ミステリーの定番であるクローズドサークル!
雪の山荘とか、孤島の別荘なんかが浮かんできますよね。
綾辻行人さんの『十角館の殺人』やアガサ・クリスティーの『そして誰もいなくなった』がまさにそれです。
いろんなクローズドサークルが小説となっていくと、その中で、
「こんなクローズドサークルもあるのか!」
と驚かされることもあります。
ここでは私が読んだ小説でおもしろかった特殊なクローズドサークル物を紹介します。
Contents
『屍人荘の殺人』今村昌弘
紅大学ミステリ愛好会会長であり『名探偵』の明智恭介とその助手、葉村譲は、同じ大学に通う探偵少女、剣崎比留子とともに曰くつきの映画研究部の夏合宿に参加することに。合宿初日の夜、彼らは想像だにしなかった事態に遭遇し、宿泊先の紫湛荘に立て籠りを余儀なくされる。全員が死ぬか生きるかの極限状況のもと、映研の一人が密室で惨殺死体となって発見されるが、それは連続殺人の幕開けに過ぎなかった。――たった一時間半で世界は一変した。究極の絶望の淵で、探偵たちは生き残り謎を解き明かせるのか?! 予測不可能な奇想と破格の謎解きが見事に融合する、第27回鮎川哲也賞受賞作。
内容紹介(「BOOK」データベースより)
特殊設定のクローズド・サークルと言えばこれが真っ先に浮かびます。
スタートは昔ながらのミステリー小説風な描き方がされてるんですよ。
映画研究会の夏合宿で、なぜか探偵を含めたメンバーでペンションに行くなんていかにも王道です。
でも違うのはクローズド・サークルの作り方。
こんなクローズド・サークルがあるのかと読んだときは衝撃でした。
たしかにこれなら誰も抜け出せない。
続編の『魔眼の匣の殺人』や『兇人邸の殺人』も特殊設定のクローズド・サークルなので、続けて読んでみるといいかなって思います。
『星くずの殺人』桃野雑派
完全民間宇宙旅行のモニターツアーで、念願の宇宙ホテル『星くず』についた途端見つかった死体。それも無重力空間で首吊り状態だった。添乗員の土師(はせ)穂稀(ほまれ)は、会社の指示に従いツアーの続行を決めるがーー。
一癖も二癖もある乗客、失われる通信設備、逃げ出すホテルスタッフ。さらには第二の殺人まで起きてしまう。帰還を試みようとすると、地上からあるメッセージが届き、それすら困難に。『星くず』は宇宙に漂う巨大密室と化したのだった。
内容紹介(「BOOK」データベースより)
この作品の舞台は宇宙!
そりゃ宇宙って外部に逃げ出すことのできない究極の空間ですよね。
そんな場所で起きる殺人事件。
それも無重力であるはずの場所で首を吊っているという。
なぜ宇宙で首つり?
どうしてわざわざ宇宙で殺人を犯したのか。
いくつもの謎が浮かんできます。
設定を聞いただけでもおもしろそうでしたが、実際に期待以上のできで大満足でした。
『方舟』夕木春央
極限状況での謎解きを楽しんだ読者に驚きの〈真相〉が襲いかかる。
友人と従兄と山奥の地下建築を訪れた柊一は、偶然出会った家族と地下建築「方舟」で夜を過ごすことになった。翌日の明け方、地震が発生し、扉が岩でふさがれ、水が流入しはじめた。
いずれ「方舟」は水没する。そんな矢先に殺人が起こった。だれか一人を犠牲にすれば脱出できる。タイムリミットまでおよそ1週間。
生贄には、その犯人がなるべきだ。–犯人以外の全員が、そう思った。
内容紹介(「BOOK」データベースより)
「方舟」というと最後の救いのように感じますがここに救いはありません。
閉じ込められた地下建築。
そこでなぜか発生する殺人事件。
たしかに誰か一人を犠牲にすれば全員が助かる!なんて言われたら犯人に犠牲になってほしいと思いますよね。
でも、もし犯人を見つけたとしても、その人が素直に犠牲になってくれるのか。
さまざまな思惑が交錯しながらの犯人捜しと脱出方法の模索。
タイムリミットもあるのでとてもどきどきします。
『インシテミル』米澤穂信
「ある人文科学的実験の被験者」になるだけで時給十一万二千円がもらえるという破格の仕事に応募した十二人の男女。とある施設に閉じ込められた彼らは、実験の内容を知り驚愕する。それはより多くの報酬を巡って参加者同士が殺し合う犯人当てゲームだったー。
内容紹介(「BOOK」データベースより)
私の大好きな作品の一つである『インシテミル』。
結構前の小説ですが今読み返してもおもしろい!
クローズド・サークルにはまったきっかけはこの作品でした。
上記のようにありえないような時給の求人広告が出て、応募した男女がとある施設に集められます。
この作品の中では他のミステリー作品のタイトルがばんばん出てくるのでそれも好きだったんですよね。
『インシテミル』をきっかけに読んだ小説もかなり多いです。
『ある閉ざされた雪の山荘で』東野圭吾
1度限りの大トリック!
たった1度の大トリック!劇中の殺人は真実か?
俳優志願の男女7人、殺人劇の恐怖の結末。
早春の乗鞍高原のペンションに集まったのは、オーディションに合格した男女7名。これから舞台稽古が始まる。豪雪に襲われ孤立した山荘での殺人劇だ。だが、 1人また1人と現実に仲間が消えていくにつれ、彼らの間に疑惑が生まれた。はたしてこれは本当に芝居なのか?驚愕の終幕が読者を待っている!
(講談社HPより)
最後は東野圭吾さんの『ある閉ざされた雪の山荘で』です。
「思いっきり雪の山荘じゃん!」
と思った人。
そうじゃないんです。
これは小説の中の劇のタイトルで、この劇のオーディションを行うために山荘に男女7人が集まります。
オーディションでは、本当に雪の山荘にいるように振る舞わねばならなくて、外には出られない、外部と連絡も取れない、そういう状況を自分達で演じるわけです。
自分達で作り上げた自発的なクローズド・サークルですね。
これが出版されたのが1996年っていうんで、かなり前なのにこういう発想が出るのがさすがです。
おわりに
クローズド・サークルもどんどんと新しい形のが出てきています。
どうしたらこんな発想になるんだろうというのばかりで本当におもしろい。
もちろん、昔ながらのものも負けずとおもしろいのですが、両方読むことでさらに充実した読書生活が送れるなって思います。