読んですぐに思ったのは、
「自身の体験をもとにした小説ほどリアルなものはない」
ということ。
それくらい雪国の生活というものは自分とは縁がなく、小説の描写は生々しかったです。
雪国の生活と、過酷な環境で育った女子高生たち。
今回読んだのは、櫛木理宇さんの『赤と白』です。
第25回小説すばる新人賞受賞作になります。
櫛木理宇さんって、どこかで聞いたことのある名前だなと思ったら、『ホーンテッド・キャンパス』を書いた人でもあったんですね。
こちらは、第19回日本ホラー小説大賞読者賞を受賞しています。
私の職場にもひとそろいありましたが、かなりのシリーズになっていて、こちらもおすすめです。
Contents
『赤と白』のあらすじ
新潟の雪深い町で暮らす、高校生の小柚子と弥子。
冬になると毎日、雪かきをするのがあたり前の日課。
そんな生活に不満を言いながらも二人は仲良く日々を過ごしていた。
クラスではカーストをA~DにわけるとBグループに所属。
新作のアイスを食べに行ったり、とりとめもなくおしゃべりをしたり。
しかし、その一方で、二人はお互いにいうことのできない事情を抱えていた。
そんなある日、小学生の頃に転校していった友人の京香が、双子の姉の療養のために町に戻ってきた。
弥子は久しぶりと歓迎するが、小柚子は京香に怯えた態度を見せていた。
雪国の過酷さがとても伝わる
私の実家もいま住んでいるところも、雪といえば年に一回積もるかどうか。
積もったら、雪だるま作ろうか、出勤面倒だなって思うくらい。
だから、テレビで新潟などの日本海側が豪雪となっても、
「今年もすごいんだなあ」
としか思ったことがありませんでした。
でも、『赤と白』では、雪国での当たり前の生活がリアルに描かれていて、自分のこれまでの想像力のなさが恥ずかしくなりました。
雪が珍しい地域からすると、雪というのは冬の風物詩であり、喜んで遊ぶようなもの。
でも、雪国では日常であり、自然災害であり、命に関わるものだということが感じられます。
家族の問題と閉塞感
『赤と白』に登場する女子高生たちはそれぞれに問題を抱えています。
過去の誰にも打ち明けられない秘密。
家族からの歪んだ視線。
役割を押しつけられて積もっていく鬱屈とした感情。
家族に娘として扱われなかった少女。
家族の問題というのは、よく使われるテーマであり、特別珍しいものではありません。
でも、『赤と白』では、女子高生たちが抱える問題、そこから抜け出せない苦しさ、そういったものが豪雪地帯の描写の組み合わさってより読者に訴えかけるものがあります。
どうにかしたくても、どうにもならない諦めにも似た気持ち。
狭い世界に押し込められた閉塞感。
その中でもわずかなつながりを求めて、どこかに救いを求めているのだろうなと思ってしまいます。
あくまで小説の中の話ではありますが、現実にこういった子どもたちっているんですよね。
仕事柄、そうしたケースをいくつも見てきているため、読んでいて苦いものがありました。
おわりに
読了後はなんともいえないやるせない気持ちが沸き起こってきます。
読んでいる途中でも、
「なんだこの親たちは!」
と思わずにはいられない。
でも、現実にそういうことはあり、子どもたちにその環境を自分で選ぶことはできないし、そこから自分の意思で抜け出すことも容易ではない。
その果てがこの結果なのか、と。
親や家庭がすべて悪いとは言えませんが、でも、もしもっと違った親のもとに生まれ育てばどうだったのだろうか、そんなことも思わされます。
楽しい小説ではないですが考えさせられるものは多々ありです。