本屋大賞

これは愛の物語である。小川洋子『博士の愛した数式』あらすじと感想。

数学が苦手な私は、タイトルで読む気がなくなっていたのですが、読んでみたらすごくおもしろい!

「なぜもっと早く読まなかったのか!」

と過去の自分に猛省を促したい。

今回読んだのは、小川洋子さんの『博士の愛した数式』です!

映画化もされているのでタイトルを知っている人も多いと思います。

それにこの小説、第1回の本屋大賞を受賞しているんですね。

第1回と言えば、伊坂幸太郎さんの『重力ピエロ』や、石田衣良さんの『4TEEN』がノミネートされていたんです。

それを超える支持を集めたと言えば、おもしろくないわけがなかったんですね。

ここでは、『博士の愛した数式』のあらすじや感想を紹介していきます。

『博士の愛した数式』のあらすじ

シングルマザーで家政婦の「私」。

ある日、家政婦組合から元大学教師の老人の家に派遣された。

依頼主は上品な老婦人(未亡人)で、亡き夫の弟の世話をしてほしいとのことだった。

私は、その老人のことを博士と呼んだ。

博士は、交通事故で記憶が80分しか持たない。

そのため博士の背広には、いたるところにメモが張り付けられている。

「僕の記憶は80分しか持たない」

記憶がリセットされるたびに、博士が何度も見てきたメモ。

博士には子どものような一面もあった。

考え事をしているときに話しかけると機嫌を損ねる。

食事は子どものように食べ散らかす。

そんな博士は、とにかく数学を愛していた。

私は、博士と一緒に過ごすうちに、博士が教えてくれる数学の世界に魅力を感じるようになっていった。

数学が嫌いでも愛せる物語

『博士の愛した数式』では、いろんな数式や数字にまつわる話が出てきます。

「数学って正直苦手……」

という人もいると思いますが、それとはまったく関係なくこの小説はおもしろい。

むしろ、数字が苦手な人にほど、この本と博士に触れて、

「意外と数字っておもしろいものなのかもしれない」

と思って欲しいです。

博士はいろんな数字に意味をつけることができます。

「私」の誕生日を聞いても、それと関連付けた数字の意味をぱっと思い浮かべる。

意味づけされた数字は、これまでにはなかった魅力を持って、そこに残る。

数字や数式を、ただそれだけのものとするのではなく、そこに価値を付与することができる。

それだけで目の前にあるものたちが少し輝いて見えます。

それって、数学に限った話じゃないんですけど、世界はこんなに美しいってことを教えてくれる物語です。

博士は愛にあふれている

博士が愛したのは、数式だけではありません。

最初は気難しくて、何人も家政婦が替わる風変りな老人だったのに、読んでいくうちに、

「なんて愛にあふれている人なんだろう」

と感じていきます。

「私」の息子であるルートに対しては、特にその愛情をそそぎ、ルートがわずかにけがをしただけで大変取り乱してしまう。

ルートがいるというだけで、汚い食事の仕方が、作法を守ったきちんとしたものになる。

苦手な歯医者にだっていけちゃいます。

それ以外にも、博士の愛を感じる部分はたくさんあるのですが、そこは小説でぜひ確かめてほしい。

人にはいろんな側面があり、深くつながっていく中でようやく見えてくるものもあるのだろうと思います。

おわりに

『博士の愛した数式』はもう20年ほど前の作品になります。

それでもいまなお色褪せない魅力をそこに秘めています。

長く受け継がれていってほしい作品の一つだなと。

文量としてはそこまで多くなく、優しい言葉で描かれた、優しい物語。

ぜひ一度手に取っていただけたらと思います。