出だしから、かなり主人公の女子高生が、
「この子はちょっとやばそう」
と思いつつ、どうにも引き込まれるものがある!
今回読んだのは、黒木渚さんの『予測不能の1秒先も濁流みたいに愛してる』です!
シンガーソングライターとして活躍されている黒木渚さん。
この小説以外にも、音楽が題材となっている小説を出しています。
同タイトルの曲も出しており、曲を聞きながら小説を読むとまたおもしろいかもしれません。
高校生の溢れんばかりの思いがほとばしっている小説です。
ここでは、『予測不能の1秒先も濁流みたいに愛してる』のあらすじや感想を紹介していきます。
Contents
『予測不能の1秒先も濁流みたいに愛してる』のあらすじ
女子高生の「シッポ」。
長い黒髪を後ろで束ねてポニーテールにしているからそう呼ばれている。
高校二年生になってから軽音部に入部する。
自己紹介では、好きな音楽はパンクで、好きなバンドはクラッシュ、セックスピストルズ、ダムド、ニルヴァーナが好きだと話す。
その視線の先にいるのは、中学が一緒だった森園太陽。
そう、シッポは、片思いの相手である太陽を追って軽音部への入部したのであった。
パンクが好きどころか、音楽に興味はない。
ギターだって弾いたことはない。
でも、すべては太陽に近づくため。
好きな人のためだったら、自分のなんだって変えてみせる!
そんな理由で音楽を始めたシッポだったが、次第にシッポの中で、音楽が大きなものになっていく。
シッポの第一印象はかなりやばい
いや、本当に読んですぐに、
「この子はやばいわ」
と主人公のシッポに感じる人は多いでしょう。
小説の冒頭で何をしているかっていうと、夜中に通っていた中学校に忍び込んでいるんです。
何のために?
決まっています!タイムカプセルを掘り起こすためです!
シッポは、大好きな太陽のタイムカプセルを見たいあまり、こんなことをするんですね。
未来の自分に向けた太陽の手紙を勝手に読み、元に戻すかと思いきや、同封されていたギターのピックと一緒に家に持ち帰ってしまう。
太陽のことをしっかりと調べ上げ、でも、高校に入っても進展がない。
たまらず、軽音部に入部をして近づいていく、という話です。
もうね、読んでいて頭の中は太陽だらけなわけです。
よく言えば純粋だけど、ここまでいくとちょっとホラー。
想いのあまり、次はなにをしでかすのだろうかと冷や冷やしながら読みました。
何にすがって生きていくのか
『予測不能の1秒先も濁流みたいに愛してる』では、どうにも病んでる人がいっぱい出てきます。
シッポもある意味病的なくらいに太陽が大好き。
それなしには生きていけないレベルなわけですが、それとは別に、身近にいたらビビるような登場人物が続々出てきて、「うわーお」となります。
ただ、その人たち一人一人を見ていけば、やっぱりそうなるには理由がある。
きっと必死に生きてきて、それでも、毎日はしんどくて。
徐々に擦り切れていって、そういう生き方に落ち着いていくというところなのかな。
いや、決して落ち着いた生活ではないけれど、そういう風にしか生きられなくなるというか。
小説でよくあるのは、親に問題があって、不遇な幼少期があり、逃げ出せない現実があり。
じゃあどうすればいいのかって、答えはどこにもないんですよね。
シッポも、レジも、カコ様も、太陽も。
みんなこの先、いったい何を思い、何を頼りに生きていくのかな。
おわりに
ふだん、あまり自分が読まなさそうな小説を読んでみました。
そういう小説からも、いろんなものを受け取れるから、たまには違うジャンルを読むのもいいですね。
私の場合、「ほんタメ」やTwitterから影響を受けることが多いんですけど、さすが本好き達の集まり。
まったくはずれがないんですよね。
今回は、現役のシンガーソングライターの方の小説ということもあって、音楽という自分があまり縁のなかった部分が届いてきて、非常におもしろかったです。