過去の小説には、これは読んでおきたいと思う作品がいくつもあります。
その中でもミステリー小説といえば、誰もが頭に思い浮かべることができるでしょう。
今回紹介するのは、コナン・ドイルの
『シャーロックホームズの冒険』です。
私も以前から当然タイトルや作者のことは知っていましたがなかなか手に取る機会がなく、ようやく読了することができました。
タイトルを見て、これがシャーロックホームズシリーズの一作目と思っていたのですが、こちらは三作目だったようです。
一作目は『緋色の研究』、二作目は『四つの署名』になります。
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多くのミステリー小説に影響を与えた作品の一つ
アーサー・コナン・ドイルの『シャーロックホームズの冒険』。
実際に読んでみて作品としてももちろん面白いのですが、このシリーズは、それ以降のたくさんの小説に影響を与えているという点で特に優れているのだと感じます。
現代の日本のミステリー小説を読んでいても、アガサ・クリスティー、ジョン・ディクスン・カー、エドガー・アラン・ポーといった有名な海外のミステリー作家の名前やミステリー小説のタイトルがよく出てきます。
その中でも、シャーロックホームズシリーズは頻繁に目にするように感じます。
私がシャーロックホームズシリーズを読もうと思ったのも、『インシテミル』(米澤穂信・著)の中に、本作にある『まだらの紐』という名称が登場したことによります。
現代のミステリー小説を読むうえでは、こうした海外ミステリーに目を通しておくとより理解が深まるのではないかと思います。
『シャーロックホームズの冒険』のあらすじ
『シャーロックホームズの冒険』は、シャーロックホームズとワトソン博士が出会った奇怪な事件の短編集となります。
〇ボヘミアの醜聞
〇赤毛組合
〇花婿の正体
〇ボスコム谷の惨劇
〇五つのオレンジの種
〇くちびるのねじれた男
〇青い柘榴石
〇まだらの紐
〇技師の親指
〇独身の貴族
〇緑柱石の宝冠
〇橅の木屋敷の怪
の12編となります。
語り手はシャーロックホームズの親友であるワトソン博士。
シャーロックホームズのところに舞い込んできた警察では扱えない不可思議な事件の真相を追います。
意外と少ない殺人事件!
読んでいて不思議に思ったのは、
「ミステリー小説だけどあまり殺人事件はない」
ということです。
『シャーロックホームズの冒険』の中では、『ボスコム谷の惨劇』や『五つのオレンジの種』の二編だけが殺人その他の犯罪事件として捜査に乗り出します。
しかし、読んでいくとそれ以外は、いわゆる日常の謎から出発していることがわかります。
本作でも、シャーロックホームズのセリフとして、
「物事に一風変わった効果とか、異常な組み合わせなどをもとめるならば、実生活そのものにこそ、もとめるべきである」(『シャーロックホームズの冒険』アーサー・コナン・ドイル)
と出てきます。
日常の不可思議な現象から事件につながっていくからより親近感をもって読むことができるのかもしれません。
恋愛をめぐる騒動や、お金がからんだ犯罪といった誰にでもイメージがわきやすい事件が多いようにも感じます。
意外と完璧ではないシャーロックホームズ
シャーロックホームズと聞くと、本書を読むまでは、
〇とても頭が切れる
〇パイプ片手に悠然としている
〇どんな問題でも解決
〇向かうところ敵なし
といった勝手な印象を持っていました。
しかし、実際に読んでみると意外とホームズも完璧な男ではないことがわかります。
本書では、謎は解けても、犯人を捕まえる前に事前に察知されて逃げられてしまうこともあります。
また、ワトソン博士はホームズの生活のことを、
「古い書物の山に埋もれ、かと思えば、週ごとにコカインと客気とのあいだを往復する――つまり、麻薬に耽溺するのと、持ち前の沸々たる意欲に駆りたてられるのと、その両方をくりかえしているのだった」(『シャーロックホームズの冒険』(ボヘミアの醜聞)アーサー・コナン・ドイル)
と評しています。
また、冷静な探偵なのかと思いきや、興味深い事件に出会うと、子どものような好奇心で行動をします。
ときには物乞い、ときには配達業者、ときには阿片中毒者に姿を変えながら事件の真相を追い求め、文章からもホームズの楽しそうな様子がうかがい知れます。
そうした姿がまたシャーロックホームズの魅力の一つなのだと感じます。
おわりに
こうした海外の作家による作品はなにから読んでいいか迷うことも多いですが、『シャーロックホームズの冒険』はおすすめです。
一遍一遍はそこまで長くなく、内容も難しくないためストレスなく読めるかなと思います。
最初にも書きましたが、現代ミステリーを読む上でも、
「あの作品に出ていたのはこのことか」
と気づくことも多く、小説同士がつながって感じられそこも楽しめます。
興味があれば一度手に取ってみてください。