周囲の子どもたちに比べて知能が高い。
これだけ聞くといいことのようですが、同時に生きづらさを感じることもあるようです。
今回読んだのは、藤野恵美さんの『ギフテッド』です!
タイトル通り、ギフテッド→IQが一般の人よりも高い少女が登場します。
主人公はその少女のおばですが。
知能が高いゆえにふつうの学校の中では生きづらい。
でも、日本だとそれに対応することって難しいんですね。
コロナ渦の状況も反映された小説でリアルでおもしろいなって思います。
ここでは、『ギフテッド』のあらすじや感想を紹介していきます。
Contents
『ギフテッド』のあらすじ
国内トップのT大学を卒業した凛子。
一流企業に就職したものの退職、現在はフリーランスの翻訳者として暮らしている。
凛子がクリスマスに愛しい姪っ子たちにプレゼントを買って妹の家へ。
妹は育児に奔走し、子どもたちの発達の具合を気にして大変そうだった。
正月に再び挨拶に行ったときには、長女の莉緒の中学受験のサポートをしてくれないかと頼まれる。
姪の莉緒は、読書と昆虫が大好きで論理的思考が得意。
大人顔負けの話もできる。
だが、融通が利かずコミュニケーションに難がある。
小学校では、上級生に正しいことを教えようとしてトラブルになることもあった。
凛子は、中学受験をしたことがなく、断ろうとも思ったが、必死な様子の妹に了承をする。
そこから凛子と莉緒の中学受験が始まる。
他の子どもとはちょっと変わった莉緒との受験勉強は難題だらけ。
さらに新型コロナウイルスが蔓延し始めていく。
ギフテッドは果たして贈り物か
ギフテッドという言葉も割と世の中に知られるようになったのかなって思います。
生まれもって知能が高い(IQ130以上)人のことを指す言葉ですね。
贈り物のギフトから取った言葉ですが、似た言葉でタレンテッドというものもあります。
タレンテッドは運動とか芸術とかに秀でた能力を持った人。
詳しく知りたい人は、そうした記事を書いている人もいるのでそちらをご参照ください。
個人的には、ギフテッドでもタレンテッドでも、いいなーって単純に思ってしまうのですが、そう簡単なことでもないようです。
『ギフテッド』の中では、莉緒がギフテッドであるがゆえに、同級生とトラブルになったり、塾の先生の言動に納得がいかなかったり。
ふつうだったら、そこそこで済ませておけることも、まっすぐに向き合ってしまうんですね。
もちろん、IQが高いことや才能があることっていいことだとは思います。
でも、それがゆえの生きづらさというものもたしかに存在する。
ギフテッドって、発達障害と勘違いされることもあるんですね。
周囲とのトラブルを起こすこともその原因のようですが。
そこに正しくその子を見て、理解してくれる人がいれば、きっといい方向に成長していけるのでしょう。
学歴とか中学受験とか
学歴って大事なことかと言われると、
「あればあったほうがいいんでない?」
と思います。
とはいえ、絶対必要かといえば、別にそんなことはない。
逆にそれが足かせになることだってある。
『ギフテッド』の凛子は、国内トップクラスのT大を卒業して就職するも、うまくいかずに転職。
T大卒ということで妙な見られ方もする。
妹の夫である岡田さんは、学歴とかどちらが上かなんてことをすごく気にする人で、T大卒の凛子をやたらと意識している。
そういえば、私の友人で東京大学卒の女性がいますが、その人も、出身大学名を言うのが嫌だって話をしていました。
東大卒っていうと、周囲が、「おおー!」みたいな反応をするのが苦手みたいです。
その人ではなく、T大卒の〇〇さんになってしまうんですね。
もちろん、良いこともあるし、どこに就職するかによっては、それがアドバンテージにもなったりする。
さて、『ギフテッド』では、中学受験についてかなり現状とかやり方なんてものも書かれています。
私は田舎出身だったから中学受験なんてありえない感じでした。
親が子どもを中学受験させるのに必死になる気持ちってなかなか理解しがたい。
読んでいると、子どもの意向とかってそこまで重要視されていないような気もしてきます。
でも、それだって、親からしたら我が子のため、子どもに将来少しでもいい人生を送ってもらいたいからなんですよね。
凛子の義兄の岡田さんは、莉緒の進路は、ここの中学じゃなければいけない!なんて考えを持っています。
だから莉緒も本当に行きたいところはなかなか言い出せない。
大人は、子どもの希望や夢を聞いているようで、そのすべてを許容するわけじゃないんですよね。
「結局、大人に都合の良い将来の夢しか応援してもらえないし。まあ、作文なんてそんなものだと、割り切るしかないんだろうけど」
(藤野恵美『ギフテッド』より)
莉緒が、作文を褒められたときのセリフ。
自分が本当にやりたいことを書いたらきっと笑われて終わるだろうから、大人が望んでいるようなもとを書いて、高く評価されたときのエピソードです。
これね、すごく耳が痛かった。
私も子どもがいる身で、子どもに、
「なにがしたい?」
とか、
「どこに行きたい?」
なんて聞くけど、どこか、こういう答えを期待している自分もいるんですね。
もし、子どもがそこから外れた答えを出したとき、果たして心の底から応援することができるのか。
そうでありたいけど、難しい。
なんだって応援してみたいけど、現実を考えちゃいます。
これはずっと考え続けながら子どもと接していくことなんだろうなって思います。
おわりに
藤野恵美さんの本は初めて読みました。
児童文学を中心に書いている人なんですかね。
デビューが第2回ジュニア冒険小説大賞なんですよ。
ほかのタイトルを見てみても、中心としているのは児童文学の世界なんだなと。
でも、『ギフテッド』は、しっかり一般文芸のジャンルでおもしろかった。
これからうちの子どもも絵本を卒業していく時期なので、藤野恵美さんの本も一緒に読んでいけるといいなと思いました。