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垣谷美雨『老後の資金がありません』老後は誰にでも訪れる!若者こそこれを読もう!

「老後が心配!」

という人は世の中に多いと思います。

年金をもらえる年齢は上がり、もらえる年金額は減少しています。

定年は延長されいったいいつまで働かなければいけないのだろうか。

心配にならないはずがないですね。

そんな老後に向けて勉強になるおもしろい小説がありました。

今回紹介するのは、垣谷美雨さんの『老後の資金がありません』です!

なんとなく老後どうするんだろうなと思いつつ、本屋さんをふらふらしていて目にとまった本です。

もうタイトルで「面白そう!」と思って即購入。

実際に老後に向けてあり得そうなことがたくさん書かれていて、とても勉強になりました。

ここでは『老後の資金がありません』のあらすじや、読んで学んだこと感じたことを紹介していきます。

Contents

『老後の資金がありません』のあらすじ

篤子は老後のために貯めていた1200万円があっという間に300万円を切ってしまったことに愕然とする。

これまで篤子は、節約を重ねて、本当だったら70歳まで払い続ける予定であった住宅ローンも繰り上げ返済。

二人の子どもも私立大学に通わせ、無事に学費もすべて払い終えて、ほっと一息ついたのがついこの間のことであった。

手元に残った1200万円の貯金だけでは心もとなかったが、夫は定年後もしばらく働ける予定になっているし、自分も働けばなんとかなるだろうと考えていた。

ところが、ここから篤子も予想しなかった出費が家計を襲うのだった!

娘の結婚が相手方の意向でまさかの派手婚!

総費用600万円の半分である300万円を準備することに!

新婚旅行や新生活の準備に200万円!

喜ばしい娘の結婚のはずがまさかの500万円の出費となるのであった。

さらに、舅が亡くなったことでその葬儀を夫が取り仕切ることになる。

その費用には400万!

1200万円あった貯金もあっという間に300万円となってしまったのであった。

さらに追い打ちをかけるように夫婦そろって長年勤めていた会社をクビになり……。

お金のことはみんなで考えたい

『老後の資金がありません』を読んで思ったのは、

「家族のお金のことはみんなで考えたいな」

ということでした。

それまで家計を預かるのは妻の篤子さん。

一人で切り盛りをして、ローンや子どもの学費を工面し、その中で貯金もして、とてもしっかりもののお母さんです。

だから夫の章さんも、「篤子がいるから大丈夫」なんてのんきに構えています。

妻を信頼して任せる……。

一見、それも悪くないようにも感じますが、章さんの場合、完全に考えるのをやめていただけでした。

お金の管理は任せていると当事者意識がまったくないし育たない。

その結果、章さんは、娘の結婚資金も出す、舅の葬儀も任せろと安請負をしてしまいます。

当然、どちらも家族のことだから、最終的にお金を出すことは問題ないですが、そこに至るプロセスがまずいですよね。

結局、お金がないのに……と頭を抱えるのは篤子さんばかり。

娘のさやかさんも、「お金大丈夫?」と篤子さんを心配するけれど、篤子さんは篤子さんで子どもに心配かけられないと強がってしまいます。

ふだんからみんなでお金の意識共有があるともっと違ったのかなと感じます。

お金が一番かかるのは見栄!?

篤子さんは夫の章さんを見栄っ張りと称します。

娘のさやかさんの結婚費用は600万円。

さやかさん自身は派手な結婚式がしたいわけでもなく、お色直しだって少なくしたい。

でも、お相手のご家族がスーパーを経営していて、世間体もあり、派手な結婚式を望んでいる……。

会場も麻布の高級な会場で、食事や贈り物にもこだわりそれは費用がかさむわけです。

相手側の希望でどうしてもとする高額な結婚式なのに、費用は半分だせというのは、読んでいてもひどい話だよなと感じます。

それに抗議したい篤子さんですが、章さんは、「みっともない真似はするな」というんです。

さて、果たしてみっともないのでしょうか?

相手側は親が経営者で資産的にもずっと上。

結婚式が高額になるのはすべて相手側の希望によるもの。

だったらある程度、そこは融通してもらいたいと思うのが自然なことかなと。

でも、それをみっともないという裏には、自分をそう見られたくないという気持ちが隠れています。

見栄ってのはなかなか恐ろしいものです。

『老後の資金がありません』の中では、結婚式以外にも葬式の場面でも似たようなことがあります。

篤子さんが葬儀屋さんと話していて、お金がないから安くすませたいと思いながらも、棺ひとつとってもランクがあって値段がぜんぜん違う。

ついつい、

「ほかの人はどのあたりを選ぶんですか?」

と聞いてしまいます。

そして、よせばいいのに、本当はこっちにしたいと思っていたのよりも、高額のものを選んでしまう。

そのあとになって、安く葬儀をすませた友人の話を聞いてショックを受けるんですね。

自分がこれと決めたものがあればいいのについその判断基準を、【他人がどう思うか】というところに委ねてしまう。

そこには見栄があり、プライドがあり、そうした感情というのは、とても大きな重荷になってしまうのだと感じます。

事前に考えたい葬儀のこと

『老後の資金がありません』では、二つの家庭の葬儀のあり方が描かれています。

一つは篤子さんの義父が亡くなったときのもの。

夫の姉から、葬儀はすべてやってほしいと言われ、費用も含めて安請負をしてしまう夫。

でも結局、葬儀屋さんと打ち合わせをするのは篤子さん。

義姉からは、葬儀は100人規模のものにしてほしいことや、地元の名士だったのでそれにふさわしいものをとプレッシャーを与えられます。

葬儀屋さんからも葬儀に関わる様々な提案を受けます。

棺一つとっても5段階の値段設定。

安く済まそうとする篤子さんに、「本当にそれでいいんですか?」と暗に高額なものを進めようとする葬儀屋さん。

篤子さんも不安になり、親族からの批判も怖くて、結局200万円にも。

さらにお墓が先祖代々のものには事情によって入ることができず、新しく作らなくてはならなくなりました。

その他もろもろ含めてトータル400万円という大出費です。

 

一方で篤子さんの友人であるサツキさん。

こちらは義父が亡くなったときに、葬儀社で安置室を借りて、親族だけでのお別れとしました。

出棺も霊柩車ではなく、寝台車を借り、焼き場に行くときも、それぞれが自家用車で向かう。

斎場で荼毘に付されている間に頂く精進料理も、形式にこだわらずに適当なレストランで食事。

かかった費用は、

安置室使用代が三万五千円、親族一同のお花が二万千円、寝台車使用料が二万五千円、祭壇(写真、棺、焼香台など込み)が九万八千円、骨壺が一万八千円、自治体に払う斎場使用料が二万円、ドライアイスが一万円で合計二十二万七千円とある。

「そのほかに、葬儀の夜に親族だけで自宅でお寿司を取ったりして、思い出話に花が咲いて朝まで飲んでしまいましたから、全部で二十五万円くらいですかね」

(垣谷美雨『老後の資金がありません』より)

となっています。

小説であり、かなり極端な例ですが、ものすごい差がありますよね。

サツキさんの場合、義父が生前に自分で葬儀屋さんに見積もりを取った上で、こうした形にしたいと希望したものでした。

だから、サツキさんたちもこうした形の葬儀とできたのでしょう。

実際に、自分たちだけだと、親の葬儀を簡易なものにするってのはなかなか難しいものです。

だからこそ、事前にそうした話をしたり、自分で自分が亡くなったときに備えて契約をしておいたり、エンディングノートを残したりとしていきたいものです。

おわりに

老後は誰にでもやってくるもの。

それはどうあがいたって避けることはできません。

だからこそ、そこに向けてできるだけ若いうちから考えておきたいものですね。

『老後の資金がありません』は、その考える第一歩としては、わかりやすく楽しく読めるのでとてもおすすめな一冊です。

これを読んだうえで、もう少し細かい老後に向けた本を読んでいくとスムーズに考えられるかなと思います。