『探偵ガリレオ』から始まる<ガリレオ>シリーズ。
東野圭吾さんを代表する人気のあるシリーズですね。
いつも読むたびに、湯川教授の冷静かつ的確な分析に圧倒されます。
その中でも、湯川教授の人間味がとても出てくる作品。
それが、今回紹介する『真夏の方程式』です!
<ガリレオ>シリーズの第6弾になります。
長編としては、『容疑者Xの献身』、『聖女の救済』に続く3作目ですね。
Contents
『真夏の方程式』のあらすじ
小学5年生の恭平は、両親の仕事の都合で親戚が経営する旅館で夏休みを過ごすこととなる。
旅館は玻璃ヶ浦という海のきれいな場所にあった。
玻璃ヶ浦へ向かう電車の中で恭平は湯川と出会う。
湯川は海底鉱物資源開発の説明会にアドバイザーとして出席するために玻璃ヶ浦へとと向かっていた。
恭平の親戚の旅館に宿泊した湯川を、恭平は『博士』と呼ぶ。
子どもが苦手なはずの湯川もなぜか恭平に対して拒否反応が出ず、理科が嫌いだという恭平に科学の楽しさを教えようと苦慮する。
そんな中、同じ旅館に泊まっていた客が海辺で変死体となって発見される。
地元の警察は事故死として処理しようとするが、死んだ客は元警視庁捜査一課所属の刑事であり、捜査一課ではその死に疑問の声があがる。
捜査を進めるうち、事故ではなく殺害された後に、海岸に遺棄された可能性が高くなってゆく。
捜査への協力を頼まれた湯川は、事件の真相にいち早く気づき、事件の解決ではなく、ある人物の心を守るために行動をする。
映画としての『真夏の方程式』
『真夏の方程式』は、2013年6月29日から上映されました。
<ガリレオ>シリーズとして映画化をされたのは、『容疑者Xの献身』以来の2作目となりました。
湯川学…福山雅治
岸谷美砂…吉高由里子
草薙俊平…北村一輝
柄崎恭平…山崎光
川畑成実…杏
川畑重治…前田吟
川畑節子…風吹ジュン
仙波英俊…白竜
塚原正次…塩見三省
三宅伸子…西田尚美
柄崎敬一…田中哲司
原作を読んだ人はわかるとおり、じゃっかん原作と映画で登場人物が異なります。
そう!内海刑事がいなくなり、代わりに岸谷美砂刑事という人物がいます。
内海刑事役だった柴咲コウさんから、岸谷刑事=吉高由里子さんに湯川教授の相棒が変更されたのです!
なんとなく原作を読んでいると、湯川教授のパートナーは内海刑事になってしまいますが、吉高由里子さんの岸谷刑事も映画で見る分には悪くなかったです。
学ぶことの意味を教えてくれる一冊
『真夏の方程式』の中で湯川は、勉強嫌いで科学なんて何の役に立つのかという恭平少年に様々なことを教えていきます。
最初は、科学者としての意地のようなものもあったのかもしれませんが、恭平に学ぶことの楽しさを教えようとつとめます。
”この世は謎に満ちあふれている。ほんの些細な謎であっても、それを自分の力で解明できた時の歓びは、ほかの何物にもかえがたい”
という考えのもとでしょうか。
それまで勉強は嫌でゲームばかりをしていた恭平も徐々に新しいことを知る楽しさを感じ取ります。
映画ではどんどん表情が明るくなっていくのが印象的でした。
対立するとき一方的になる愚かさ
『真夏の方程式』の中では、寂れてきた街を、海に沈む地下資源の開発で潤そうというグループと、綺麗な海を守ろうというグループの対立が見られます。
湯川は、その開発に使う技術のアドバイザーとして呼ばれるわけですが、あくまでアドバイザーでありどちらよりの人間でもありません。
そんな中、海を守ろうとする川畑成実(映画では杏が演じる)と湯川との会話で、
”世の中に完璧なものなどない。存在しないものを要求するのは難癖以外の何物でもない”
というセリフが出てきます。
これは、開発するのであれば、海を守る側の、海の生物や生態系に影響を与えるなという主張に対してのセリフですね。
開発をするする以上、影響が出ないように最大限努力をしたところで、まったく出さないなんてことは不可能であり、そんなものを要求するのは難癖であると。
また、
”一方を重視するだけで十分だというのは傲慢な態度だ。相手の仕事や考え方をリスペクトしてこそ、両立の道も拓けてくる”
とも言っています。
これらって、あてはまるのは別に小説のこの場面だけのことではありません。
私の職場であってもやはり職員同士の対立や意見の違いというものは出てきます。
そんなときにどうにか妥協点を見つけていかなければならないときにこうした考え方って重要だなと感じました。
おわりに
東野圭吾さんの<ガリレオ>シリーズは、長編がすごくいいですね。
短編のミステリーの部分も楽しいですが、こうした人情味のある話が好きです。
この『真夏の方程式』は、謎も解けてそれで終わりとはいかずにその先があります。
そこで見る湯川の心情に共感する人も多いと思います。