実際の出来事をもとにできた小説というのは、そこにかかった熱量が違います。
たとえ文章自体が著名な作家に比べて劣っていたとしても、それを上回るくらいに心に響くものがあるものです。
今回紹介するのは、田中修治さんの『破天荒フェニックス オンデーズ再生物語』です!
眼鏡チェーン店オンデーズといえば、耳にしたことがある人もいるかと思います。
今もいろんな新しいキャンペーンを行っていて、ホームページを見てみてもおもしろいなと感じます。
この『破天荒フェニックス』はほぼ実話。
著者の田中修治さんが破産寸前のオンデーズを買収し立て直すという話です。
読んでいて本当に破天荒な人だなぁと感じますが、それくらいの人だからこそ、企業の立て直しに成功したのかもしれませんね。
Contents
『破天荒フェニックス』のあらすじ
主人公は著者の田中修治(小説のスタート時で30歳)。
もともと小さなデザイン会社を経営していたが、企業再生案件として関わっていたメガネチェーン店「オンデーズ」の買収を決意する。
当時の「オンデーズ」は、年間の売り上げが20億円。
それだけ聞くと大きな企業だと感じるが、実際には借金が14億もあり、月々の返済は8000万から1億で、常に資金繰りに悩まされている状態。
銀行からも難色を示され、周囲から見ると完全に倒産だといわれていた。
しかし、田中から見ると、これは再生可能なおもしろい企業であった。
各地のお店を見ているとスタッフは誇りを持って働いている。
見えないところもきちんと整理整頓されている。
田中は腐っている企業はそういう部分に如実にあらわれると考えていた。
日本には様々な業界があるが、どこもこれから参入するには古参の企業が力を持っている。
そんななか、田中は眼鏡業界にはまだ可能性があると感じており、オンデーズは眼鏡業界で上に登っていけると確信をしていた。
眼鏡業界で世界一を目指す!
意気揚々と社長になった田中であったが、就任直後から苦難の連続であった。
銀行からは融資はできないとの「死刑宣告」。
急な経営陣の交代と方針に反発する役員。
田中の方針に従ってくれない各地の店舗。
共にオンデーズを盛り上げるはずであった人物の裏切り。
そんな中でも田中は、なんとかオンデーズを立て直そうと様々な方策を打ち出していく。
業界屈指の他社による、オンデーズではまだ真似ができない戦略によってさらに苦しい立場となるが、それでも諦めることなく、何度も立ち上がり、オンデーズの名を世に知らしめていくのであった。
そしてついには海を越えて海外へ。
どこまでもその翼を広げていくオンデーズ。
その苦難からの再生復活の軌跡がここにつめられている。
なんといっても田中修治さんの発想力と行動力!
『破天荒フェニックス』の魅力といえばなんといっても田中修治さんの破天荒な行動にあります。
ふつうだったら考えないような発想力と、それを本当にやってしまう行動力!!
読んでいて、「えっ!そんなことやっちゃうの!?」と何度も思わされました。
田中修治さんと同じように考えるだけ、思いつくだけならできる人もいると思います。
それを実際に行動して、実現のために必死に努力できる人となると、ほとんどいないといえます。
そんな人が何人もいたら、世の中もっとすごいことになっていますよね。
だからこそ、これだけ楽しく読めるし、次はいったい何をしてくれるんだろう、このピンチをどうやって乗り切るんだろうとドキドキさせられます。
でもそれだけではないですよね。
読んでいてわかるのは、田中さんの言動って、ただの思いつきではないということ。
きちんとその発想には意味があり、理屈があり、考えられたうえでのものだということ。
何でもいいから新しいことをしよう!だったら成功なんてありえません。
基本的なことはわかったうえで、その先をいこうとしていたのだと感じます。
周囲の人の支えの力強さ
そんな破天荒な田中修治さんでしたが、どんなに発想力があり、本人が行動できても、自分一人では実現なんてできません。
オンデーズの再生には、スタート当初から共に歩んできた奥野さんを始めとする力強い支えがあったからこそだと感じました。
中には裏切る人間も出てきましたが、少しずつ信頼できる人材が周囲に集まり、この再生劇を成功させたのです。
しかし、読んでいて思うのは、田中さんの下で働くのって、すごくやりがいはある反面、むちゃくちゃ大変そうです。
自分だったらぜったいに胃に穴があいてしまいます。
一緒に頑張っていけた人たちも、その中で鍛えられたのか、それとも最初からそんなつわものだったのか、とにかく常人ではないですよね。
自社の利益だけではないオンデーズ
『破天荒フェニックス』の中でやはりいいなと感じるのは、自分たちのことばかりではなく、眼鏡を使う人たちのことを思って経営をしているところです。
特に東日本大震災のときに、現地におもむき、眼鏡で困っている人に提供して回った話。
ふつうの企業だったら、復興のために義援金を用意したり、食料だったりを準備したりと考えるところですよね。
大災害にあって不安なときに、視力まで奪われていたらその不安は計り知れません。
視力うんぬんだけでなく、そうした困っている人のために何ができるのかを考えられる人たちという点で読んでいて好感がもてました。
テレビドラマ化された『破天荒フェニックス』
本書は、『破天荒フェニックス』のタイトルで、テレビ朝日新春3夜連続ドラマとして2020年1月3日から1月5日に放送されました。
年始の連続ドラマという事もあり、多くの人がご覧になったのではないでしょうか。
主演は勝地涼さん。
それ以外にも伊藤淳史さん、貫地谷しほりさんと有名な方も登場しています。
基本的な内容は、原作にそって作られていたように思いますが、それでも小説と原作では違う点も多々。
そういう部分を感じながら見るのもおもしろいかなと思います。
おわりに
『破天荒フェニックス』のあらすじと感想でした。
冒頭でもふれたように、文章力なんかは、すみませんが著名な作家さんの小説に比べると劣るかなと感じます。
でも、けっこうな長さの『破天荒フェニックス』が気づけばあっという間に最後まで読んでしまっていたのは、そこに詰め込まれた情熱によるものなのかと感じます。
きっと小説では語り切れないもっともっと熱い想いが実際にはあったのだと思わずにはいれません。
この小説は、起業を考えている人にも、経営者にももちろん役に立つ本だと思います。
そうでなくても、この小説から力をもらい、自分のやろうとしていることへの励みになると思います。
私自身も、様々な事情でできないかなと感じて避けていたものに、挑戦しようという気持ちにさせられます。
オンデーズの眼鏡ってこれまで買ったことなかったのですが、次はオンデーズで買いたくなってしまいますね。