何をもって人の死とするのか。
親の想いとそれに翻弄されていく周囲の様子がリアルに描かれています。
今回紹介するのは、東野圭吾さんの、
『人魚の眠る家』です!
2015年に単行本、2018年5月に文庫本が出されています。
2018年の文庫本売上ランキングでは2位を獲得した人気作です。
Contents
『人魚の眠る家』のあらすじ
播磨薫子は、夫の和昌と一年前から別居状態にあった。
二人目の子どもを妊娠中に和昌が浮気をしたことが原因であった。
離婚を考える二人だったが、娘・瑞樹の小学校受験が終わってからと約束をして、仲の良い夫婦を演じていた。
ある日、受験対策教室を受けていた薫子と和昌に訃報が届く。
瑞樹がプールでおぼれて意識不明の状態に。
医師からは回復の見込みはなく、「おそらく脳死」であると告げられる。
悲しみに暮れる間もなく、医師から娘の臓器提供をする意思はあるかと確認をされる。
意思があるのであれば、脳死判定を行い、移植手術を待つ子どもたちへと臓器提供を行い、ないのであれば、このまま延命治療を行うと。
一晩話し合った二人だったが、もし瑞樹だったら、苦しんでいる他の子どもたちのために提供してほしいと考えると結論付け、いったんは臓器提供の意思を示す。
しかし、直前で弟の呼びかけに娘の手が反応する。
「この子はまだ生きている!」
薫子はそう叫び、自宅療養の道を選ぶ。
それは次第に周囲をも巻き込んでいくことになる。
2018年に篠原涼子さん主演で映画化!
2018年11月16日から全国公開となりました。
キャストは、
篠原涼子:播磨薫子(瑞樹の母親、娘の自宅介護を決意する)
西島秀俊:播磨和昌(薫子の夫、IT機器メーカー・ハリマテスクの社長)
坂口健太郎:星野祐也(ハリマテスク社員、瑞樹の身体を動かすことに尽力)
川栄李奈:川嶋真緒(星野の交際相手)
山口紗弥加:美晴(薫子の妹)
田中哲司:進藤:(脳外科医、瑞樹の主治医)
稲垣来泉:播磨瑞穂(薫子の娘、プールでおぼれて脳死状態に)
斎藤汰鷹:播磨生人(瑞樹の弟、姉のことでいじめられる)
荒川梨杏:若葉(美晴の娘で瑞樹のいとこ)
松坂慶子:千鶴子(薫子と美晴の母、プールで瑞樹の面倒を見ていたため、事故に責任を感じている)
となっています。
篠原涼子さんの母親役、特に娘を想う役というのがとてもしっくりきています。
主題歌は絢香さんの「あいことば」となっています。
もしも自分が同じ立場になったら?
この『人魚が眠る家』の内容って、子どもを持つ親からすると他人事ではないですよね。
こういったケースはとても少ないですが、もし自分が同じ立場になったらと思わずにはいられません。
私自身が脳死状態となったのであれば、臓器提供をしたいと思います。
どうせ死ぬのなら最後に誰かの役に立てればいいなと思いますし、回復の見込みもなく、延命治療のためだけに家族に負担もかけたくないです。
でも、自分の娘がそうなったときにその決断ができるかというととても難しい。
もしも娘だったら臓器移植をするだろうとわかっていても。
これ以上決して回復することがないとわかっていても。
それでも自分たちで娘は死んだのだという判断をすることはできないような気がします。
決して起きない方がいいことではありますが、もしもそうだったらと夫婦で話すきっかけとなりました。
日本の臓器移植事情がわかる一冊
本の中で、海外だと日本のように脳死判定をするか、判定をせずに延命治療をするのかを選ぶのではなく、回復の見込みがない時点で治療を打ち切る国もあるという話がありました。
というか、日本が特殊みたいですね。
その場合、脳死と判断されたらそのまま臓器移植の対象となるようです。
でも日本はそうした方面で臓器提供が少なく、日本では臓器移植が受けられずに何億という高額を払って海外の移植手術を受けるケースがあると。
海外では、もちろんその国の人を優先して移植手術をしたい。
でも状態が切迫している人から優先して手術をすることになる。
そのために、海外からの希望者には高額の治療費を請求するという事情もあるそうです。
日本がお金で治療を買っていると揶揄されているという話も出てきていました。
日本での臓器提供が増えればこうした問題は少しずつ減っていくのでしょうが、とはいえ臓器提供をしない人が悪いとは言えないので余計に難しく感じます。
『人魚の眠る家』では、
〇家族の問題
〇母親の娘への愛
〇臓器移植に関わる日本の問題
〇海外の臓器移植の事情
と多岐にわたることが考えさせられました。
おわりに
東野圭吾さんの作品は、様々読者に考えるきっかけを与えてくれます。
今回の『人魚の眠る家』や『赤い指』、『手紙』といったように、家族について考えさせられる作品が特におもしろいなと感じます。
こうした作品を読んだことから、少し家族で話をしたり、親に連絡を取ろうと思うことも。
ただ読んで面白かっただけで終わらないのが東野圭吾さんの作品の素敵なところです。