斜線堂有紀

アイドル×恋愛は難しい?『星が人を愛すことなかれ』斜線堂有紀

アイドルというと、恋愛禁止みたいなイメージが昔からつきまとうもの。

実際にファンからすると、推しに特定の恋人がいたら気持ちが萎えてしまうのもわかる気がする。

だからたとえ恋愛をしていたとしても表立ってはできないし、逆にまったく異性との交流を避けるという人もいるんでしょうね。

今回読んだのは、斜線堂有紀さんの『星が人を愛すことなかれ』です!

Contents

『星が人を愛すことなかれ』のあらすじ

解散寸前だった地下アイドル「東京グレーテル」を、ひとりのカリスマ―赤羽瑠璃―が躍進させた。
人気グループとなり輝きだした「東グレ」。しかし光の中のアイドルたちも、ステージを降りれば人生が待っている。
推される側の”恋”と”生”の物語。

「見ててね。私が最高の人生、使い切るところ――」

『ミニカーを捨てよ、春を呪え』
冬美は結婚を意識している恋人・渓介がいる。けれど、恋人は赤羽瑠璃というアイドルを推しており、全てにおいて彼女を優先する。推しと恋人、本当に愛されているのはどっち?

『星が人を愛すことなかれ』
「東京グレーテル」の元メンバー・雪里は、Vtuberとして活動している。生活時間のすべてを配信のために捧げる彼女は、いまや100万人に愛される人気Vのひとりだ。その代わり、雪里は次第に恋人との時間すらとれなくなっていく。

『枯れ木の花は燃えるか』
「東京グレーテル」のメンバー・希美は地下メンズアイドル・ルイと付き合っている。ある日、ファンとのベッド写真が流出してルイのSNSが炎上。希美は復讐の為にルイと関係を持ったファンと会い、炎上を加速させてルイを叩き潰そうとするが──。

『星の一生』
「東京グレーテル」のカリスマ・赤羽瑠璃。かつて自分のファンである渓介に恋をし、ストーキングのあげく部屋まで侵入した女。それでも渓介を諦められない瑠璃は、彼のSNSアカウントを監視し続けてしまう。そしてある日瑠璃は、渓介が恋人と結婚式を挙げることを知る――。

(集英社HPより)

元々は地下アイドルグループだった東京グレーテル。

それが赤羽瑠璃というカリスマが誕生したことによって人気が出て飛躍していきます。

その中で生まれたり消えたりした恋愛。

『愛じゃないならこれは何』では、その赤羽瑠璃が人気のない時代から飛躍して行くまでの過程も描かれているので、まずは『愛じゃないならこれは何』を読むことを薦めます。

『ミニカーを捨てよ、春を呪え』のめるすけと赤羽瑠璃の関係はそちらを読んでからの方がぐっと楽しめます。

『星が人を愛すことなかれ』の感想

『星が人を愛すことなかれ』は短編すべてにアイドルだったり、有名Vtuberだったりと人気商売の人達が出てきます。

ファンがいる以上、どうしたって異性関係にはとても気を使うもの。

そうなるとふつうの恋愛って難しいのかなって気は確かにします。

読んでいて、隠さなきゃいけないことが多いし、SNSの投稿一つでも自由につぶやけない。

なんとも息苦しさがありますね。

でも、そんな不自由があっても、舞台に立ち、闘っていくことを選んでいるんだろうなって。

表題作でもある『星が人を愛すことなかれ』。

元東京グレーテルの雪里が、東グレ時代はあまり花開かず、もろもろあって、Vtuber・羊星めいめいとして活動することになります。

最初はうまくいかなかったけれど、恋人の助けもあって少しずつ人気が上昇。

そのうちに雪里にとって羊星めいめいこそが自分のすべてをかけるほどの存在になっていきます。

少しでも時間があれば配信のための準備をし、動画の編集をし、睡眠時間も削り、恋人との時間さえもなくなっていく。

恋人とけんかをしてしまっても、次の瞬間には羊星めいめいとして動き続けようとする。

なにを捨ててでも、そこにすべてをかけたいという想い。

自分の存在価値とか、かつて手にしてたいと思っていたものとか、いろんな感情があっての行動だけど、そこまでしないと輝き続けることってできないのかもしれない。

でも、ほとんどの人ってそこまで人生をかけて何かをすることってないと思うんです。

夢とかやりたいことがあっても、それ以外のことだって大事にするし。

家族や友人、恋人との時間だってそうですよね。

やりたいことがあってもついスマホを見て息抜きだってしちゃいますし。

それらをすべて捨ててまで何かにかけるって、憧れる一方で苦しそう。

どれが正しいではないけれど、それって幸せなのかなとも思ってしまう。

自分にはできない、と思う。

だからこそそうした人って輝いて見えるのだと思います。