小説を書く

小説家志望者ってどれくらい?毎年のデビュー人数とその確率は?

小説家・作家志望者ってどれくらいいるものなのでしょうか。

小説家になりたい!という気持ちを抱いている人が数多くいるのは、新人賞に応募する人の数からもわかることです。

昔と違って今は、ネットでも自作の小説を投稿できるようになりました。

明らかに、

「自分の作品を見てほしい」

「小説を書いてみたい」

と思う人が増えているようにも思います。

ここでは、小説家を志す人がどれくらいいるのか。

実際にデビューできる割合はどんなものなのかを検証していきたいと思います。

Contents

そもそも小説家志望ってどんな人を指すのか

まずは定義づけが必要ですね。

そもそも小説家って、何を持って小説家と名乗るのか。

私達が一般的に思い浮かべるのは、書店やAmazonなんかで本が出ている人ですよね。

いわゆる商業作家というやつ、プロの作家です。

『すべてがFになる』など、ベストセラー作家の一人である森博嗣さんは、著作の中で下記のように言っています。

小説家は、本人が名乗れば小説家なのである。名刺も作れる。その肩書きには「プロの」などという説明を加えている人はいない。それは「一流」とつける人がいないのと同じ理由、つまりナンセンスだからだ。

(森博嗣『作家の収支』より)

要は、自分が小説家だといえば小説家だということです。

出版できた商業作家でも、新人賞に応募する段階のアマチュアでも、投稿サイトで日々研鑽している人でも、書きたいと思っている段階の人でも。

ということで、ここでは、小説家になりたい、小説を書いてみたいという気持ちがある人全部ひっくるめて、小説家志望として考えていきます。

小説家志望者ってどれくらいいる?

とある別のサイトでは、潜在的に小説家を志す人も含めると、500万人だと書いていました。

まあわからなくもない。

ただ、それだとそのほとんどは、空想段階で、まだ何一つ書いてもいないし、漠然とした思いを抱いているところなのかなって気もします。

新人賞ってどれくらいあるか知っていますか。

小さいものまで含めれば楽に100を超えているんですよ。

受賞したらほぼデビューができるような有名な新人賞だけを見ても20は超えています。

集英社や講談社などの出版社や文芸誌が主催のものは人気が高いですね。

〇小説すばる新人賞

〇すばる文学賞

〇次世代作家文芸賞

〇ポプラ社小説新人賞

〇日本ファンタジーノベル大賞

〇小説現代長編新人賞

〇小説野生時代新人賞

〇松本清張賞

〇横溝正史賞

〇このミステリーがすごい大賞

上記したのはいわゆる小説についての賞で、ライトノベル作家を目指す人用の新人賞もありますし、投稿サイトが主催する文芸賞もいくつも出てきています。

こうした新人賞・文芸賞への応募数も波はあれど、1000人を超えるものもざらです。

『小説すばる新人賞』だと、1600人という年もありました。

特に人気の高いものだと、ライトノベルの電撃小説大賞ですね。

こちらは5000人を超える応募があります。

私が子どもの頃は、スレイヤーズとか魔術師オーフェンとか、角川が強かったのですが、今はライトノベルといえば電撃というイメージがありますからね。

こうした新人賞に応募する人は、かなり意欲の高い人です。

中には年に2本、3本と長編小説を書いて応募する強者もいます。

応募者数だけでざっと見ていっても、一般文芸でも2万は超えていますし、ライトノベルだと、5万以上になります。

それだけでも7万人は日々書いていることになるのだと思います。

さらに、小説投稿サイトも、『小説家になろう』、『カクヨム』、『ノベルアップ』など、かなりその数を増やしてきています。

『小説家になろう』なら、登録者だけで150万人を超えており、実際に書いている人は、その半分以下ですが、潜在的に書いてみたいと思っている人はかなり多いと考えられます。

上記したように、なってみたい、書きたいと思っている人を小説家志望と考えれば、500万人はいかなくても、100万人程度は楽にいるのではないかと推察できます。

デビューしている人は100人~200人?

それでは、実際にどれだけの人数が作家としてデビューしているのでしょうか。

これもはっきりしたことってわからないんですよね。

ただ、いろんなところで、現役の作家さんが実情を語ってくれています。

『作家超サバイバル術!』という書籍の中では、

昨今、各出版社の主催する文芸新人賞は増加し続け、中央のよく知られるタイトルだけでも二〇を超えるようになった。言い換えれば毎年二〇人以上の新人作家が誕生している計算になる。

(『作家超サバイバル術!』「作家と新人賞」より)

この本は、2022年に出版されましたが、中山七里さん、知念実希人さん、葉真中顕さんという人気作家三人が、テーマごとに思うところを書いたものになります。

少なくとも20人以上が新人としてデビューしている、と。

ただ、ここで入れているのは、”中央のよく知られるタイトル”だけであって、まだ名前が知られていない新人賞も結構あります。

ライトノベルや投稿サイトからのデビューも頭数に入ってはいないと思います。

また、作家の八木圭一さんは、マイナビ転職のインタビューで次のように話しています。

「受賞が決まった時、周りからは作家としての独立を勧められました。ただ、新人がすぐに食べていけるほど、この世界は甘くはありません。年間に200人がデビューし、5年後も生き残るのは5%以下と言われています。特に自分の場合、初挑戦で運が先行したこともあり、一本立ちするタイミングは今ではないと思ったんです。そこで、働きながら、より執筆に時間を充てられるよう、デビュー直前に転職活動を始めました」

(マイナビ転職ホームページより)

八木圭一さんは、2013年に『このミステリーがすごい!』大賞を『一千兆円の身代金』で受賞してデビューした兼業作家です。

このミス大賞って賞金1200万円なんですよね。

ミステリーを書く人ならまず応募しようとするすごい賞です。

兼業とは、会社員をしながら、小説家をしているということですね。

八木圭一さんは、年間200人がデビューすると話しています。

ただ、ここにはなんの根拠も示していないのでどこまでが実際に近いのかはわからないですね。

上記二つを合わせて考えれば、だいたい100人~200人といったところではないでしょうか。

デビューする確率ってどんなもの?

これも考え方によって、かなり幅がある話ですね。

単純な確率で言うなら、あなたが応募した新人賞。

そこの応募数から、受賞してデビューできる人数を割れば、それがデビューできる確率になります。

一般文芸からいくつか参考に記していきます。

2021年の応募数で見てみますね。

小説すばる新人賞1345編・受賞1名=0.074%
次世代作家文芸賞921編・受賞1名=0.108%
ポプラ社小説新人賞1251編・受賞1名=0.079%
小説現代長編新人賞966編・受賞1名、奨励賞1名=0.299%
小説野生時代新人賞667編・受賞1名=0.1499%
松本清張賞748編・受賞1名=0.1336%

さて、こうやってみると、0.1%前後が多い感じがしますね。

小説現代長編新人賞は、割と大賞と奨励賞と二作品がデビューになることが多いですね。

『このミステリーがすごい!』大賞も、大賞以外に隠し玉というのがあります。

そうした、一度に複数をデビューさせる新人賞だとより確率は上がるでしょう。

見てわかるように、応募者数は新人賞によってかなりばらつきがあります。

今回は有名どころをあげたのですが、応募者数が200とか300くらいの賞もあります。

そうした新人賞であれば、さらに受賞できる確率自体は上がると思います。

ただ、これはあくまで、単純計算したら……なんですね。

実際には、数年間出し続けている人なんてざらですし、応募歴10年を超える人だっている世界です。

この数字だけでは測れないのが、実際のところです。

じゃあなんのためにこんなことを書いたのかっていわれると、気休めです。

数値、低いと思いましたか。

いえいえ、私はかなり小説家になれる確率って高いものだと思いました。

新人賞って就活と同じです。

自分という人間には、こんな小説が書けます!

だから御社でデビューさせてください!っていうわけです。

大手の終活だったら一次選考から行くと何万って人を押しのけて採用をつかみ取るわけですもんね。

小説家なら、ライバルは多くて1000人を超えるくらい。

希望が持てると思いませんか。

本当に大変なのはデビューしてから

さて、ここまで小説家志望者の人数や、実際にデビューする人の数、確率といった話をしてきました。

こうしてみてみると、確かに狭き門だけど、絶対無理って雰囲気ではないと思います。

ご自身も小説家で小説講座で何人もの小説家志望をデビューさせてきた鈴木輝一郎さんは、YouTubeの中でよく話しています。

新人賞を取るまでは簡単。

その先、生き残るのが大変なのだ、と。

作家の「5年生存率」という言葉を知っていますか。

なんでも、デビューして5年生き残ることができる人は5%以下なんだとか。

また別記事でそのあたりに言及しますが、厳しい世界なのだと実感します。

鈴木輝一郎さんは、5年どころか、2作目を出せずに消えていく作家がなんと多いことかと嘆いています。

まずは、デビュー、そして生き残っていくこと。

そのためには、いい作品を書いて書いて書いていきましょう!