小説

原田マハ『本日は、お日柄もよく』のあらすじ感想。結婚式のスピーチを頼まれた読みたい一冊

「結婚式のスピーチを頼まれたらこの本を読もう!」

 

そう友人たちに勧めることができる本だと、読んだときに率直に思いました。

 

スピーチの奥深さ。

言葉というものに秘められた力。

 

そんなことを思わせてくれる小説です。

 

今回紹介する本は、原田マハさんの、

『本日は、お日柄もよく』です!

 

この本は、2010年8月に徳間書店から出版され、2013年6月に文庫化されました。

原田マハさんは、『カフーを待ちわびて』『楽園のカンヴァス』で有名ですね。

 

Contents

『本日は、お日柄もよく』のあらすじ

OLの二ノ宮こと葉は、幼馴染で片思いをしていた今川厚志の結婚式に招待されます。

 

結婚式にはスピーチがつきもの。

物語の始まりは、厚志が仕事でお世話になっている会社の社長のスピーチ。

これがとんでもなく下手で眠たくなります。

〇「えー」が多い

〇同じことを何度も繰り返す

〇結婚式とは関係ない話に脱線する

そんなスピーチにこと葉も眠たくなってしまい、スープ皿に頭から突っ込んでしまいます。

 

片思いの相手の結婚式で、その人がお世話になっている社長のスピーチでやらかしてしまう。

最悪の気分の結婚式でしたが、そのあとこと葉は、涙があふれるほど感動するスピーチに出会います。

 

”言葉のプロフェッショナル”と紹介された久遠久美。

彼女は、企業や議員をクライアントに持つスピーチライターでした。

 

久美のスピーチに感動をしたこと葉は、後日、厚志をとおして久美に会いに行きます。

久美にスピーチのしかたを教えてほしいと。

 

というのも、こと葉は、会社の友人の結婚式のスピーチを頼まれているのでした。

こと葉は、久美からスピーチの極意を教わりながら少しずつスピーチの世界に惹きこまれていきます。

 

そして友人の結婚式のスピーチをきっかけに、会社の広報戦略室に異動をすることに。

更には、厚志が亡き父の跡を継いで、議員として立候補をすることになり、「政権交代」を掲げる野党のスピーチライターに抜擢されることになります!

 

スピーチに込める想い

私自身も、スピーチを頼まれることがあります。

最近では、仕事で講演に回ることも増えてきました。

 

そんなときに、つい考えてしまうのが、

「こう話しておくと無難かな」

といった、とりあえず無事にスピーチを終えることでした。

 

「こういうときは、一般的にこういう話をするものだろう」

と、定型文を探すこともあります。

 

でもそうして出来上がったスピーチって、とてもありきたりなスピーチになるんですね。

私が他の人のスピーチを見て、

「みんな同じことを言っているなぁ」

と思う典型的なスピーチを私自身もやっていたことに気づきました。

 

スピーチには、相手に伝えたい言葉や想いが込められます。

友人の結婚式なら、友人に幸せになってほしいということや、これまで一緒にいてくれたことへの感謝など、人によって様々だと思います。

 

ありきたりな形式ばったスピーチをしてしまうとその気持ちが届かないのだろうなと感じました。

そしてそこに心からの言葉を想いを乗せることが難しくなるように思います。

 

自分にしか紡ぎだせない言葉で、自分にしかできないスピーチを。

そうすることで、自分が伝えたい想いが相手に届くのでしょう。

 

言葉のちから

『本日は、お日柄もよく』では、たくさんのスピーチが出てきます。

結婚式のスピーチに始まり、会社の式典でのあいさつ、国会答弁、街頭演説。

 

本当に一つひとつの言葉を丁寧に積み上げた小説だと思います。

 

その中で、

「言葉とはとてつもない力があるのだな」

ということを再認識させられます。

 

みなさんにもきっと、辛いとき苦しいときに誰かがかけてくれた言葉に救われたという経験があると思います。

私自身も、たくさんの言葉をかけてもらって救われてきた一人です。

 

思い返してみると、相手からしたら何気ない言葉だったのかもしれません。

考えた末での言葉だったのかもしれません。

 

どちらにせよ、そうした言葉で救われる人がいて、それだけの力が言葉にはあります。

 

名言集が好んで読まれたり、ネットに名言のまとめサイトがあるのも、多くの人が言葉を求めているからなのだろうなと思います。

 

もし、みなさんの近くに悩んでいる人がいればなんと声をかけますか。

「自分が何か言っても……」

と思う必要はありません。

なんて言ってあげたらいいかなと考えて思いを込めた言葉なら届くものです。

言葉に秘められた力はとても大きなものがあると確信します。

 

終わりに

『本日は、お日柄もよく』は、小説ではありますが、多くの学びを含んだ良書です。

単純に小説としても楽しめますし、スピーチに困ったときの指南書にもなります。

 

スピーチの仕方についての本というのは、書店に行けばたくさん売られています。

でも、そういう本って少し固いんですよね。

本書は、小説の形をとっているので、読みやすいしイメージがしやすいという点で、そういった本よりも優れているように感じます。

細かい礼儀作法とか、使ってはいけない言葉は、そうした本で見た方がいいですが。

 

私自身、本書を読んでから、あいさつやスピーチの際に、

「もう少しこういうところを意識して話そう」

と考えるようになりました。

 

人生において、人前で話すことは誰にだってやってくることです。

そうしたときのために少し学んでおくことも大切だと思います。