日本橋という街に行きたくなります。
今回紹介する本は、東野圭吾さんの、
『新参者』です!
『加賀恭一郎シリーズ』の8作目になる作品ですね。
阿部寛さんが主演で映画にもなっていました。
加賀刑事役が非常に似合っていましたね。
Contents
『新参者』のあらすじ
日本橋署に転任をしてきた加賀恭一郎。
40代の独身女性がマンションの一室で絞殺された事件を追うことになります。
事件当日に、被害者宅を訪れていた保険の外交員。
被害者宅に残されていた人形焼き。
離婚をした被害者の元夫。
その元夫の側にいる若い女性。
浪費家の夫婦。
事件を追う中で出てくる一つ一つの出来事を、丁寧に解きほぐしていきます。
実際には事件とは関係のなかった出来事も、すべてがきれいにつながり、真相へと導かれていきます。
ピースを集めてはめていくという言葉がとても似合う小説です。
『新参者』の舞台となる日本橋という場所
『新参者』を読んでいて、事件の内容とは関係なく、
「日本橋に行ってみたい!」
と思わされました。
というのも、この『新参者』の中には、日本橋の風景や雰囲気が伝わる描写が、いたるところに散りばめられています。
『新参者』に出てくるお店だけでも、
〇瀬戸物屋
〇料亭
〇刃物専門店
〇洋菓子屋
〇民芸品店
〇人形焼きのお店
〇時計専門店
などが挙げられます。
これらが通りに立ち並んでいるのを想像するとすごく楽しそうです。
以前に、『加賀恭一郎シリーズ』の『麒麟の翼』を読んだときは、その麒麟の像を見に行きましたが、お店を見て歩くことはしていなくて惜しいことをしたと思いました。
また、日本橋という場所だからでしょうか。
短編一つ一つに人情味あふれるエピソードが多く、少しほっこりとします。
加賀恭一郎の刑事としての信念
『新参者』の中では、実際に事件とは関係のない出来事が出てきます。
でも、加賀は、
「事件とは関係ない」
では終わらせません。
『新参者』の中でこんなセリフがあります。
”刑事の仕事はそれだけじゃない。事件によって心が傷つけられた人がいるのなら、その人だって被害者だ。そういう被害者を救う手だてを探しだすのも刑事の役目です”
こういう気持ちでどれだけの人が行動することができるでしょうか。
仕事であれば、仕事としての部分をやりさえすればいいですもんね。
でもそこを越えて誰かを思いやれるところに惹かれます。
現実でも、何か事件があれば、直接は関係なくてもそれによって傷つけられる人が必ず出てきます。
もし、こうした思いを持つ人が世の中にたくさんいれば、もっとみんな笑顔でいられるのかなとも思いました。
親と子の関係を学ぶ
『新参者』では、いくつかの親子が出てきます。
その中でも、一番心に残ったのは、浪費家の夫婦とそれを助けてしまう父親です。
ダメな息子でも、自分の子どもだと可愛いものです。
息子のダメな部分をわかっていながら、そこを叱ったり、指導したりするのではなく、なんとか助けようとしてしまいます。
その姿を見た刑事が言ったセリフです。
”かわいがることと大切にすることは違うんですよね。大切にするっていうのは、その子の将来のことまで考えて、その子にとって一番いい選択をし続けるってことなんだ”
この刑事自身も、自分の息子が無免許でバイクを運転して捕まったときに、同僚に見逃してもらった過去があります。
そのため、息子は、父親が刑事だから見逃してもらえると無免許運転をまた行い、事故にあって亡くなります。
その後悔から出たセリフでした。
仕事でいろんな親子を見ていますが、子どものために考え行動できる人もいれば、
「それは子どものためではなく、自分のためですよね」
と思わされる親もいます。
私自身も、子どものことを考えて、どうすればいいかと考えていこうと思っていますが、ただかわいがるだけで終わってしまわないようにしないといけません。
終わりに
東野圭吾さんの『加賀恭一郎シリーズ』は、東野圭吾作品の中でも、外れのない読み応えのあるシリーズです。
ただ事件を追うだけでなく、人間関係に言及したものが多い点がとても好きです。
この次の作品になる『麒麟の翼』もぜひ一緒に手にしてほしい一冊ですね。
連休などに一気読みしてみると楽しいかもしれません。