新川帆立

剣崎麗子がかっこよすぎる!新川帆立『元彼の遺言状』

かっこいい女性が主人公の小説って読んでいてとても楽しい。

この本の主人公もまた、そんなかっこいい女性の一人です。

今回読んだのは、新川帆立さんの『元彼の遺言状』です!

このミス大賞を本作で受賞してデビューした新川帆立さん。

続編もすぐに出て、テレビドラマ化もされて大活躍です。

何といっても、デビュー作の『元彼の遺言状』がおもしろい。

剣崎麗子の思い切りの良さが読んでいて気持ちいい。

ここでは、『元彼の遺言状』のあらすじや感想を紹介していきます。

Contents

『元彼の遺言状』のあらすじ

剣持麗子は敏腕弁護士でお金に貪欲。

ある日、お付き合いをしていた男性からプロポーズされる。

しかし、麗子は、婚約指輪のダイヤが小さいことに怒りを感じ、その場を立ち去ってしまう。

一人、家に帰り、ふと元彼である森川英治にメールを送ってみるが、その数日後に、返信があり、彼がすでに亡くなっていることを知る。

それと同時に、英治が、大手製薬会社の御曹司であったこと、不思議な遺言状を残したことを教えられる。

その遺言状とは、

「僕の全財産は、僕を殺した犯人に譲る」

といったものだった。

栄治の死因はインフルエンザだとされていた。

麗子は、栄治と共通の友人であった篠田から相談を持ち掛けられる。

それは、自分が栄治にインフルエンザを感染させた可能性がある、自分が「犯人」になれないかと。

奇抜な依頼は、弁護士としての経歴に良くないと、乗り気でない麗子。

しかし、英治の遺産が思ったよりも巨額であることが判明。

多額の成功報酬を獲得するために、篠田を「犯人」に仕立て上げようと奔走し、篠田の代理人として、森川家主催の「犯人選考会」に参加することになる。

剣崎麗子が自分に正直でかっこいい!

主人公の剣崎麗子は28歳の敏腕弁護士。

大手の法律事務所に所属していましたが、ボーナスを大幅減額されたことに怒り心頭!

「こんな事務所辞めてやる」

といって事務所を飛び出しちゃいます。

更に、交際相手の男性から指輪を差し出されてプロポーズされるも、指輪のダイヤが小さいことに納得がいかない。

「何が何でも、欲しいものは欲しい。それが人間ってもんでしょ。お金がないなら、内臓でも何でも売って、お金を作ってちょうだい」

(新川帆立『元彼の遺言状』より)

こんな捨て台詞を残して店を出ていってしまいます。

これだけ聞くと、けっこうやばい女性なんですが、そこまで自分に正直に生きられる姿って見ていてすっきりします。

『元彼の遺言状』を読み進めれば読み進めるほど、剣崎麗子のかっこよさに心惹かれること間違いなし!

まあ、現実にこういう女性がいたら、まず近づかないと思いますし、仲良くなる自身はありませんが。

男のプライドという問題

剣崎麗子は女性ですが、作品の中では、当然、男性が登場します。

剣崎の上司である津々井弁護士もその一人。

いつもにこにこして、腹の底が読めない津々井弁護士ですが、剣崎の放った一言に顔を真っ赤にして怒ります。

それを横で見ていた別の男性は剣崎に、相手のプライドを傷つけたのだから、相手は死に物狂いでこちらを潰しにくるぞ、と忠告します。

剣崎としては、むかついたから、ちょっと意地悪くらいのつもりで言ったのに、そこまでとは考えていなかった。

このあたりは、男性と女性の差なのかもですが、男のプライドってやつはたしかに面倒くさい。

損得とか、論理性とか無視して、自分のプライドやメンツのために行動しちゃう人ってけっこういるんですね。

メンツなんて言うと、ヤクザみたいに感じるかもしれませんが、その辺にいる人でも、

「俺のことをなめやがった」

と感じただけで、相手に執拗に攻撃することもあります。

いい面もあるんですけどね。

でも、変なプライドなら下手に持たない方が平和です。

相手の求めるものを提供すること

『元彼の遺言状』を読んでいて、

「相手の求めるものを提供すること」

ってすごく重要だなと感じます。

剣崎は、友人からの依頼で、友人を犯人に仕立てるわけですが、犯人と認定するのは、警察ではなく、英治が所有していた株の会社のお偉いさん。

だから、剣崎は論理的に友人が犯人だ、というよりも、このお偉いさんがなにを望むのか、どんな犯人だったらいいのかを考えます。

こういう思考ってなかなかぱっと出てこないものですよね。

でも、すごく大事な視点。

商売をしていれば、顧客の要望を叶えるもの。

単純に商品があって売るとか、依頼を受けたからこなすって話ではなく、相手が望んでいる部分に合致するものを提供できると、相手も喜ぶし、信頼もされる。

それは、家族や友人との間でも同じことなんだと思います。

まあ行き過ぎた相手への配慮は必要ないと思いますけど。

相手の言いなりになるのも違うし、自分がなくなってもいけないと思うし。

ただ、相手がどんなことを思っているのかを知ろうとするだけで、人間関係ってぐっと変わるんだろうなって感じました。

おわりに

『元彼の遺言状』は、ドラマ化もされましたね。

私はドラマは見ていないんですが、妻が見ていて、「おもしろかったー!」と言っていました。

そう言われると、そっちも観てみたくなるんですが、いかんせん、読みたい本が溜まっているという。

新川帆立って、その後も、剣崎麗子を主役とした小説も書いているし、『競争の番人』という、公正取引委員会を舞台にした小説も立て続けに二冊出しています。

かなり書くのが早い作家さんなんでしょうか。

このペースなら毎年、素敵な小説を読書家さんへと届けてくるのだろうと期待が高まります。

『元彼の遺言状』は、このミス大賞受賞作なんですよね。

タイトルは改題したみたいですけど、このクオリティーでデビュー作ってのもすごい。

このミス大賞って、応募数も多いけど、その分、大賞はおもしろいものが多くて、これからも目が離せません。