黄色といえばどんなイメージでしょうか。
金運上昇って感じがしますよね。
小説の中でもそうした意味で度々出てきますが、でもそれだけではない。
今回読んだのは、川上未映子さんの『黄色い家』です!
2021年7月から2022年10月までの間、読売新聞で連載。
それが2023年2月、単行本として出版されました。
黄色と狂気に彩られた世界がここにはあります。
これがね、思っていたより長い小説なんですよ。
ページ数にして、なんと601ページ!
でもそれを感じさせないおもしろさがあって、後半に入れば入るほど、読む手が止められないという。
この長さなのに一日で一気読みしてしまいました。
ここでは、『黄色い家』のあらすじや感想を紹介していきます。
Contents
『黄色い家』のあらすじ
伊藤花は、ある日、ネットニュースの記事に知っている名前を見つけて驚く。
それは、20年ほど前に一緒に暮らしていた吉川黄美子だった。
黄美子は、二十代女性に対する、傷害、脅迫及び逮捕監禁の罪で裁判を受けていたのだった。
花は小さいころから、スナックで働くシングルマザーの母親との極貧の生活を送っていた。
そんな生活から花を救い出してくれたのは黄美子だった。
花は17歳の時に家を出て黄美子と一緒に暮らし始めた。
二人でスナック「れもん」を開店していく。
店は軌道に乗り始め、そこにホステスをやっていた蘭、「れもん」に客としてやってきた女子高生の桃子も一緒にお店で働くようになった。
やがて4人は一軒家で疑似家族のような日々を過ごす。
しかし、楽しかった毎日は、あるきっかけによって壊れていく。
お金が人を狂わせる
生きていく上でお金って重要。
ないよりは絶対にあったほうがいいし、お金があるから好きなこともできる。
一方で、お金のために人生が狂ってしまう人たちも。
『黄色い家』では、いたるところでお金によるトラブルが発生します。
一生懸命自分が必死に働いて貯めたお金。
それが自分とは関係のないことのために失ってしまったら、冷静ではいられない。
そりゃそうです。
ちょっと内気だった人物も、そのときばかりは怒り狂ってタガが外れる。
その豹変ぶりは、小説の世界だってびっくりするのに、現実に起きたら、いやもう付き合いを考えたくなるレベルですね。
それくらい、お金というものは人を支配して、人を変えてしまう。
『黄色い家』はお金によって幸せにもなり、狂わされもする人たちが登場します。
お金っていったいなんなんだろう。
幸せと直結するようで、でもちょっと違う。
そこには人を狂気に惑わせる魅力があり、油断するとあっという間に吞まれてしまう。
人にとって大切なもの
花たちは、後半、犯罪に手を染めながらお金を稼いで生きていきます。
犯罪は正しい行為とはいえない。
そんなことって誰だってわかっているんですよね。
それでもそこに走らなければいけなかったわけがそこには存在します。
花はお金に執着しているような姿を見せます。
人格変わってるじゃん!
って読んでいて怖くなる。
でも、本当にお金が欲しかっただけなのか、といえばそこには疑問が生まれる。
きっと、黄美子と生きてきた半生、蘭や桃子と過ごした時間。
そうした花にとってかけがえのない場所を守りたかったのだと感じました。
そのために必要なのはとにかくお金だった。
そこの繋がりが切れてしまうことを恐れ、そのために必死になりすぎて、逆に蘭や桃子との距離ができてしまう。
読んでいてすごく苦しくもあり、もどかしくもある。
けっこうね、現実の世界でも、いまいる場所を守るために犯罪に走る子っているんですよね。
なにが大切なのかって人によって違うけど、それを本当の意味で守ることってどうすればいいのかを考えないと、結局すべて失ってしまうのだろうなって。
おわりに
長い小説だけど、それを感じさせないおもしろさでした。
読み終わってみて、救いがあったのか、どうなのかって難しいところですが。
苦しい生き方は変わらないですし、それでハッピーエンドかと言われると、それはやっぱり違う。
でも、きっと最後には大切なことに気づけたのかなって思わせてくれます。
川上未映子さんは、以前、『きみは赤ちゃん』という出産のエッセイを読んだことがあったのですが、小説は初めてでした。
思った以上にボリュームがあってびびりましたがすごくおもしろい。
過去作もこれから少しずつ手を伸ばしていきたいと思います。