作家さんのデビュー作というのは、また独特のものを感じるものです。
今回読んだのは、行成薫さんの『名も無き世界のエンドロール』です!
行成薫さんは、『本日のメニューは。』や『明日、世界がこのままだったら』といった作品もありますね。
第25回小説すばる新人賞の受賞作品で、これがデビュー作となります。
2021年には岩田剛典さんと新田真剣佑さん主演で映画化もされています。
ここでは、『名も無き世界のエンドロール』のあらすじや感想を紹介していきます。
Contents
『名も無き世界のエンドロール』のあらすじ
ドッキリをしかけてまわるマコトと、すぐに引っかかってしまうキダ。
親のいない二人は、小学生の頃から一緒に行動をしていた。
あるとき、そんな彼らの学級に転校生がやってくる。
髪を金色に染めて、何かに押しつぶされているかのようにうつむいた少女。
鋭く、細く、脆くなった表情のその少女・ヨッチに、キダとマコトは自分たちと似たものを感じる。
ヨッチもまた二人の同じ境遇であることがわかり、三人はそれからずっと一緒に過ごすようになる。
動きの止まっていたキダとマコトの人生を、ヨッチという存在があざやかにしてくれたのであった。
しかし、そんな三人の幸せな世界はある日、終わりを迎えるのであった。
なぜこうなったと興味をそそられる!
最初に読んだときは、正直なところ、
「なんか無性に読みづらい!」
という感想でした。
なぜかというと、何度も何度も過去にさかのぼっては戻り、時系列はばらばら!
「いまってどの場面のあとだっけ?」
と考えながら読まなければいけませんでした。
私はあまりこうした過去にさかのぼることを多用する作品って好きではないのですが、『名も無き世界のエンドロール』はそれでも読み進めてしまいました。
というのも、キダとマコトが、場面がかわるたびに、
「あれ?なんでキダちゃん今こんな風になってるの?」
と思わされ、一体何が起きたのか読まずにはいられなかったからです。
確かに全部読み終えた後に、この内容を時系列に沿って描いたのでは、まるで違った感じ方になっていただろうから、これがよかったのだろうなと感じます。
読みづらいと思った人も、最後まで読むと、
「なるほど!」
と思わされることでしょう。
伊坂幸太郎さんを思わせる作風
読んでいて割と序盤に感じたことです。
「なんか、伊坂幸太郎さんの小説と雰囲気が似ているなあ」
登場人物の突拍子のない行動だったり、会話の中で考えを表すシーンの言い回しだったり。
きっと、行成薫さんは、伊坂幸太郎さんが好きなんだな、と思いながら読んでみたら、やっぱり好きな小説家の一人のようでした。
とはいえ、じゃあ伊坂幸太郎さんと同じような小説なのかっていうとそういうわけでもない。
影響は受けてそうですけど、独特のリズムはやっぱり違うんですね。
伊坂幸太郎さんが好きな読書家の人だと、行成薫さんも好きになるのではないかなと思いました。
おわりに
これが現実的にあり得る話かといえばあり得ない話。
ぶっ飛んだことがたくさん出てきますしね。
でも、小説だからこそ、こういう楽しめるものを生み出せて素敵だなと感じます。
この『名も無き世界のエンドロール』の続編が2020年にも刊行されています。
『彩無き世界のノスタルジア』です。
五年後の世界を生きるキダを主人公としたもので、とても興味を惹かれますね。
合わせて読んでみようと思います。