就職活動に向けて多くの書籍が出版されています。
就活のノウハウ本は数知れず。
でも、この本は仕事というものの本質を私たちに教えてくれています。
今回紹介するのは、喜多川泰さんの『手紙屋~僕の就職活動を変えた十通の手紙~』です。
内容としては、就活に悩む西山諒太が、行きつけの喫茶店で『手紙屋』という存在を知ります。
手紙屋は10通の手紙のやり取りでその人に必要なことを教えてくれます。
手紙のやり取りの中で諒太自身も成長し、自分の進む道を選んでいくという話です。
その中で個人的に気に入った部分や感じたことを紹介していきます。
Contents
著者の喜多川泰さん
喜多川泰さんは、1970年5月10日生まれの作家です。
東京生まれですが愛媛県で育ち、愛媛県立西条高等学校から東京学芸大学へ進学・卒業。
卒業後は、大手の学習塾に就職。
1998年に独立して横浜に新たな学習塾を立ち上げました。
1970年生まれだから独立したのが28歳くらいのことになりますね。
塾の授業の際に、塾生に向けて、様々な話をしてきましたが、それを本にまとめてみたらどうかといわれ、2005年に『賢者の書』を出版しました。
その後も、『手紙屋』や『上京物語』、『運転者』など数多くの書籍を世に送り出しています。
いずれも本も、人生の教訓となるような名言がたくさん出てきて読みごたえがありますね。
働くという行為も物々交換である
まず最初に出てくる気になった内容。
それは、”働く”という行為も物々交換であるということです。
ぱっと働くってことをイメージすると、働くことで給料をもらうってものですよね。
でも、『手紙屋』ではそれだけではないと教えてくれています。
”働く”という行為もまた物々交換です。先の言葉を使えば、
『会社が持っているものの中で自分が欲しい”お金”や”安定”と、自分が持っているものの中で相手が欲しがる”労働力”と”時間”を、お互いがちょうどいいと思う量で交換している』
ということになります。しかしもっと深く考えてみると、会社が持っているものの中であなたがどうしても欲しいと思えるものは、お金や安定、多くの休日や福利厚生の充実以外に本当はたくさんあるはずです。同様に、あなたの持っているものの中で会社が欲しがるものは、時間と労働力以外にもたくさんあることに気がつくはずです。
(喜多川泰『手紙屋』より)
物々交換と言われると、労働力と給料を交換していることは理解できますね。
会社側にそれだけでなく時間を提供し、こちらは給料だけでなく福利厚生や安定ももらっている。
それ以外にも……と言われるとあとは何でしょうか。
私の場合、もらっているものとしては、仕事のやりがいや人生の充実、仕事でもかなり重要な役割を担うようになっているので、承認欲求が満たされているとも思えます。
ただ生活するために働くだけの場ではないことは確かですね。
一緒に働く同僚とのやり取りからも多くの事が与えてもらえているので、そうした出会いであったり、同僚とのつながりであったりというのも働かなければ得られなかったものです。
一方で、私は会社に労働力と時間以外にどんなことを渡すことができているのかと考えるとこれが結構難しい。
あえていうなら、場の雰囲気、その部署の雰囲気は、よく自分がいることで明るくなるとか、会話が生まれて仕事がしやすくなると言われることはあります。
また、意見も結構いう方なので、それがいい刺激になっている部分もあるのかな。
このあたりは人それぞれになってきますが、自分という存在が、ただの労働力ではないと思えてきますね。
相手に『称号』を与えることの大切さ
『手紙屋』の中では、こんな言葉がありました。
そこで今日は、あなたが出会った人すべてをあなたの味方にする魔法の方法を教えようと思います。
それは……、
相手にこうなってほしいという『称号』を与えてしまうのです。
(喜多川泰『手紙屋』より)
これは、自分の周囲の人に、『約束を破らない人』とか、『小さなことも丁寧にやる人』とか、『時間を守る人』とか、そういった称号を与えることの大切さを教えてくれています。
この称号というのも、今現在のその人のことをいうのではなく、自分がその人にこうあってほしいというものを称号として与えるというのです。
人間はそうして与えられた称号のとおりに生きようとするとも書かれていました。
自分のことを振り返ってみると、これって確かにそうなんですよね。
ふだんあまり意識しないけれど、ものすごくしっくりくる言葉です。
私自身も、小さいときに学校の先生から、
「授業のときにすごく姿勢がいいよね」
と言われたことがあって、それからというもの授業中はだらけた姿勢で机に座ることがなくなりました。
もっと大きくなってからも、友人たちから、
「いつも約束の時間に余裕を持って来る人」
と思われるようになってからは、遅刻をほとんどしなくなりました。
当時の相手が自分に対して特に意識せずに言った言葉ですが、それが自分の中にしっかりと根付いて、その後の行動を変えていたのだなと気づきました。
『手紙屋』では、称号をつけることを意識的に行うことで周囲を味方につけることができると書かれています。
これって別に人を操作してやろうとかそういった意味ではありません。
たとえば同じ職場の同僚でも、
「いつも資料が見やすくて助かるね」
と声をかけるだけで、その人は『資料作りが上手な人』となります。
その時点でそこまで本当に上手じゃなくても、そうなろうと自然と努力するようになるのです。
こういう言葉って、別にわざと言おうとしなくても、自然と出てくる場面ってありますよね。
それをきちんと相手に伝えたり、直接じゃなくても、間接的に伝わることで意味を持ちます。
そうやってみんなが少しずつ頑張れて成長していく職場になると、自分にもみんなにとってもいい環境が生まれていきますね。
おわりに
『手紙屋』では、10通の手紙のやりとりなので、上記した内容以外にもたくさんの教訓が詰め込まれています。
後半に行くに従って、より人生においての本質的な部分に近づいていくなっていう印象です。
喜多川泰さんの本って読んだのはこれが初めてでしたが、いますぐに実践できる内容が多くてとてもいいですね。
こういった本を読むと、著者がどういった人生を歩んできて、なぜこういうことを書くようになったのかって気になってきます。
背景を知ると、余計にその一言一言に重みが出てきますよね。
最初に書かれたのは『賢者の書』。
次はその本を読んでみようと思います。