伊坂幸太郎

伊坂幸太郎『陽気なギャングが地球を回す』こんな銀行強盗はありかも?

「やるべきことをすべて行えば道は開けるわけです」

(伊坂幸太郎『陽気なギャングが地球を回す』より)

こんな教訓的な名言をいうのが銀行強盗だから驚きます。

ちょっと変わった力をもった4人組の銀行強盗を描く本書。

今回紹介するのは、伊坂幸太郎さんの『陽気なギャングが地球を回す』です!

この小説も伊坂さんの他作品とのつながりがあって、これはって思わされますね。

ここでは、『陽気なギャングが地球を回す』のあらすじや感想を紹介していきます。

Contents

『陽気なギャングが地球を回す』のあらすじ

主役となるのは4人の男女。

嘘を見抜く名人、天才スリ、演説の達人、精確な体内時計を持つ女。

この4人は、失敗したことがない、百発百中の銀行強盗なのである。

この日も、事前に打ち合わせをしたとおり、4人で銀行強盗を実施する。

計画に狂いはない。

予定どおり銀行を襲撃し、わずかな時間で4000万円の現金を奪っていく。

あとは逃げるだけ……。

しかし、その道中、あろうことか同じく逃走中の現金輸送車襲撃犯の車とぶつかるアクシデントにあうのであった!

車を壊してしまった現金輸送車襲撃犯たちは、4人の車を奪っていく……4000万円の入ったトランクケースと一緒に!

せっかくの仕事の成果がふいに……。

いや、このままでは終われない。

彼らを追いかけ現金を取り返すのだ!

他作品とのつながり

伊坂幸太郎さんの小説といえば、伊坂さんの作品同士のつながりが楽しみの一つです。

『陽気なギャングが地球を回す』もその例にもれず、他作品とのつながりがあります。

たとえば、伊坂さんの2作目にあたる『ラッシュライフ』。

「そうしてから塚本は、「高橋」が真相を言い当てた事件の例をいくつか挙げた。横浜で起きた映画館の爆破未遂事件というのもあった。河原崎の記憶にもある事件だ。爆弾の仕掛けられた座席の位置にルールがあったのだ、と塚本は説明をした」

(伊坂幸太郎『ラッシュライフ』P233より)

この映画館爆破未遂事件の現場には、ちょうど『陽気なギャングが地球を回す』の4人がいて、この事件をきっかけに出会い、銀行強盗グループとなるのです。

それから、デビュー作である『オーデュボンの祈り』に登場する右足が不自由な田中。

彼も『陽気なギャングが地球を回す』に登場します。

田中は『ゴールデンスランバー』にも『モダンタイムス』にも登場するから大忙しですね。

『陽気なギャングが地球を回す』での田中は、20代で30代にはいかないだろうと書かれているので20代後半だと思われます。

引きこもりなのに盗聴もできるし、どんなものでも合鍵を手に入れてくるという物語に欠かせない能力を持っています。

本作も名言や迷言がいっぱい!

伊坂幸太郎さんといえば、小説のおもしろさもさることながら、名言がばんばん出てくるところも特徴的ですね。

「正しいことが人をいつも幸せにするとは限らない」

(伊坂幸太郎『陽気なギャングが地球を回す』より)

これはまさにそのとおり。

何が正しい、何が正しくないって人間だいたいわかっているんですよね。

でも正しいことばかりじゃその人にとっていいことなのかって別物です。

盲目的な正義漢って迷惑でしかないこともあります。

「感じたこと全部をわざわざ口に出す必要はないんだよ。誰もが心の中で思っているだけならば、世界は平和だ」

(伊坂幸太郎『陽気なギャングが地球を回す』より)

なんでそれを言っちゃうかなーと感じることもよくあります。

あえていう必要ないでしょ!っていう言葉を簡単にいってしまうから、雰囲気が悪くなったり、もめごとの元になったり。

いいたいことをいうのが悪いわけではないけど、その言葉が持つ意味は考えなくちゃですよね。

「世の中で一番大切なのはローンだよ。地球はローンで回ってる」

(伊坂幸太郎『陽気なギャングが地球を回す』より)

これはかなり気に入ったセリフ。

たしかにローンは大切だ!

おわりに

『陽気なギャングが地球を回す』の書評・感想でした。

ギャングという割にはみんなふつうの感性を持っていて、粗暴なところもない。

いや、ふつうは言い過ぎかもですね、個性的だけどそこまで世間ずれしていないくらいでしょうか。

銀行強盗と、奪われたお金を奪い返すっていった内容なのに、暗い感じも殺伐とした雰囲気も出させないところに伊坂さんの秀逸さが光ります。

陽気なとタイトルについているのは伊達ではないですね。

そこそこのページ数ですが、これもすんなり読めてしまう小説でした。

続編もあるのでそちらも読みたいです。