『探偵ガリレオ』 東野圭吾
第二章・転写る(うつる)
第三章・壊死る(くさる)
第四章・爆ぜる(はぜる)
第五章・離脱る(ぬける)
東野圭吾さんの数理小説。
『探偵ガリレオシリーズ』の第一作目になる短編小説です。
2007年にはフジテレビからドラマ化されていましたね。
福山雅治さんが主人公の湯川学を、柴咲コウさんが新人刑事の内海薫でコンビを組んで、難事件を解決にみちびいていくという内容です。
「実におもしろい」
というフレーズが当時流行っていたのを覚えています。
ドラマは、2007年に第1シーズン、2013年に第2シーズンと2回放送されており、ガリレオシリーズの長編、『容疑者Xの献身』と『真夏の方程式』の二作品が映画として公開されました。
一般的な数理小説と違う点は、犯人が早々に予想がつくことです。
でも、どうやって犯行をしたのかがわからない。
ドラマでも、犯行シーンではなく、トリックを暴くことに時間をかけており、見ていた私も、犯人がどうこうというよりも、
「いったいどうやったの?」
という部分に集中をしていました。
犯人自体も、次回予告に出てくる人とか、ドラマ内で明らかにこいつでしょという人が犯人だったので、作成側も推理に目がいくことを意図していたんでしょうね。
原作となる『探偵ガリレオ』は、1998年に出版されており、刑事・草薙俊平が、警察では原因がわからなかった難事件を、大学時代の友人である、物理学者湯川学に依頼をするというものです。
ドラマと違って、相棒は男性の草薙刑事でした。
私はドラマを見てから原作だったので、最初違和感がありましたが、読み進めていくとこちらのほうがしっくりときます。
本書は、4つの短編から構成されていますが、どの事件も超常現象のようなことが起きています。
それをすべて科学的に解明していく過程に、ほかの推理小説とは少し違った楽しさがあります。
また、犯人が検討つかず、どきどきはらはらするような展開は今のところ出てきておらず、
「なるほどー。そうなるのか。」
という感嘆のほうが大きいです。
長編のほうが読みごたえはありますが、すきま時間に読むにはちょうどいいかもしれません。
今回の気になったページ
第四章の燃ぜるより
犯人が事件を起こした動機の一つとして、大学の履修の申し込みをするのに、提出期限が過ぎてしまったため、受講できなくなってしまったことが挙げられていた。
犯人は、講義を担当していた教授に、受けさせてほしいと頼みに行くが、断られてしまい、それを逆恨みしていました。
草薙刑事は、犯人が捕まったあと、その教授に、なぜ受講させてあげなかったのかと尋ねたシーンです。
「先生はなぜ藤川の受講をお認めにならなかったのですか」
すると、老教授は、彼の顔を見返し、にっこりと笑った。
「あなた、何かスポーツはしますか」
「柔道を……」
「それならわかるでしょう」
と木島はいった。
「いかなる理由があるにせよ、エントリーを忘れるような選手は試合に出るべきではない。またそんな選手が勝てるはずもない。
学問もやはり戦いなんです。誰にも甘えてはいけない」
戦いですね。何事も。
何に挑戦するにしても、
その戦場に立つ意思。
それに向けたきちんとした準備。
決められた手順を守ること。
ほかにも必要なことはありますが、すべて自身が責任を持って行うべきことです。
誰にも甘えてはいけないとは厳しいけれどまっとうな言葉です。