この本について、
「日本の政治を揶揄している本 」
ということを聞いたことがありました。
実際に読んでみてびっくりです。
『夢を売る男』のときにも思いましたが、
「百田さん!こんな小説書いて大丈夫!?」
という気持ちが面白いうんぬんよりも先に出てきました。
今回紹介する本は、百田尚樹さんの、
『カエルの楽園』です!
平成28年2月に新潮社から出て、平成29年9月に文庫化されました。
Contents
あらすじ
主人公は、アマガエルのソクラテス。
仲間たちと平和に暮らしていましたが、ある日、アマガエルを食べるダルマガエルが現れます。
ダルマガエルに仲間をたくさん食べられて、草むらに逃げるソクラテスたち。
しかし、草むらにも天敵となるマムシがいて、安全な場所ではありませんでした。
「このままでは死に絶える」
そう思ったソクラテスを中心とした若いアマガエル60匹は、楽園を求めて生まれ育った国を出ていきます。
旅立ってからも過酷な運命がソクラテスたちを待ち受けています。
次第に60匹いた仲間は、20匹になり、7匹になり、ついにはソクラテスとロベルトの2匹だけとなってしまいます。
最後の力を振り絞って登った崖の上に、2匹はカエルの楽園を見つけます。
そこは、ナパージュと呼ばれるツチガエルの国で、アマガエルの2匹にも、みなが親切にしてくれます。
ナパージュは、”三戒”と呼ばれる決まりと、”謝りソング”によって守られた国でした。
ナパージュでは、昼間からカエルたちが葉っぱや草むらの上で寝ています。
水の上に気持ちよさそうに浮かんでいるカエルもいます。
ソクラテスたちの国では考えられないことです。
ソクラテスとロベルトは、そんな平和な様子を見て、
「とうとう楽園にたどりついたようだな」
とつぶやきます。
ですが、ナタージュの南にある沼に住むウシガエルが崖の近くに現れるようになり……。
徐々に平和な国、ナタージュの実態が明らかになっていきます。
といった内容になります。
この本が示すもの(ネタばれあり)
ここからは、『カエルの楽園』がどういった意味を持った本であるかを書こうと思います。
読めばおそらく、ほとんどの人が、
「この国のことを言っているんだな」
「あの事件のことを指しているんだろう」
と思う浮かぶはずです。
一応、ネタバレにもなるので、まだ読んでいなくて、細かいところは知りたくない人は、この先は読まないことをすすめます。
本書では、カエルの寓話のようにも思えますが、読んでいると、
「これは日本のことなんだな」
とすぐに気づきます。
本書の解説を書いたジャーナリストの櫻井よしこさんは、
楽園のナパージュは日本国であり、その住人のツチガエルは私たち日本人です(ナパージュの綴りは「Napaj」、ひっくり返すと「Japan」になります)。狂言回しである二匹のアマガエルは難民です。物語はアマガエルの目を通して語られる、ナパージュとツチガエルたちの運命です。
(百田尚樹『カエルの楽園』解説より)
と解説の中で説明しています。
ナパージュを南の沼から狙っているウシガエルが中国。
ナパージュの僭主として君臨している巨大なワシ、スチームボートはアメリカです。
スチームボートはナパージュをウシガエルやモズといった外敵から守ってくれています。
『カエルの楽園』に出てくる三戒。
・カエルを信じろ
・カエルと争うな
・争うための力を持つな
これは、日本国憲法の前文と憲法9条をあらわしています。
ナパージュのツチガエルたちは、この三戒があるからナパージュは平和なんだ、三戒の守られているのだと盲目的に信じています。
物語の中で重要な役割を演じているデイブレイク。
ナパージュのカエルたちから絶大な信頼を受けている彼は朝日新聞です。
多くのカエルたちが、
「デイブレイクさんが言っているならそんなんだろう」
と感じています。
デイブレイクに嫌われていて、カエルたちからも変わり者扱いされているハンドレッド。
彼は著者である百田尚樹さんです。
私がわかる範囲で、何がどの国や人物にあてはまるのかを書いていきます。
ナパージュ→日本
ツチガエル→日本人
ウシガエル→中国人
エンエン→朝鮮半島
スチームボート→アメリカ
デイブレイク→朝日新聞
ハンドレッド→百田尚樹
ハンニバルたち三兄弟→自衛隊
フラワーズ→SEARDs
プロメテウス→自民党か安倍総理
ガルディアン→民主党
また、ウシガエルがナパージュに接近してくることは、尖閣諸島問題を表しているのだと思います。
スチームボートから、ナパージュを守るために、一緒に戦ってほしいと言われたのは、安保法案のことでしょうか。
このほかにも、有名人を指すような名前が出てくるので、
「これってあの人かな」
と想像しながら読むのも面白いと思います。
これらを頭に入れながら本書を読むと、カエルたちの変わった物語から、現実味を帯びた話へと姿を変えていきます。
『カエルの楽園』を読んで思うこと
『カエルの楽園』を読んで一番感じたこと。
それは、メディアの影響力と日本人の盲目的な部分です。
本書の中では、ウシガエルがナパージュの崖に迫ってくるシーンがあります。
ツチガエルたちは最初は慌てますが、
「三戒があるから大丈夫」
「デイブレイクさんがこう言っているから大丈夫」
とすぐに安心してしまいます。
その後も、ウシガエルの数が増えてきたときも同じ。
ウシガエルが崖の上に登ってきたときも同じ。
ウシガエルが草むらまで侵入してきたときも同じ。
最初こそ、おびえたり、大変だと騒いだりするものの、デイブレイクの話を聞くにつれて、
「その通りだ!」
と賛同してしまいます。
正しいと信じている相手の発言を、自分自身でよく考えずにうのみにしてしまっています。
私たちにも、やはりそういう部分はあるなと感じます。
新聞で言っていること、ニュースで言っていることをそのまま信じてしまうことがありますよね。
ワイドショーで、コメンテーターがいうことを、
「そういうもんなんだな」
と受け止めがちです。
でも、実際すべてが正しいわけではないですよね。
間違っているときもあるし、一方的な意見であることもある。
得た情報をどう受け止め、考えるか、盲目的に信じるべきではないことを感じます。
終わりに
本書では、これ以外にも考えさせられるテーマがたくさんあります。
憲法改正をどう見るのかということ。
中国を始めとする近隣諸国との関係。
メディアの在り方。
日本人の意識について。
どれも、かなり踏み込んだ内容のため、ここではコメントはしません。
ただ、こうしたことを意識することは必要だと思うので、そういった意味で、多くの人に読んでほしい本ではあります。