恋愛漫画でおすすめは何かと聞かれたら、必ずこの漫画をおすすめします!
男性でもおもしろいと感じること間違いなしの名作です。
今回紹介するのは、羽海野チカさんの『ハチミツとクローバー』です。
全員片思いの逆走ラブストーリーなんて公式サイトには書かれていました。
確かに恋愛漫画としてもとてもおもしろい。
でもただの恋愛で終わらせられないくらい人生とか生き方ってものも考えさせられます。
『ハチミツとクローバー』は、2000年4月から2006年7月まで連載され、全10巻で完結しています。
アニメでは2005年と2006年の2回にわたって放映されており、ほぼ原作通りの展開でした。
yukiさんが歌う主題歌がぴったりすぎて何度も聞いていました。
2006年には櫻井翔さんや蒼井優さん主演で映画化、2008年には生田斗真さんや成海璃子さんによりテレビドラマ化されています。
映画のキャッチコピーは、
「恋をした。それだけのことなのに、世界はまぶしい」
と、純粋な竹本の感情がばっちり表現できていて素敵でしたね。
完結してからずいぶんたつ漫画ですが、いまでもなおその面白さは伝わるおすすめの1冊です。
Contents
『ハチミツとクローバー』の登場人物
竹本 祐太(たけもと ゆうた)
本作の主人公で建築科に所属。
初登場時は大学2年生の19歳で群馬県安中市出身。
家事全般が得意で手先も器用。
ときどきそつなく料理をしたり、片づけをぱっとしたりする姿も見られる。
父親を早くに病気で失ったことから、自分が母親を支えないといけないと思っていたが、母親が再婚することになり、生き方がわからなくなり、何となく美大に入学する。
1巻では、はぐみに一目ぼれをする姿が描かれており、それを見た真山が「人が恋に落ちる瞬間を、はじめてみてしまった」と思う。
花本 はぐみ(はなもと はぐみ)
本作のメインヒロインで油絵科に所属。
花本修司とは父親が従兄弟という関係になる。
初登場時は大学1年生の18歳。
長野県安曇野市出身。
「はぐ」とか「はぐちゃん」と呼ばれることが多い。
芸術に関しては天性の才能を持ち、新進芸術家として注目を浴びている。
ただし、高校までの孤独な経験もあり、対人関係は苦手。
周囲からも天才だとみられ敬遠されており友人も少ない。
本人は絵が描ければいいと思っているが周囲が自由にさせてくれず、そのプレッシャーに耐えかねて体調を崩すこともしばしば。
外見・言動ともに子供っぽく大学生には見えず、4年生でも竹本とともに新入生の部活の勧誘にあっていた。
しかし意外と肉好きで、「肉食獣」なんて呼ばれたりもする。
また、妙な料理を作っては、竹本たちの胃を容赦なく責め立てる。
山田 あゆみ(やまだ あゆみ)
陶芸科に所属。
初登場は大学3年生の21歳。
愛称あゆ。
真山の同級生で、彼に片思いをしている。
かなり初期から、真山に想いが気づかれ、ほかの男を探すように言われるが、想いを捨て去れることができず、ずっと思い続けていた。
実家は浜田山商店街の酒屋で、商店街の若者(いろんなお店の三代目たち)からは本気で想いを寄せられているが気づかないようにしている。
大学にも山田のファンはたくさんいて、山田が森田をKOするたびに喝采があがる。
また、数合わせで合コンに呼ばれては、酔っ払い、気づけば山田ハーレムを気づきあげてしまうので「合コンの破壊神」と呼ばれている。
そのせいで、真山のところに女性陣から苦情がきてしまう。
真山 巧(まやま たくみ)
建築科に所属。
初登場時は大学3年生で、一浪しているため22歳。
石川県金沢市出身。
竹本の先輩であり、同じ風呂なしアパートに住んでいて、ときどき窓から竹本を呼ぶ。
山田から想いを寄せられていることはわかっていたが、原田デザインの社長である理花に片思いをしている。
しかし、山田を振っておきながら、山田にほかの男が近づくのを阻止しようとする一面もあり矛盾していると周囲から叱られることも。
かなり理花さんのストーカーと化しており、周囲からもやばいと思われている。
仲良しメンバーの中で、真っ先に卒業し、卒業後は有名建築デザイン事務所の藤原デザイン事務所に入社する。
1巻では、山田から合コンで女の子を持ち帰りしていることに対して苦情を言われるが、実際は山田に合コンを台無しにされた彼女の友人達の訴えを聞いてあげていたとのこと。
森田 忍(もりた しのぶ)
彫刻科(8年在籍後卒業)→日本画科(3年として編入)。
初登場は24歳で卒業を逃し続ける男。
竹本や真山の先輩で、金の亡者で、かなり傍若無人なふるまいが見られるが、実は他人思いで、大事なときにすっと現れたりする。
竹本と同様にはぐみに一目惚れするが、その想いの表現の仕方が独特で、当初、横で見ていた真山は気づかなかった。
才能にはあふれまくっていて、教授からも期待をされていたが、度々謎の長期のバイトが入って行方不明になり、単位数が足りなかったり、卒業制作の期日に間に合わなかったりして留年を続けていた。
周囲の目を気にしないため、自分の思ったままに過ごしており、校内の水道で体を洗ったり、服がなくなったからとカーテンをまとったり。
それでも周囲に流されない姿からか意外と女性からの人気は高い。
花本 修司(はなもと しゅうじ)
初登場時は30歳と少々の年齢。
年齢からかときどき哀愁漂う発言をする。
竹本達が通う大学の卒業生であり、美術史の教師。
寛容な性格で悩んでいる生徒達の相談にも乗る頼れる存在。
はぐみは従兄弟の娘という立場だが、父親代わりとなっており溺愛している。
はぐみに近づく男には容赦せず、はぐみの創作料理をおいしそうに食べられる数少ない人物。
学生時代は、理花と理花の夫だった原田と一緒に暮らしていた。
原田 理花(はらだ りか)
原田デザインの経営者であり真山の想い人。
北海道小樽市出身。
建築デザイナーとしては、若い頃からその才能が認められており、ファンも多く、真山が就職した藤原デザインの美和子さんもその一人。
大学に入った当初は「雪の女王」と呼ばれていた。
もともとあまり話が得意な方ではないが、気を許した相手ほど側で黙ってじっとしている。
大学卒業後、原田と結婚し、共に原田デザインを構えるが、雪の中、理花が運転しているときに他車のスリップ事故に巻き込まれる。
夫の原田は亡くなり、自身も後遺症が残るほどの重傷を負ってしまう。
事故のことを、「自分が運転しなければ」「その日に帰ろうとしなければ」と自分の責任であると責め続けていた。
それは原田のあとを追うのではと、花本修司がしばらく一緒に暮らすほど。
原田の残した仕事を完遂させようと、仕事は辞めずに続けていた。
しかし、事故以来、周囲との距離を置こうとして、花本や真山の優しさを理解しつつも、自分から遠ざかろうとする。
『ハチミツとクローバー』のあらすじ
美大に通う大学2年生の竹本祐太は、風呂なしのおんぼろアパートで暮らす。
同じアパートには、先輩である森田忍や真山巧が住んでいた。
森田は、大学一の「変人」で「問題児」。
竹本は強制的に髪を切られてお金を要求されたり、森田の呪いをかわすために森田が卒業の単位がかかった授業を寝過ごさないために、必死に起こしたりと日々振り回されていた。
竹本は、特になにか志や目標があって美大にきたわけではなく、家庭の事情から、自分の進む道がわからなくなり、手先が器用だったこともありなんとなく美大へと入った。
しかし、自分には特別な才能がないと身に染みて感じる竹本。
誰にも負けない才能があり、周りに振り回されない強さを持つ森田に対して憧れも劣等感も持っていた。
そんな大学2年生の春。
竹本は、大学の教授である花本修司から、親戚の娘でこの春から大学に通い始めた花本はぐみを紹介される。
無自覚のまま一目ぼれをする竹本と、その横で「人が恋に落ちる瞬間を、はじめてみた」と感じ入る真山。
その日、森田もまた、はぐみを一目見て特別な想いを抱くようになる。
真山は花本の紹介で働くことになった建築デザイン事務所の経営者・原田理花に想いを寄せていた。
理花は交通事故に遭って夫を失い、自らも後遺症で足に障害を抱えながら夫の遺した事務所で仕事をしていた。
理花を支えたいと思う真山であったが、理花はそんな真山の気持ちを知りつつ、遠ざけようとする。
真山は、理花から突き放すような態度を取られても、理花との接点を持とうと奔走する。
一方で、陶芸科に通う山田あゆみもまた片思いをしており、その相手は真山であった。
在籍する陶芸科ではその美貌と才能、明るい性格とで周囲を虜にし、酒屋の娘として付き合いのある商店街の若者からも、熱い想いを寄せられるあゆみ。
だが、真山からは、自分ではなくほかの男を探した方が早いとはっきりといわれるが、真山への気持ちを捨て去ることができずに苦しんでいた。
人見知りが激しく口数も少ないはぐみだが、あゆみとはすぐに仲良くなり親友となる。
やがて、竹本、真山、森田、はぐみ、あゆみは、所属や学年が違いながらも、花本の研究室によく集まるようになっていく。
そうした交流の中、はぐみもまた、当初は森田の変人ぶりや強引さに当惑し、敬遠していたが、彼の溢れる才能を認め、心惹かれていくようになる。
二人ででかけたときには、緊張から普段通りに振る舞えずに、花本に楽しくなかったと泣きつくはぐみであったが、花本はそれは恋なのだと一人思いに浸る。
一般的な恋愛とは違い、互いの作品で心を通わせる天才同士の二人。
二人を間近にしている竹本は、自分の恋が決して叶わないものだと悟りながらも、その中で精いっぱい生きようとする。
それぞれがそれぞれに恋心を抱きながらも、共に同じ時間を過ごすことで深い絆で結ばれていく五人。
だが、やがてそれぞれが自分の道を歩みだすようになり、別れの季節が訪れていく。
自分だけの人生を考え、悩み、葛藤をしながら選択をしていく。
片思いが切ない物語
「全員片思いの逆走ラブストーリー」
このキャッチフレーズに偽りなしですね!
全員が片思いをしながら、相手を想いながら学生生活を送っていく。
一緒にいることに幸せを感じながらも、自分に相手の気持ちが向いていないことに時には悲しみ、時には傷つき。
そうしながらも、人としても少しずつ成長していく姿がとても共感できます。
特に山田の真山に対する恋心は、とても切ない。
もう叶うことはないのだろうと思っていてもその気持ちを捨て去ることができない。
学生のころだとそういう経験をした人も多いのではないかなって思います。
「一度も口にしなかったのに
真山が私の気持ちに気付いてたように
あの女もすでに気付いていて応えずにいるのだとしたら
彼の恋もまたかなう事はないのかも知れない
ならばいつかこんな夕暮れに
彼も一人で泣くのだろうか
そんな事を思ったら
また涙が止まらなくなった」
(羽海野チカ『ハチミツとクローバー』1巻より)
真山にふられて泣く山田だけど、でも同時に真山の恋もかなわないのだろうかと真山を想いまた泣く。
そこまで思われてるんなら山田でいいじゃん!いやむしろ山田がいいじゃん!と思っちゃいますよね。
一方、そんな想いを寄せられている真山もまた、うまくアプローチができずにいます。
「恋をすると女の子はキレイになるっていうけれど
ダメだな男は―
―カッコ悪くなるばかり……」
(羽海野チカ『ハチミツとクローバー』2巻より)
相手の前でうまくやろうとか、どうにか気に入られようとかするたびに、空回りするのが男子って感じです。
この当時の真山の行動も、こういった気持ちもすごくわかりますね。
「必死の思いで―――
さんざんもがいて
なのに
わかった事はほんの少し
想うだけで
胸がやぶけそうに痛むこと
離れられない理由なんて
この痛みひとつで
じゅうぶんだということ―――」
(羽海野チカ『ハチミツとクローバー』5巻より)
恋というのは理屈ではないと思わされます。
恋愛だけでなく人生を見つめる物語
なんとなく恋愛が主題の漫画かと思いきや、それだけではないのが『ハチミツとクローバー』。
自分のやりたいことってなんなのだろうか。
自分の人生とは?
どう生きて生きていきたいのか。
なんてことも考えさせられてしまいます。
その中心となるのは、主人公でもある竹本くん!
竹本は、真山もはぐみも山田も森田も、みんながそれぞれ自分の道を歩みだしている中、自分一人が将来を見ることができずにもがいています。
就職もうまくいかず、かといって本当にやりたいってことも見つからず。
「4年の月日は自分を知るには短すぎ…
就職活動が始まってもオレはただうろうろと迷ってばかりで
―――でも気づいたんだ
なぜ迷うか
地図が無いからじゃない
オレに無いのは目的地なんだ」
(羽海野チカ『ハチミツとクローバー』5巻より)
そんな迷いまくりの気持ちは卒業制作にもばっちりあらわれて、なんともいびつな塔ができあがってしまったり。
そしてついには思い立ったまま自分探しの旅に出ます!
もうほんと青春だなー若いなーと思いながらもその純な姿がいいですね。
自転車で走る中でであった古い寺なんかを昔の形のままに直していく修復士の人たち。
仕事はできないけど雑用や食事作りをして、それを認められてなんだか先は見えていないけどそれに満足して、心を誤魔化そうとする竹本。
でもそれではだめなのだとつきつけられたときに、そこの棟梁が竹本に言った言葉もまたお気に入りです。
「気がすむまでとことん走ってこい
迷うなら迷う
走るなら走る
答えなんざどーでもいい
ハナからそんなものはねーんだ
「自分で本当に気のすむまでやってみたか」しかないんだよ」
(羽海野チカ『ハチミツとクローバー』7巻より)
まずは全力で自分の気が済むまでやってみろ、と。
そうする中で気づくこともあるだろう、と。
そんな自分探しの旅を終えて大学に戻って来た竹本は、それまでとは違って堂々としてたくましくなっています。
それで悩みや迷いすべてが立ち切れたわけではないけれど、先に進めるようになった竹本くん。
そうやって人は成長していくと感じさせられます。
おわりに
冒頭にも書いたように2006年に完結している作品です。
それなりに昔に完結した漫画ですが今読んでもまだおもしろい。
ずっと残していきたい漫画のひとつだなと思います。
羽海野チカが『ハチミツとクローバー』の次に描き始めたのが『3月のライオン』。
こちらは高校生棋士(将棋のプロ)を主人公とした物語です。
でも将棋がメインなわけではなく、こちらも人生を深く考えさせられる名作なのであわせて読んでほしいなって思います。
途中で少しだけ『ハチミツとクローバー』の登場人物も出てくるので、ハチクロ完結のその後が見れてそれもファンにとっては嬉しいところです。