作家の池井戸潤さんには数々の名作があります。
その中でも特に有名なのが『半沢直樹』です。
原作の『オレたちバブル入行組』や『オレたち花のバブル組』など、それはそれはおもしろい小説で、読書家からは高い評価を受けていました。
一方で、ふだん本を読まない人たちにはそこまでの知名度はありませんでした。
でも『半沢直樹』がドラマ化されると、1話目から視聴率19.4%!
全体の平均視聴率28.7%!
最終話にいたっては42.2%というとんでもない数字を出しました。
キャストの顔触れや、その見事な演技。
悪を打ち倒すというわかりやすいストーリー。
大和田常務との最後のやりとりはぐっとこぶしを握りながら目が離せませんでした。
そしてその人気の一役を担ったのが耳に残る数々の名言たち!
「やられたらやりかえす!」
「倍返しだ!」
と、2013年の新語・流行語大賞にもなったこの言葉は、子どもたちもマネするほど日本中に広まりました。
でも、『半沢直樹』に出てくる名言はこれだけではありません。
池井戸潤作品は、名言が多いのですが、『半沢直樹』もまた読者の心を打つ言葉にあふれています。
ここでは、〈半沢直樹〉シリーズで出てきた名言たちを紹介していきます。
Contents
半沢直樹第1巻『オレたちバブル入行組』
ここから各巻ごとに名言とその状況を紹介していきます。
経理課長の波野が、銀行から5億をだましとったことを、社長に言われたとおりにしただけだ、私は経営に携わっていないと言い訳するのに対する半沢のセリフ。
「私だって、東京中央銀行の行員、つまりはあんたと同じ一社員にすぎない。経営にも関係がない。自分の懐が痛むわけではない。だけど、私は一社会人としてあんたのやったことは絶対に許せない。たとえあんたがどれだけ迷惑だろうと、あんたがやったことの責任は必ずとってもらう」
(池井戸潤『オレたちバブル入行組』(非護送船団)P194)
半沢と渡真利が飲んでいるときに銀行を退職してコンサルタント会社を立ち上げた先輩が苦戦をしている、独立したときに、銀行時代の取引先を回っても体よく追い払われるものだという話から。
そしてはたと気づくのだ。取引先が自分に平身低頭していたのは、実力に感服していたわけではなく、ただ融資課長や副支店長といった肩書があったからだと。いかに銀行の看板が大きかったかと。そしてもう自分は銀行員ではないのだと――。
(池井戸潤『オレたちバブル入行組』(非護送船団)P211より)
銀行に臨店調査に来た木村部長代理が、半沢に西大阪スチールの融資問題で債権回収ができなければ相応の責任をとってもらうことになると居丈高に告げるのに対する半沢のセリフ。
「つまらぬしがらみで事実を歪めようとすれば、真相が明らかになったとき、責任を問われる。臨店調査は結構ですし、おそらく私にとって不利な報告書を書かれるおつもりでしょう。ですが、後になってそれがまったく事実に反するとわかったときには、報告者であるあなたの能力不足が露呈するだけです」
(池井戸潤『オレたちバブル入行組』(黒花)P249より)
臨店調査で木村部長代理に反抗した半沢に、浅野支店長が「自分の責任を素直に認めろ!融資課長として恥ずかしくないのか!」と怒り狂うのに対しての反論。
「責任があることなら、素直に認めましょう。それは融資課長として、というより銀行員として、さらにいえばサラリーマンとして当然のことです。ですが、自分に責任のないことまで謝罪をするなんて、そのほうが恥ずかしいし、無責任な行動だと思いますがね」
(池井戸潤『オレたちバブル入行組』(黒花)P251より)
逃げまわる西大阪スチールの東田社長をキャバクラ店で待ち伏せした半沢と竹下。挑発する東田に対する半沢の主人公らしからぬセリフ。
「東田さんよ。この世の中が法律だけで出来上がってると思ったらそれは大間違いだぜ。もっと大事なもんがあるだろ。いいか。こんなところでいい気になってるのもいまのうちだ。あんたがいう法律にしたがって、いまに泣きべそかかせてやるからな。楽しみに待ってろよ」
(池井戸潤『オレたちバブル入行組』(銀行回路)P278より)
同期の近藤が出向させられることになって。
ピラミッド型構造をなすための当然の結果として勝者があり敗者があるのはわかる。だが、その敗因が、無能な上司の差配にあり、ほおかむりした組織の無責任にあるなら、これはひとりの人生に対する冒瀆といっていいのではないか。こんな組織のために、オレたちは働いているわけではない。こんな組織にしたかったわけでもない。
(池井戸潤『オレたちバブル入行組』(銀行回路)P287より)
浅野支店長の不正の証拠を掴んだ半沢に、渡真利がどうするのかと尋ねたのに対する半沢のセリフ。
「オレは基本的に性善説だ。相手が善意であり、好意を見せるのであれば、誠心誠意それにこたえる。だが、やられたらやり返す。泣き寝入りはしない。十倍返しだ。そして――潰す。二度とはい上がれないように。浅野にそれを思い知らせてやるだけのことさ」
(池井戸潤『オレたちバブル入行組』(銀行回路)P290より)
追い詰められて土下座をしながら謝罪をする浅野支店長に対する半沢。
「お前など銀行員の屑だ。破滅させてやる」
(池井戸潤『オレたちバブル入行組』(水族館日和)P327より)
東田の隠し資産10億円を差し押さえた半沢。キャバクラで飲んでいる東田にその事実を伝え、店内にいた国税局の職員に対するセリフ。
「国税さんよ。銀行に来て偉そうな態度取る暇があったら、もうちょっとマシな調査したらどうだ。この間抜け。帰って、統括官に報告しとけ。東田の隠し資産は全額差し押さえたとな。分け前欲しかったら、頭のひとつでも下げに来いって。わかったか!」
(池井戸潤『オレたちバブル入行組』(水族館日和)P337より)
半沢とともに東田に通告をおこなったあとの竹下のセリフ。
「たまには正義も勝つ!」
(池井戸潤『オレたちバブル入行組』(水族館日和)P339より)
第二営業部の次長に栄転した半沢に渡真利が、「夢と思っていたものが、いつのまにか惨めな現実にすり替わる。そういう気持ち、お前にはわからんだろう」というのに対する半沢。
「そんなことないさ。夢を見続けるってのは、実は途轍もなく難しいことなんだよ。その難しさを知っている者だけが、夢を見続けることができる。そういうことなんじゃないのか」
(池井戸潤『オレたちバブル入行組』(嘘と新型ネジ)P355より)
半沢直樹第2巻『オレたち花のバブル組』
本来受ける部署ではない営業二課の半沢が、副部長の三枝から業績の悪化している伊勢島ホテルの担当に指名されたときのやりとり。
「難しい仕事だということはわかっている」
三枝はふいに表情を引き締めて半沢を見た。
「だから君にやってもらいたい。君以外に適任はいない」
部下に仕事を押しけるときの常套句である。
(池井戸潤『オレたち花のバブル組』(銀行入れ子構造)P15より)
タミヤ電機に出向した半沢の同期の近藤が、田宮社長に中期計画を立てましょうと説得を試みるが、計画は経営者の頭に入っていればいいという田宮の言葉を受けて。
計画は計画――そう思っているうちは、会社経営はうまくいかない。計画通り、あるいはそれ以上実績を上げようという意思があってこそ、方向性が生まれるのではないか。
(池井戸潤『オレたち花のバブル組』(精神のコールタールな部分)P67より)
伊勢島ホテルの事業計画を「ありもしない事業計画」と批判する金融庁の黒崎に対する半沢のセリフ。
「ありもしないとおっしゃる根拠はなんですか。一方的な批判なら誰でもできる。理由なき批判は中傷に近い」
(池井戸潤『オレたち花のバブル組』(金融庁の嫌な奴)P150より)
タミヤ電機の野田が、過去に田宮社長に進言しても無駄だった、言われたことだけをやるように言われるだけだとこぼすのに対する近藤。
「人生は変えられる」
野田の平板な眼の中で、小さな驚きが鋭く弾けた。近藤は続けた。
「だがそれには勇気がいる。いまのあんたはいじけたサラリーマン根性丸出しの、見苦しいオヤジだ。ノーに比べたら、イエスは何倍も簡単なんだ。だけどな、オレたちサラリーマンがイエスとしかいえなくなっちまったとき、仕事は無味乾燥なものになっちまうんだよ」
(池井戸潤『オレたち花のバブル組』(カレンダーと柱の釘)P217より)
半沢の伊勢島ホテル再建への行動を、銀行内の別派閥が批判をしたり怪しい動きをしており、それを心配する渡真利に対して。
「外野、それに中二階と、うるさい奴は大勢いる。だが、奴らがいる場所は所詮、客席だ。観客のヤジにいちいち反応してられるか」
(池井戸潤『オレたち花のバブル組』(モアイの見た花)P220より)
調査の一環で、半沢の自宅を捜査した金融庁の島田が、あいさつもなしに帰ろうとするのに対して、「非常識なんじゃないですか」と怒る半沢の妻・花のセリフ。
「私の夫は銀行員ですから立場上何もいえないのかも知れません。だけど、私は一般市民ですから、いわせてもらうわよ。あなたのような人はね、役人として通用しても世の中では通用しませんからね!役人が威張る社会は滅びるのよ。なんとかいってごらんなさい」
(池井戸潤『オレたち花のバブル組』(モアイの見た花)P246より)
伊勢島ホテルの再建計画について、裏で半沢とは別に再建計画を進めようとしていた福山と対決する中での一幕。
「もう一度いう。見たことも会ったこともない者を社長に据えるような再建計画なんかゴミだ。なんであんたがそんなバカでもやらないようなミスをしたか、教えてやろうか。それはな、客を見ていないからだ」
福山は、はっとして顔を上げた。
「あんたはいつも客に背を向けて組織のお偉いさんばかり見てる。そして、それに取り入り、気に入られることばかり考えてる。そんな人間が立てた再建計画など無意味なんだよ」
(池井戸潤『オレたち花のバブル組』(モアイの見た花)P261より)
隠ぺいを追求する半沢と近藤に、大和田常務にとりなすから勘弁してほしいという貝瀬。貝瀬が半沢に、こんなことをしてもメリットがないだろうというのに対して。
「オレは、基本は性善説だ。だが、やられたら、倍返し――」
貝瀬の顔を冷ややかに見つめながら、半沢はいった。
「それがオレのやり方だ。オレがもし隠蔽の事実を暴かなかったら、お前らは最後まで、真実を語ろうとはしなかったはずだ。他人に責任を押しつけて、自分たちだけいい目をすればそれでいい。そう思っていただろう。違うか」
「ただで済むと思うなよ。お前らみたいな腐った奴ら、オレがまとめて面倒みてやる」
(池井戸潤『オレたち花のバブル組』(検査官と秘密の部屋)P294より)
人事をちらつかされて、半沢を裏切ってしまったことを謝罪する近藤に対する半沢のセリフ。
「裏切られたとは思わない」
半沢は、きっぱりといった。
「お前は銀行員として当然の選択をしたにすぎない。人間ってのは生きていかなきゃいけない。だが、そのためには金も夢も必要だ。それを手に入れようとするのは当然のことだと思う。報告書なんかわざわざお前が出すことはない。そんなことをしなくても、オレはなんとかする。だから、心配するな。――おめでとう」
(池井戸潤『オレたち花のバブル組』(ディープスロートの憂鬱)P326より)
伊勢島ホテルの再建計画について、取締役会で報告を行う際の半沢。
目の前の人事一つで全てが決まるわけでは決してなく、人生というものは結局のところ自分で切り拓くものである。
肝心なことは、その時々に自分が全力を尽くし、納得できるように振るまうことだ。半沢にとって、大和田や岸川らの不正は、平たくいえば売られたケンカだ。
やられたら倍にしてやり返す。その信条にしたがって頭取宛てに上奏した報告書は、まさに半沢の信念に基づくものだった。結果を恐れて何もしないという選択肢は、半沢の中には存在しない。
(池井戸潤『オレたち花のバブル組』(ディープスロートの憂鬱)P344より)
大和田たちの不正を見事に暴き、伊勢島ホテルの再建の目途も立てることができた半沢だったが、その行動が反発を受け出向が命じられたあとのこと。
一人になって、もう一度自分の人生を考えるときがあるとすれば、それは今だと半沢は思った。
人生は一度しかない。
たとえどんな理由で組織に振り回されようと、人生は一度しかない。
ふて腐れているだけ、時間の無駄だ。前を見よう。歩き出せ。
どこかに解決策はあるはずだ。
それを信じて進め。それが、人生だ。
(池井戸潤『オレたち花のバブル組』(ディープスロートの憂鬱)P361より)
半沢直樹第3巻『ロスジェネの逆襲』
電脳雑技団が東京セントラル証券に依頼してきた買収のアドバイザー契約を、親会社である銀行が横取りしたことに対して、憤る部下の森山と半沢のやりとり。
「お前のいいたいことはわかる」
半沢はいった。
「本当に、部長にわかるんですか」
森山は泣き笑いの表情を浮かべた。「銀行にいいようにやられて、文句のひとつもいえない。このままじゃオレたちバカみたいじゃないですか」
「いや、この借りは必ず返す」
半沢はいった。「――やられたら、倍返しだ」
(池井戸潤『ロスジェネの逆襲』(椅子取りゲーム)P50より)
買収を受けそうになっている東京スパイラルの社長瀬名と、フォックスの社長郷田との会談の際の郷田のセリフ。
「我々経営者は自分の生き方を見失ったらおしまいだ。どこかに解決策があると信じる勇気が必要なんだと思う」
(池井戸潤『ロスジェネの逆襲』(舞台裏の道化師たち)P148より)
銀行に買収のアドバイザー契約の情報をリークして、東京セントラル証券を裏切り、銀行への栄転が決まった諸田に対して、半沢たちが詰め寄る場面。
「どういうつもりかわかりませんが、妙ないいがかりを付けるのは止めてもらえませんか」
諸田は、自分を見つめている部下たちを見回して続けた。「いいか、みんな。世の中ってのはな、結果が全てなんだ。君たちは、銀行に負けた。なぜ負けたのか、そんなことをいまさらほじくり返したところで、なにも得るものはない。もっと謙虚になったらどうだ」
「生憎、我々は結果が全てだとは思っていないんでな」
半沢はいった。「君がやったことは、絶対に許せないし、必ず借りは返させてもらう」
(池井戸潤『ロスジェネの逆襲』(舞台裏の道化師たち)P169より)
森山と世代や組織の話をしたときの半沢のセリフ。
「組織と戦うということは要するに目に見える人間と戦うということなんだよ。それならオレにもできる。間違っていると思うことはとことん間違っているといってきたし、何度も議論で相手を打ち負かしてきた。どんな世代でも、会社という組織にあぐらを掻いている奴は敵だ。内向きの発想で人事にうつつを抜かし、往々にして本来の目的を見失う。そういう奴らが会社を腐らせる」
(池井戸潤『ロスジェネの逆襲』(舞台裏の道化師たち)P172より)
組織の論理に不満をこぼす森山に対する半沢のセリフ。
「だけど、それと戦わなきゃならないときもある。長いものに巻かれてばかりじゃつまらんだろ。組織の論理、大いに結構じゃないか。プレッシャーのない仕事なんかない。仕事に限らず、なんでもそうだ。嵐もあれば日照りもある。それを乗り越える力があってこそ、仕事は成立する。世の中の矛盾や理不尽と戦え、森山。オレもそうしてきた」
(池井戸潤『ロスジェネの逆襲』(コンゲーム)P230より)
東京中央銀行の三笠副頭取や伊佐山に、真っ向から勝負を挑む半沢に親会社に逆らって大丈夫なのか、半沢が銀行に戻れなくなるのではと心配する森山。
それに対して、銀行に戻った方がいいなんてのは錯覚だと伝える半沢。
「サラリーマンは――いや、サラリーマンだけじゃなくて全ての働く人は、自分を必要とされる場所にいて、そこで活躍するのが一番幸せなんだ。会社の大小なんて関係がない。知名度も。オレたちが追求すべきは看板じゃなくて、中身だ」
(池井戸潤『ロスジェネの逆襲』(電脳人間の憂鬱)P250より)
半沢たちに情報を流していた三木から、アドバイザーの件で、半沢がこれ以上余計なことをすると人事部付になるといううわさがあると聞かされたあと、あまりに理不尽だと怒る森山への半沢のセリフ。
「そんなことは関係ない。いまオレたちがやるべきことは、東京中央銀行がいくら資金を積み上げようと、人事権を振りかざそうと、買収を阻止することじゃないのか。人事が怖くてサラリーマンが務まるか」
(池井戸潤『ロスジェネの逆襲』(ガチンコ対決)P319より)
買収阻止に成功した瀬名と森山。お互いに礼を言い合うふたり。その中での瀬名のセリフ。
「いつもフェアなわけじゃないかも知れない。そこにフェアを求めるのは間違ってるかも知れない。だけど、たまには努力が報われる。だから、あきらめちゃいけないんだ」
(池井戸潤『ロスジェネの逆襲』(ロスジェネの逆襲)P386より)
東京中央銀行相手に勝利した半沢たち。しかし、その代償として半沢が出向することになるとのうわさを聞いた森山が、不満を口にするのに対して半沢が諭す一幕。
「嘆くのは簡単だ」
半沢はいった。「世の中を儚み、文句をいったり腐してみたりする――。でもそんなことは誰にだってできる。お前は知らないかも知れないが、いつの世にも、世の中に文句ばっかりいってる奴は大勢いるんだ。だけど、果たしてそれになんの意味がある。たとえばお前たちが虐げられた世代なら、どうすればそういう世代が二度と出てこないようになるのか、その答えを探すべきなんじゃないか」
(池井戸潤『ロスジェネの逆襲』(ロスジェネの逆襲)P392より)
森山に半沢の考える枠組みとは何かと尋ねられた半沢が自身の信念を話すシーン。
「簡単なことさ。正しいことを正しいといえること。世の中の常識と組織の常識を一致させること。ただ、それだけのことだ。ひたむきで誠実に働いた者がきちんと評価される。そんな当たり前のことさえ、いまの組織はできていない。だからダメなんだ」
「仕事は客のためにするもんだ。ひいては世の中のためにする。その大原則を忘れたとき、人は自分のためだけに仕事をするようになる。自分のためにした仕事は内向きで、卑屈で、身勝手な都合で醜く歪んでいく。そういう連中が増えれば当然組織も腐っていく。組織が腐れば、世の中も腐る。わかるか?」
「戦え、森山」
半沢はいった。「そしてオレも戦う。誰かが、そうやって戦っている以上、世の中は捨てたもんじゃない。そう信じることが大切なんじゃないだろうか」
(池井戸潤『ロスジェネの逆襲』(ロスジェネの逆襲)P394より)
今後の人事について、中野渡頭取が三笠副頭取や伊佐山に告げた際のセリフ。
「どんな場所であっても、また大銀行の看板を失っても輝く人材こそ本物だ。真に優秀な人材とはそういうものなんじゃないか」
(池井戸潤『ロスジェネの逆襲』(ロスジェネの逆襲)P403より)
半沢直樹第4巻『銀翼のイカロス』
弁護士の乃原が幼少期の体験から銀行に対して敵愾心を抱いていることに対して、渡真利と半沢の会話。
「しかしだな、子供の頃の恨みをずっと腹にため込んで、いまだ敵愾心を燃やし続けているというのはどうかと思うぜ。なんか、みみっちくないか」
「加害者は忘れても、被害者は忘れないもんなんだよ」
(池井戸潤『銀翼のイカロス』(女帝の流儀)P112より)
半沢の追及に動揺する曽根崎に対して、対応策を助言した後の紀本常務。
銀行という組織を生き抜くのに最も必要なのは、学業で得た知識でもなければ学歴でもない。
知恵だ。
知恵の有る者は生き残り、無い者は去っていく。
部下の背中を見送りながら、紀本が再確認したのは、この自明の理に他ならなかった。それが銀行であり、ひいては社会なのだと――。
(池井戸潤『銀翼のイカロス』(金融庁の嫌われ者)P157より)
金融庁のヒアリングのあと、紀本常務たちが半沢の態度が悪かったと責任を取らせようと動いていることに対する内藤の発言。
「降りかかる火の粉は振り払わねばならん。もちろん――自分の力でな」
(池井戸潤『銀翼のイカロス』(金融庁の嫌われ者)P189より)
書類を改ざんしていた曽根崎が、帝国航空の方で書類の内容を間違えたと口裏合わせをさせようとしたことに対する半沢のセリフ。
「オレは、基本は性善説だ」
半沢はいった。「だが、悪意のある奴は徹底的にぶっ潰す」
「お前のような奴が、銀行を――この組織を腐らせるんだ。よく覚えておけ!」
(池井戸潤『銀翼のイカロス』(金融庁の嫌われ者)P198より)
銀行の問題融資や隠蔽と戦い続けてきた検査部の富岡のセリフ。
「だけどな、隠し通せばそれでいいってもんでもないんだよ。隠蔽は隠ぺいを生む。隠蔽はあくまで結果であって、原因は組織の体質にある。銀行の信用ってのは、それを乗り越えたところになくちゃだめなんだ」
(池井戸潤『銀翼のイカロス』(検査部と不可解な融資)P280より)
進政党やタスクフォースがやりたい放題好き勝手にふるまうことを渡真利がこのままでいいのかというのに対する半沢の答え。
「まさか」
半沢は、静かに怒りを噛み締めた。「たとえ相手が政治家だろうと、関係ない。この際、きっちり片を付けてやる。――やられたら、倍返しだ」
(池井戸潤『銀翼のイカロス』(隠蔽ゲーム)P343より)
富岡と中野渡頭取が居酒屋で話すシーン。
「ただ、欲にも、身の丈ってものがある。身の丈に合わない欲を掻くから、面倒なことになる。人もそうだし、実は会社だってそうだと思いますね。できもしないことをやろうとするから無理がある。結局、そんな会社は誰も幸せにしない。社業もうまくいかないし、社員だってストレスで参っちまう。全ての会社には、その会社に合った身の丈の欲ってのがあるんですよ」
(池井戸潤『銀翼のイカロス』(信用の砦)P371より)
頭取を辞任すると告げる中野渡と動揺する半沢。その半沢に中野渡が想いを語る。
「物事の是非は、決断したときに決まるものではない」
中野渡はいった。「評価が定まるのは、常に後になってからだ。もしかしたら、間違っているかも知れない。だからこそ、いま自分が正しいと信じる選択をしなければならないと私は思う。決して後悔しないために」
(池井戸潤『銀翼のイカロス』(信用の砦)P418より)
「倍返しだ」は何回登場?
半沢直樹の決めセリフといえば、
「やられたらやり返す」
「倍返しだ」
ですね。
ドラマでは堺雅人演じる半沢直樹のこのセリフがとても印象的でした。
ドラマを観ると、何度も出てくるように感じるこのセリフ。
でも、原作では意外と登場が少ないのです。
第1巻~第4巻までで登場はたったの4回!
各巻で1回ずつのセリフでした。
上記した名言の中にも記載しているので、見逃した人は戻って確認してみましょう。
おわりに
ここまで、池井戸潤さんの〈半沢直樹〉シリーズの名言を紹介してきました。
ドラマにしかない名言もたくさん存在するのですが、ここでは原作から抜粋させていただきました。
原作にはこれだけの名言、考えさせられる言葉が散りばめられています。
ただの言葉としてではなく、半沢を始めとする登場人物たちの生きざまと合わさって、本の中ではさらに輝きを放ちます。
銀行内だけの話ではなく、それは私たちの日常にも、職場にもあてはまる言葉であり、人生や生き方に影響を与えるものでもあります。
まだ原作を読んでいない人には、ぜひ一度手に取っていただきたいなと一読書家として願うところです。