小説を書く

小説を書くなら長編と短編どちらから始めればいい?執筆初心者に向けて。

初めて小説を書くときに、長編・短編・掌編小説など何から書けばいいか。

よく言われるのは、短い小説から書いて、完成させる経験を積むことだと言われています。

でも一方で、新人賞を経て受賞してデビューするなら長編小説が書けないといけません。

悩みますねー。

割と好みや相性もあると思うんですよ。

ここでは、初心者は、短編小説と長編小説、どちらから書けばいいのかを考えていきたいと思います。

Contents

短編小説から書いた方がいい意見

いろいろな人の意見を見ていくと、掌編や短編といった短い小説から書いた方がいいという意見が優勢です。

まあね、それはもっともな意見なわけです。

長編小説って文字数でいえば、12万文字以上といわれています。

実際に書店に置いている小説だと、8万文字とか10万文字くらいのものもありますが、それにしたって長いですよね。

短編小説なら4000文字から4万文字くらいです。

それよりも短い掌編小説やショートショートと言われるものもあります。

小説を書いたことがない人が、長編にいきなり挑戦するには、ハードルが高そうと感じるものです。

また、小説を書いていて感じることは、短くても長くても、物語を冒頭から最後まで書ききる経験が重要ということ。

それを繰り返すことで小説を書く力が身につくのも間違いありません。

長編小説を書こうと思っても、挫折する人はたくさんいる。

だったら、短編小説で力を磨いてから長編小説に挑戦するのはいかがでしょう。

〇長編は長くて途中で挫折することがある

〇長編はとにかく時間がかかる

〇小説を完結させることで、書き手としての実力があがる

〇だから、短編や掌編をたくさん書いて、小説家としての実力をつけるべき!

ざっくりすると、こういった意見が初心者は短編から書いた方がいいという理由です。

長編小説から書いた方がいい意見

「そう言われてみると、短編から書いた方がいいのかも」

そう思ったあなた!

いやいや、ちょっと待ってください。

長編小説から書いた方がいいという意見も聞いておきましょう。

上記したように、長編は初心者にはハードルが高くて、短編のような短くて書きやすいものからというのはよくわかります。

でも、短編と長編ってそもそも考え方がけっこう違います。

このあたりは実際に書いてみないと感じられませんが、求められるものも、必要なスキルも別です。

また、小説の新人賞は、基本的に長編(長さ的には中編から長編)のものが基本ですね。

短編の新人賞もありますが、それを受賞したとしても、短編一本では本になりません。

デビューのために、短編を書きためるか、結局、長編を書かなくてはいけなくなります。

だったら、最初から長編を意識して書いた方がいいのでは。

さらに言うと、だいたい一発目から、凄く素敵な長編小説が書けるわけがない。

それができるのは、一部の才能がある人だけ。

長編を書いていく過程で、自分に足りないものが明確になっていくので、その経験こそが作家としての力をつける価値あるものである。

さあ、短編などと言わずに長編小説を書こう。

〇短編と長編では求められるものが違う

〇新人賞・デビューを目指すなら長編が書けなくてはいけない

〇挫折しても、長編を書くことでわかる経験というものがある

長編を推す意見にも一定の理があると思いませんか。

長編と短編ってなにが違う?

基本の工程はだいたい一緒

長編と短編のもっともわかりやすい違いは長さですね。

数千文字から3,4万文字で終わる短編に比べると、長編は少なくとも倍以上の文章量を必要とします。

でも、やることって大きな差はないんですよ。

テーマを決めて、登場人物や世界観を創り上げ、プロットを書いて、執筆する。

それだけなんです。

小説を書こうと思った時点で、きっと書きたいものってあると思います。

それをもとにして、少しずつ世界を広げていくんですね。

凝縮させる短編と、深みを持たせる長編

ただ、文章量が違うので、できること、できないことはかなり違うってきます。

長編だと、登場人物や世界観を序盤で提示しながら事件なり、問題を起こしていきます。

最近読んだ本だと、今村昌弘さんの『屍人荘の殺人』がわかりやすいですね。

2017年に鮎川哲也賞を受賞した今村昌弘さんのデビュー作で、2019年には文庫化、神木隆之介さん主演で映画化がされています。

主人公の葉村くんがミステリ愛好会の会長である明智さんとともに、映画研究部の合宿に参加して、そこで殺人事件が起こるというものです。

詳しくはネタバレになるので書きませんが、冒頭で羽村くんと明智さんのやりとりから、二人の関係や取り巻く環境が見えてきます。

その後、映画研究会の合宿に何かあると思った明智さんがなんとか合宿に潜り込もうと奮闘し、どうにかこうにか合宿に参加することができるようになる。

さあ、だいたいそのあたりで、短編一本分くらいの文章量になっちゃうんです。

でも、長編はこうしてじっくりと人間関係や状況を整理できるから、それが後半、伏線となったり、深みをもたせることになったりしていきます。

一方で、短編は、長ったらしく二人の関係なんて論じている余裕はない。

文字数が限られているのですから。

説明的な表現や描写はカットし、いきなり確信から入ることが多いです。

村田沙耶香さんの『信仰』(こちらは短編集)の表題作「信仰」では、冒頭から、主人公が高校時代の友人から、カルト宗教に誘われます。

誘われるというか、一緒に立ち上げようって言われるんですね。

そこからの展開はあっという間。

気づけばその宗教が出来上がっています。

短いはずの物語から、読者に訴えかけるものが、すごい熱量で飛び出してきます。

大きい世界と狭い世界

長編と短編だと、物語に盛り込むことができる量が違うのはわかると思います。

そもそも、登場人物の数が違います。

一般的に短編を書くときは、登場させるのは一人から三人くらいがいいとされています。

もちろん、たくさん登場人物が出るのにおもしろい作品もありますが、初心者が書く上では、人数を減らすようにと言われます。

長編は、途中に伏線を張り巡らせて、後半で一気に回収していくところに凄みがありますよね。

物語の中の時間で見ても、短編よりも長編の方が、長いスパンの話を書くことができる。

より複雑な構成にすることもできるし、歴史的な話や、構造上の説明を入れることができるのも長編小説です。

短編小説は、短い中にぎゅっと凝縮し、それでいて、読者に驚きと充足感を与える優れものです。

物語を創るという点では一緒でも、その実態はかなり違うものだと感じます。

私は長編からを書くことを薦めます!

私は長編小説から書くことを薦めます!

とはいえ、あなたがどういう理由で小説を書くのかにもよるのかなと思っています。

趣味で書くなら短いもののほうが導入としてはいいでしょう。

でも、小説家としてのデビューを考えているのなら長編に挑戦しましょう。

趣味で書くなら短いものから

「とりあえず、小説を書いてみたい」

そういう人なら短編から書いた方がやりやすいとは思います。

上記したように、短い小説を書いて完結させるということはとても重要なことだからです。

小説投稿サイトの「小説家になろう」でも、一話などの短編で書いてみて、それがいい具合にできていたら、そこから連載、長編に移行するという動きが主流です。

まず試しに小説を書くのであれば、短いものでいいですし、文字数なんて気にせずに、あなたの物語を創ってみるといいなと思います。

新人賞を目指すなら長編を

「私は小説家としてデビューしたいんだ!」

そういうあなたは、長編小説から書いちゃいましょう。

途中で挫折するかも知れない?

それでもいいんです。

挫折したら挫折したなりに、なぜ書き上げられなかったのかわかると思います。

あくまで、デビューするのなら、自分に長編小説を書けるだけの実力をつけなくてはいけないからです。

世の中には、いきなり長編を書いて、それが初めて書いた小説なのに、新人賞を受賞してデビューしたなんて人もいます。

『名も無き世界のエンドロール』で小説すばる新人賞を受賞した行成薫がそうですね。

ご本人がアプリのnoteでも語っていますが、そもそも、プロットすら作らずにいきなり書いたみたいです。

こんなことは滅多にありませんが、長編を書かないと自分の本当の未熟さというのは感じられません。

自分の弱いポイントがわかるから次に書くとき上達します。

短いのを一つ書いてから長編という考えも

小説家であり、小説講座も開設している鈴木輝一郎さん。

歴史小説を中心に書かれている方です。

鈴木輝一郎さんは、YouTubeもされていますが、その中で、小説講座を受講した人には、まずは5000文字の小説を書いてもらうことにしていると話しています。

これは、どんなに下手でも変でもいいから、とにかく5000文字書き上げてくるようにというものらしいです。

そして、それが終わった人から、長編小説を書かせています。

小説を完結させるという経験をさせながらも、あくまで焦点は長編小説で新人賞ということなのでしょう。

おわりに

初心者が小説を書く上で、短編と長編どちらから書けばいいのかという内容で紹介してきました。

あくまで私は長編推しですが、好みも相性もあるのがふつうです。

上記の話を参考にしながら、自分がやりやすい方から始めてみてください。

前段階として、あなたがなぜ小説を書きたいのかと考えてみるのもいいですね。

自分の動機がわかれば、そのあとに必要なことも見えてくるものです。

小説を書くというのはとても楽しい。

ぜひ共々に、良い作品を生み出していきましょう。