小惑星が地球に衝突するとしたら。
なにがしたいですか。
誰と最後を過ごしたいと思いますか。
今回読んだのは、知念実希人さんの『神のダイスを見上げて』です!
知念実希人さんは、天久鷹央の推理カルテシリーズのような人気シリーズを始め、数々の作品を手掛ける人気作家の一人ですが、お医者さんとしても有名ですね。
小説にも医療知識が盛り込まれたものが多いです。
本作は、地球に小惑星が落ちてくるかもしれない、という世界を描いています。
ここでは、『神のダイスを見上げて』のあらすじや感想を紹介していきます。
Contents
『神のダイスを見上げて』のあらすじ
地球に巨大小惑星ダイスが衝突するかもしれない。
そんな情報が出回るようになって、世界中が混乱に巻き込まれていた。
最初は、小惑星が地球のすぐそばを通るという報道だった。
それが、もしかしたら接近するかもしらない、落ちてくる可能性がないわけでもない、と徐々に危険な可能性が報じられるようになる。
政府の公式見解では、地球には落ちてこない、というものだったが、ダイスが地球に衝突するという情報はまことしやかに広がっていった。
そして、人類が最後を迎えるまであと5日。
そんな中で、高校生の漆原亮は、たった二人だけの家族だった姉、圭子の死体を発見してしまう。
彼女は、コスモスの花壇の中で、全裸でナイフを刺されて亡くなっていたのだった。
亮は周囲からも異常がられるほどに、たった一人の家族である姉のことを大切に思っていた。
ダイスが衝突するまで残り5日間。
犯人が小惑星の衝突で死ぬなんてことは許さない。
自分の手で、犯人を見つけて復讐する!
そう決意した亮は、 犯人への復讐のために一人の少女に接近する。
それは、同級生の中で禁忌の存在とされていた四元であった。
四元の伝手で、拳銃を手にする亮。
犯人を捜すために、姉の親友や大学のサークルの関係者へと接触を図っていく。
ダイスは果たして落ちてくるのか
小惑星ダイスが地球に衝突する。
この情報は、世界中に広まっているものの、どの政府も、公式見解で認めていない。
混乱させないためなのか事実なのかはわからないけど、地球には衝突しないとしています。
小惑星が衝突する小説って、伊坂幸太郎さんの『終末のフール』や、凪良ゆうさんの『滅びの前のシャングリラ』などがありますね。
どちらも、小惑星が衝突するのは確定の話。
『終末のフール』だと、8年後に小惑星が衝突すると報道されてから5年後の世界。
最初の混乱の波は終わって、小康状態のような状態です。
『滅びの前のシャングリラ』は、もう完全に落ちてくる直前みたいな世界でしたね。
一方で、『神のダイスを見上げて』は、どっちつかずの状態なんですよ。
落ちてくるかもしれないし、落ちてこないかもしれない。
だから、もう落ちてくると思って好き放題する人もいれば、
「落ちてこないのかもしれないんだから、これまでの生活を守る」
って人もいるわけです。
この状態ってなかなかつらいものがありますよね。
なにを信じていいのかわからない。
政府を信じるなら、仕事もしていなければいけないし、生活を守らないと、小惑星が通り過ぎたあと大変なことになります。
衝突するなら、最後の貴重な時間を大事な人や、やりたいことに費やしたい。
でも、本当にぶつかるかどうかを専門機関がわからないはずがないんですよね。
そうなると、政府が正しいのか、それとも嘘をついているのか。
どっちもありそうで悩ましいところですよね。
展開がとにかく早い
『神のダイスを見上げて』はとにかく展開が早くてスピーディー。
とはいえ、のんびりはしていられないんですよ。
もう小惑星がそこまで来ている。
亮は、5日間で犯人を見つけ出して復讐を果たすつもり。
それなら、ゆっくりじっくり証拠を探している暇はないですよね。
けっこう、強硬な手段も取らないと話が進まない。
亮の姉に始まり、ほかにも物語の中では亡くなる人が出てきます。
でも、一般的な小説って、何日も進行していく中で、誰かが殺されたり亡くなったりするものなのに、息つく暇もないほど、激しくいろんな事件が起こります。
実際に、亮も、ほとんど寝る暇もないほどに駆けずり回っています。
読む側としては、次の展開が気になって仕方がなく、一気に引き込まれていきます。
終末ならではの世界
『神のダイスを見上げて』の中で重要な要素の一つとなるのがとある団体。
ダイスの存在が知れ渡るようになってから生まれた『賽の目』と呼ばれる信仰団体ですね。
サイコロのダイスと賽の目でかけているわけです。
これもあながち物語の中だけの話じゃなくて、実際に小惑星が来るってなったら、本当にたくさん生まれてきそうだなと思います。
戦後に新興宗教がたくさん生まれたのと同じですよね。
危機的状況、どうにもならない状況があると、どこかに希望を探そうとして人は集団を作るんだろうなって。
そんな団体の中でも、『賽の目』には、亮の姉である圭子も所属。
小惑星ダイスは、落ちてくるのだと確信し、それは神の意志によるものだって考えを持つ団体。
だから、そこに所属している彼らは、悲観しない。
神によって浄化されるのを待っているのだから。
現実が平穏に続いているときなら、こうした団体って、ただの怪しげな集まりで終わるけど、終末のような世界だと、所属する人の心の支えにもなるんでしょうね。
おわりに
かなり駆け足で最後まで突っ走るイメージの小説でした。
終末における世界観は、ちょっと無茶な部分もありつつ、楽しく読ませてもらいました。
小惑星もので言えば、上記した『終末のフール』や、『滅びの前のシャングリラ』だけでなく、最近だと、『此の世の果ての殺人』などもそうですね。
小惑星以外にも、地球が滅亡の危機に陥る話ってあるので、それらがどんな世界を描いているのかを読み比べてみるのもおもしろいかなと思います。