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子どもの金銭教育の必読書!『おカネの教室』高井浩章「フツーが最高!」

お金にまつわる書籍というのは、世の中に数えきれないほどあふれかえっています。

私自身もそうした書籍をかなりの数を読んできて勉強させてもらいました。

でも、子どもができていざ、子どもにお金の教育をしようと思うとなかなかしっかりと来る本がなかった。

そんなときに出会ったのがこの本です。

今回紹介するのは、高井浩章さんの『おカネの教室 僕らがおかしなクラブで学んだ秘密』です!

著者の高井浩章さん自身が3人の娘を持つパパさんです。

ご自身が娘に金銭教育をどのようにしたらいいのかと考えた結果、「自分で物語を書いて読ませる」とい結論にいたったそうです。

その発想がまずすごい!それを実行して書いてしまうのがまたすごい!

そして読み物としてもとてもおもしろい!という言うことなしですね。

『おカネの教室』は、「そろばん勘定クラブ」に入った中学生の男女が、クラブ活動を通してお金や仕事、経済について学んでいくという物語です。

物語になっているから、読むことが苦ではなく、わかりやすくてとてもいいです。

子どもの金銭教育に悩んだら、まずこの本を一冊読ませるのでもいいし、内容を各ご家庭なりにかみ砕いて話してみるのもいいかな、そう思わせるおすすめの一冊です。

なかなか内容の濃いものとなっているので、ここでは、『おカネの教室』の内容で特に考えさせられた部分や感想を紹介していきます。

著者の高井浩章さんはなぜ自分で書いた?

高井浩章さんは、株式や債券などのマーケットや国際ニュースを専門とする新聞記者です。

つまり本を書くことを本業にしている方ではないんですね。

実際にこうして本になったものの、元々は家庭内読み物として書いたもので、出版の予定はなかったとのこと。

それが完結したときに、「せっかくだから友達にも読んでもらおう」とファイルをばらまいたらこれが予想以上に好評。

試しにKindleで個人出版したところ、1万ダウンロード超とこれまた予想外のヒット。

それが出版社の目に留まり出版にいたったというもののようです。

 

じゃあなんで高井さんは自分でこんなに素晴らしい物語を作成することにしたのか。

それは日本の金銭教育が貧弱すぎるからです。

金銭教育、お金の話を子どもが物心ついたらしていく必要があることって誰でもわかることだとは思います。

ただ、学校では大したことは教えていないし、授業を受ける子どもたちだって、テストがあれば勉強しても、すぐに忘れてしまう。

それならばそれぞれの家庭でお金について教えていかなければなりません。

高井さんもまた、本屋巡りをして、良いテキストを探したそうです。

しかし、勉強をしようと意欲のあるい人に適したものはあっても、そうでない人にしっくりくるものはない。

なぜなら、既存のテキストは、勉強にはなっても読み物としてはおもしろくなかった。

ならば自分で作るしかないという結論にいたったようです。

確かにそのとおりなんですよね。

自分が読むのにいい本はたくさんあるんですけど、子どもに読ませたい本、読んで学んでくれそうな本って意外と少ないもの。

だからこそこの『おカネの教室』の存在はありがたいなと感じます。

「あなたのお値段、おいくらですか?」

『おカネの教室』は、冒頭でも書いたように、中学生の男女が入った「そろばん勘定クラブ」を舞台とした物語です。

4月から始まったクラブ活動で、最初に二人は尋ねられます。

「あなたのお値段、おいくらですか?」

意外と難しい質問ですよね。

生徒の二人(サッチョウさんとビャッコさん)の答えは、

サッチョウさん⇒1億円

ビャッコさん⇒10億円

サッチョウさんは、男性の平均年収が500万円だから、40年働けば2億円。

生活費などを半分くらい抜いたと考えて1億円としました。

生涯賃金から、自分の価値を考えたというわけです。

ビャッコさんの10億円。

こちらは、ビャッコさんの家はお金持ちなので、もし自分が誘拐されたとしたら、祖母が身代金としてそれくらいは払うだろうという視点から。

こちらには遺産とか相続という考え方も含まれています。

さて、それを考慮した上で、自分のお値段っていくらだと思いますか。

自分が考えるとしたら、サッチョウさんと同じように、これから自分が稼ぐであろう金額から導き出すのが無難かなーという気もします。

うちの親からの遺産はなさそうですしね。

それ以外の付加価値として自分にはなにがあるかな。

こうしたところから子どもと話していくのも、金銭教育の導入としては楽しそうです。

お金を手に入れる6つの方法

『おカネの教室』のテーマの一つがお金を手に入れる方法にはどんなものがあるのかです。

一覧にすると、下記のようになっています。

かせぐ:世の中がより豊かになるように富を生み出す

ぬすむ:誰かを犠牲にして儲ける

もらう:「かせぐ」ほど富を生み出さないが「ぬすむ」でもない

かりる:お金や不動産を借りて、期間に応じて金利をつけて返す

ふやす:「かりる」行為によって生まれる利息など

つくる:株式の発行など、信用に値段をつけて相手や市場に認めさせること。信用がなければ成り立たない。

ただ、これは単に言葉だけを見ても理解しづらい部分があるんですよね。

サッチョウさんとビャッコさんの生徒と、指導役のカイシュウ先生。

彼らが繰り広げる物語を読むことでそれぞれの意味と現実の仕事が結びついていきます。

例えば、「かせぐ」が働いている人で、「ぬすむ」は犯罪というのがぱっと思いつきます。

でも、厳密には、仕事か犯罪かだけではこの二つはわけることができません。

その二つの線引きをどうするのかということで、サッチョウさんたちは、その仕事が人の役に立つのかどうかという視点に立ってみたり、同じ仕事でもその仕事をどう行っているのかという点から考えたりします。

お金には信用が必要

お金を手に入れるための6つの方法の6番目である「つくる」。

これには信用が欠かせません。

私達が使っているお金だって、これはお金だとみんなが認めているから価値があります。

それはお金はお金として信頼されているということです。

日本銀行が発行した1万円札だから、1万円の価値がある。

これが子ども銀行の1万円札だったらどこに持っていっても買い物はできないですよね。

信用が価値を生み、信用があるからお金として成り立っているということです。

国債も国ごとにランク付けされています。

残念なことにここ数十年で日本の国債のランクはどんどん下がっていっていますね。

それだけ日本の国債の信用度が落ちてきているということです。

起業の発行する株もそうです。

信用があり、これから期待ができる企業の株は価値があがっていきますが、信用をなくした企業の株価はあっという間に暴落してしまいます。

お金とそれに対する信用は切り離せないものになります。

事業を営むことは大変である

ビャッコさんは、自分の家族が営んでいる事業が嫌でした。

高利貸しに、パチンコ屋に地主としての不動産業。

物語を最後まで読んでいくと実はその仕事をしている父親も同じ思いを子どものころに持っていたといいます。

でも、だからといって、

「やりたくないんで今日からこの仕事は辞めます!」

なんていうわけにはいかないのだと説明をしてくれます。

自分が単独で企業に勤める分には、自分と家族のことだけ考えれば転職しようが辞めようがあとはなんとかなるものです。

でも、自分が事業を営んでいるとなると話は別です。

自分の決断が、そこで働く人たちの人生にも影響を与えるからです。

働く人たちがいて、その人たちにもまた家族があります。

自分のところで働く人だけではありませんね。

取引先の会社があれば、急にいなくなると相手も困ります。

企業である以上、金融機関との関りもあります。

また、自分たちがしていた仕事がぽっかり空いてしまったら、それをほかの企業や人で穴埋めできているのかも心配ですね。

このように事業を営むことは大変だということを教えてくれます。

働くのなら勤め先がとても重要!

『おカネの教室』では、お金だけでなく、仕事のあり方にもかなり触れています。

その中の一つ、どんな企業に勤めるのかが重要であると教えてくれます。

「サラリーマンは勤め先選びがすべてと言ってもいい。世界一の投資家と言われるパフェットというおじさんがこんなことを言っています。『やる価値のないことなら、うまくやる価値もない』。ダメな会社の中でいくらがんばっても、世の中の役に立たないってわけです」

(高井浩章『おカネの教室』より)

これはなかなか厳しい言葉ではあります。

社会人になるときって、就職できたしそこそこにやろうって思う人は少ないと思います。

だから一生懸命頑張るし、自分の存在を認めてもらおうと努力します。

でも、そもそもの勤め先がダメだったら……。

『おカネの教室』の中では、カイシュウ先生が自身の銀行員時代を振り返り、自分たちの利益ばかりを追い求めていたことを恥じる場面があります。

一方でとても一般のためになっている銀行員もたくさんいることにも触れています。

同じ仕事であっても、その仕事への向き合い方がまったく違うっていうことがあるんですね。

だからこそ、就職するときはそこを見極めないと自分も家族も困ったことになります。

100%その会社を知ることはできないですが、今は情報がいたるところにあふれている時代です。

企業選びが人生にとても大きな意味を持つということをまず知ることが子どもたちには大切なのだと思います。

「貸すも親切、貸さぬも親切」

「貸すも親切、貸さぬも親切」とはよく聞く言葉ですね。

『おカネの教室』では、金銭の貸し借りについても、かなりの枠を取って教えてくれます。

それだけ高井さんもそのことを伝えたかったのかなと感じました。

その中で重要だったところとしては、

〇両者が冷静に条件を決められる状態にあって初めて、金貸しは仕事となること

〇お金を借りる人には、冷静な判断力や知識を持っていないことも多いこと

〇返済能力のない人に貸し付けて儲けるのはよいことではないこと

実際にお金を借りるときって、冷静でないことは多いと思います。

可能なら誰だってお金は借りたくないですもんね。

でもやむにやまれず借りにいく。

その時点で、それだけ自分や周囲に問題がある状態ということです。

いまお金を借りた場合、将来的にどうなるのか、そういった計算はなかなかできていないこともあると思います。

また、返済能力がない人に貸す……これもやはり世の中からなくならないものですよね。

多重債務者なんて言葉もわりと一般的です。

テレビやラジオのコマーシャルでも、過払い金についてたくさん流れているのをみると、それだけ借金をする人が多いってこともわかります。

 

では、友人同士のお金の貸し借りってどうなんでしょう。

個人的にはあまり好きではないです。

親からも小さいときからお金の貸し借りはしないようにとうるさく言われて育ちました。

ただ、なぜ自分のお金なのにいけないのかってことは教わってこなかったんですよね。

今思うと、ちゃんと返すことができる人で、お互いにきちんと冷静に取り決めをすることができるのならなしではないかなとは思います。

とはいえ、友人同士でそこまできちんとした話し合いもできないだろうし、お金のトラブルで関係が悪くなることってあまりにも多いからやはりないに越したことはないのかなとは思いますが。

自分のこととしてとらえる必要がある

お金のことって、日本ではなんとなく話すのがはばかられるところがあります。

地元の友人や大学の友人と集まっても、なんとなく給料の話って大っぴらにはやりづらい。

職場でも、投資や副業なんて話をしようものなら、「真面目に仕事をするのが一番だ」という雰囲気を出す人っていると思います。

「お金の話はするんじゃない!」って怒る人もいますよね。

でもお金の話は堂々とできなければ困るもの。

その知識がないだけで不幸になってしまう人がいることもまた事実です。

お金というとなんとなく嫌だなと思う気持ちもあれば、投資=ギャンブルみたいなイメージもいまだにありますよね。

だからそういう話題がどんどん出しづらくなっていき、気づけばお金と距離を置いている自分がいたりします。

そう、自分のお金や自身を取り巻く経済のことなのに、気づけば当事者であることから遠ざかっているんです。

毎月真面目に働いて、そこそこに使っていれば、生きていくには困らないだろうなんて先輩もいます。

その先輩の将来って個人的にはかなり心配ですが、本人がそういう話は嫌いなのでどうしようもないのですが。

『おカネの教室』では、中学生を登場人物としていることもあり、身近なところのお金や、家族の仕事といった共感を得やすい内容から入ってくれています。

だから、お金に対してもっと現実的なものとして感じやすいのかなと思いました。

天職とはなにか

『おカネの教室』の中では、”天職”という言葉にも少し触れられています。

天職のことは英語で「calling」というと言います。

「その仕事があなたを呼んでいるってわけです。かっこいい表現ですよね。でも、それだけじゃない、厳しさも含んだ言葉だとワタクシは思います」

(高井浩章『おカネの教室』より)

天職に出会える人ってとても幸せですよね。

自分にあったその仕事で食べていけるわけですから。

でも天職を見つけることってなかなか大変な道でもあります。

「彼ほど才能がないことより、彼より物理学を愛せない自分に気づいたのがショックでした。彼のように、何が何でもこれをやりたい、やらずにはいられない、というほどの衝動がわいてこない。これは天職じゃない、と思い知らされた」

(高井浩章『おカネの教室』より)

こんな気持ちになるものが果たして自分にあったかなとも感じます。

多くの人が自分で天職と感じられる仕事以外の仕事をしているのではないかなと思います。

それはそれでいいんです。

私も天職かといわれると疑問はありますが、仕事自体は楽しいですし、家族のためにもなっているのでいいと思っています。

以前読んだ小説家の米澤穂信さんの〈べリーフ〉シリーズも天職というものを考えるきっかけになりました。

『王とサーカス』や『真実の10メートル手前』といった記者の大刀洗万智を主人公としたシリーズですね。

この「べリーフ」という言葉がドイツ語で天職っていうんですね。

天職という視点でこちらも読んでみるとおもしろいと思います。

おわりに

良い本を読むと、ちょっと感想を書こうと思っていたのに気づけばだいぶ長くなってしまいます。

今回も6000文字を超えてしまっていました。

1500文字くらいで短く端的に書きたいのになかなか難しいです。

でもそれくらい『おカネの教室』は学ぶことも伝えたくなることも多かった証だと思います。

金銭教育って聞くと、子どもにはまだ早いとか、親がいうことなのかとか、一歩引いてしまう人っていまだに一定数いると思います。

でも、お金なんて避けては通れないものだし、知らないと困るのって子どもなんですよね。

だからこそまず大人たちがお金と向き合う正しい知識をつけてあげることからなのだろうと感じます。

少なくとも私は自分の娘をそういった部分で苦労をさせたくはないと思います。

金銭教育としてのとっかかりが見えない人は、この本をそのままプレゼントするのでも、一緒に読んでいくところからでもいいのでは?

子どもにだけでなく大人にとっても勉強になる一冊でした。