道尾秀介

詐欺と復讐と絆の物語。道尾秀介『カラスの親指』のあらすじと感想。

また一冊、ほかの人におすすめしたい小説が増えました!

この本ならきっと、大抵の人はおもしろいと感じるでしょう。

今回読んだのは、道尾秀介さんの『カラスの親指』です。

YouTubeのほんタメで、ヨビノリたくみさんが、人におすすめしたい道尾秀介作品だと紹介していたので手に取りました。

その言葉に偽りなしで、私も人におすすめしたい!

『カラスの親指』は、第140回直木賞の候補にもなった作品で、高い評価を受けています。

ここでは、『カラスの親指』のあらすじや感想を紹介していきます。

Contents

『カラスの親指』のあらすじ

タケこと武沢竹夫はやさぐれたベテランの詐欺師。

以前はサラリーマンをしていたが、肝臓を悪くした妻が、タケと娘を残して病死。

娘を育てることだけを生きがいに、必死に生きていたが、ある日、多額の借金を負うことになってしまう。

そこからは、消費者金融、闇金と手を出し、職を失ってしまう。

なし崩しに借金取りにさせられ、ヒグチというヤクザに追い込みを命じられる。

とある母娘に対して、金を払うように追い込みをしたところ、その母親が自殺。

良心の呵責から経理資料を警察に持ち込んだ結果、ヒグチたちは逮捕されたが、タケは自宅を放火され、幼い娘を失う。

なにもかも失ったタケは自殺を図ろうとするも死にきれず、復讐を恐れ逃げ回る生活を余儀なくされていた。

そんなとき、テツという男と出会う。

タケとテツはコンビを組んで、詐欺の仕事を重ねる。

不思議なことにテツと組み始めてからは成功ばかりであった。

ある日、二人はスリをして生計を立てていたまひろを助ける。

それがきっかけで、まひろ、まひろの姉のやひろ、その恋人で図体はでかいが気が小さい貫太郎も、タケとテツの家へと転がり込んでくることになった。

貧乏人同士助け合おうというタケの提案で、5人の共同生活が始まった。

カラスとは?

『カラスの親指』ってタイトルを見たとき、

「カラスって親指ってあるんだっけ?」

とふつうに考えていました。

ここでいうカラスは、小説の中でも出てきますが、玄人の詐欺師のことを指しています。

カラスの色が黒いことから玄人って、駄洒落ですね。

『カラスの親指』の主人公であるタケがそもそも詐欺師。

途中からはテツと二人で詐欺を働き、最終的には、因縁のあるヒグチを詐欺にかけて、自分たちがこれまで受けた被害の仕返しをしようとなります。

しかし、タイトルって大事ですね。

ぱっと見て興味をそそられるし、最後まで読んだら、

「ああ、こういう意味だったのか」

と感慨深くなります。

小説は中身は当然のこと、どんなタイトルかでぐっと作品の質が上がるなって思いました。

5人に生まれる絆が好き

元々、他人同士の5人(まひろとやしろは姉妹ですが)。

最初はお互いに警戒をしていたり、自分の過去も内面も隠したりしながらの生活を送ります。

本当であれば、縁をすることがなかった5人。

それが少しずつ相手を知り、思いやるようになり、気づけば本当の家族のような暖かさが生まれていく。

タケたちの中に生まれたものって、どういう言葉で言い表せばしっくりくるんですかね。

絆ってのが一つ近い言葉なのかもしれませんが。

実際、みんなダメな生活を送っているのに、そんな風に見えなくなっていきます。

タケやテツは詐欺師だし、まひるは窃盗で生計を立て、やひろや貫太郎はなにもしていない。

でも、この5人のような関係っていいなと感じさせられます。

おわりに

道尾秀介作品は、まだ3作品しか読んでいませんが、『カラスの親指』は単純におもしろかった。

初めて、道尾秀介さんの小説を読むのであれば、ここから手を出すことをおすすめします。

小説によっては癖の強いものもありそうですので。

ここから入ると、ほかの作品に感じる印象もまた少し違ってくるような気もします。

さて、『カラスの親指』の続編にあたる『カエルの小指』も出ていることを知りました。

こちらも読まないといけないですね。

読みたい作品が多すぎて困ってしまいます。