどうなの?

運命の赤い糸ってちょっと憧れがありますよね。

自分の小指からもそんなものがどこかに繋がっているのかなって。

運命の相手と出会えたら、それはぐっと幸せになれそうな気がしちゃいますね。

でも、もし本当に運命の赤い糸が見えていたら、それってかなり難しい世界なのかなーて思っちゃいます。

小学校でも中学校でも、割と友人たちと、

「誰が好きなんだよー」

みたいな話題で盛り上がりますよね。

ああいうドキドキ感ってあの頃ならではの楽しさではあったわけです。

ここに赤い糸が存在したら、初恋の相手とかっていうよりも、そっちのほうにみんな意識がむいちゃうんじゃないかなって。

好きな人ができても、その人に向かって、自分から赤い糸が出ていたなかったら、それだけでその恋を諦めてしまうのかな。

そういう人って多そうですよね。

学生のうちは、それでも、

「赤い糸がなくたって、この子のことが好きだ!」

とまっすぐにぶつかっていくだけの元気の勇気があるかもしれないですけど、これが大人になればなるほどできなくなりますね。

保守的というか、失敗しないようにって思えば思うほどに、赤い糸に頼ってしまいそう。

まあ、『いつか君が運命の人』の中でも、そこまで赤い糸自体は重要視されていなくて、物語を一歩上の段階に持っていくための要素のようなものでした。

赤い糸に翻弄されるのではなくて、自分の気持ちと向き合って進んでいくみたいな。

だからほどよいエッセンスたりえるのかな。

赤い糸は自分で作るもの

とはいえ、運命の相手って本当にいるのかってことですよね。

恋愛において正解なんてないし、

「これがもっとも幸せな出会いだった」

なんて言い切れる人は少ないと思います。

いつまでも昔の恋を引きずる人だっていますし、結婚した後だって、ほかの異性を意識してしまう人もいます。

それでも、運命の相手なんてものがいるとしたら、それは自分がその相手を運命の相手にするかどうかなのかなって思います。

お付き合いをしたり、結婚したりしても、完璧な相手っていないものなんですよ。

完璧って思うなら、それはどこかに嘘が混じってくると思います。

それでも、それも含めて相手が好きで、相手を大事に思えるかなのかなって。

自分が、

「この人と生涯を幸せに生きていく!」

って思えて、行動出来ていれば、それはある種、幸せの形。

赤い糸の行く先は、運命に任せるのではなくて、自分で届ければいいんだって思います。

おわりに

宇山佳佑って、恋愛ものばっかり書いているんですかね。

最初に読んだのは、有名な作品ですが、『桜のような僕の恋人』でした。

そこから、宇山佳佑さんの作品を少しずつ読み進めていますが、いずれも恋愛もの。

いや、おもしろいからいいんですけどね。

そういう一つのジャンルに特化した方っていろんな発想があっておもしろいんです。

恋愛一つでも、こんなにたくさんの切り口があるんだなって。

斜線堂有紀さんも、恋愛の短編集がたくさんありますけど、これでもかってほど引き出しが広い。

どの分野でも、一つの分野に強い人ってすごいなって感じます。