〈加賀恭一郎〉シリーズ

『どちらかが彼女を殺した』の犯人とトリックは?東野圭吾の謎を見抜けるか。

ミステリーを読むとき、

「自分で犯人を当ててみせる!」

という人もいれば、私のようにのんびりのトリックを読んで、

「すごいなー」

と楽しむ人もいます。

この作品は、自分で犯人を特定しようとしている人にはうってつけです!

 

今回紹介するのは、東野圭吾さんの、

『どちらかが彼女を殺した』です!

 

東野圭吾さんの<加賀恭一郎>シリーズの3作品目にあたります。

ネタバレもあります!

小説を読んでない人は、あらすじだけ読んでその後は読まない方がいいと思います。

 

Contents

『どちらかが彼女を殺した』のあらすじ

和泉康正は、愛知県の交通課の警察官として勤務をしていた。

金曜日の夜に妹の和泉園子から電話がかかってくる。

 

ふだんと違う様子の園子。

園子は、信じていた相手に裏切られたと告げる。

康正が男かと問うが、それには答えず、

「お兄ちゃん以外、信じられなくなった」

と園子は口にする。

 

康正は、翌日に愛知に戻るように伝え電話を切る。

しかし、翌日になっても園子は現れなかった。

電話をしてもつながらない。

不安になった康正は、仕事終わりの月曜日に東京の園子のアパートへと行くことに。

 

アパートに行き、合い鍵を使って部屋に入った康正は、ベッドに横たわり死んでいる園子を発見する。

園子には、電源コードとタイマーが繋がれており、感電死による自殺に見えるが、部屋の状況から康正は自殺ではないことに気づく。

康正は、すぐに警察に連絡するのではなく、たった一人の家族を奪った犯人に復讐をするため、自らの手で犯人を暴くことを決意。

現場から証拠となるものを持ち去り、警察には自殺に見えるように偽装を施した。

 

康正が捜査を進める中で、容疑者が2人浮かび上がっていく。

園子のかつての恋人であった佃潤一。

園子の親友である弓場佳世子。

果たして犯人はどちらなのか。

 

一方で警察の中でも加賀恭一郎だけは、自殺という考えに疑問を持ち、独自に捜査を進めていた。

 

読者が犯人を特定する小説!

『どちらかが彼女を殺した』の大きな特徴は、2つ。

 

1つ目は、小説の主体が加賀恭一郎ではなく、和泉康正であることです。

康正が妹を殺した犯人を追っていく物語となっており、加賀はその裏で、ヒントを与えたり、康正に復讐をやめるようにさとしたりする役ところとなっています。

 

2つ目は、犯人が最後までどちらかはっきり書かれていないこと!です!

 

私は一回目に読んだときはそのことを知らず、

「どうなるんだろう?わくわく!」

という気分でのんきに読んでいました。

そして、終盤の怒涛の展開のあと……。

「あれ?犯人どっちだったの?」

と謎に包まれていました。

そのあと、犯人につながるヒントはあるので、読者が謎を解くのだと知りました。

 

しばらくしてから、犯人を考えようと思い二回目に挑戦!

今度は意識して読んでいったのですが、

「むむっ!わからぬ!」

そして、文庫本の最後にあるヒントのページを見てようやくわかりました。

 

わかるまではかなりもやもやとしましたが、これだけ真剣に小説が読めるのはとてもいいことです。

 

実際に犯人は2人のどちらなのか(ネタバレ注意!)

小説を読んで自分なりの答えを出したあと、他の人の記事を見て答えが一緒だったことに安心をしました。

 

小説を最後まで読んでいくと、自殺ではなくどちらかが殺したということまでは教えてもらえます。

最後の決め手の部分で佃潤一か弓場佳世子のどちらなのか。

 

小説の終盤では、事件当日の動きが明らかにされていきます。

最初に佃が園子を殺そうと考え、睡眠薬を飲まし、自殺に見せかけて感電死させる準備をします。

そこに同じ日に園子を殺そうと思っていた弓場が訪れます。

二人は園子が残していた手紙を読み、殺害をやめようといったんアパートをあとに。

しかし、その後、再びアパートに訪れた犯人が、園子を自殺に見せかけて殺害しています。

その際に、自殺に見せかけるために二つ目の睡眠薬の袋を開けます。

佃と弓場は、二人が帰った後、園子が自殺をしたのだと主張します。

 

『どちらかが彼女を殺した』の犯人を特定するポイントは『利き腕』になります。

 

被害者である和泉園子は、書いたり箸を使ったりするときは右手を使いますが、それは矯正されたもので、実際は左利きです。

加賀は、園子の部屋にあるバドミントンのラケットのグリップや、園子の封筒の開け方に着目して左利きだと断定します。

 

部屋に残された二つある睡眠薬の袋のうち、最初に使われた睡眠薬は、佃潤一が破ったものであると話の中で出てきており、そちらは右利きの開け方がされています。

ではもう一つの睡眠薬がどのような開け方をされているか。

 

もしも二つ目の袋が左利きの開け方であれば、自殺の可能性も出てくるのですが、加賀が自殺ではないと断定していることから、二つ目も右利きの開け方をされていることになります。

 

では、佃か弓場かどちらが二つ目を開けたのか。

佃はすでに右利きであることがわかっています。

弓場も右利きであれば、どちらが犯人かはわからなくなってしまいます。

 

しかし、小説の終盤で、弓場が自分で睡眠薬の袋を開けて飲むシーンがあります。

そのときのことに気づいた康正は、犯人が誰であるかを確信します。

ここで犯人がわかるのは、弓場は左手で袋を開けていたときだけです。

 

従って、二つ目の袋を開けていたのは佃潤一ということになり、偽装を施して園子を殺した犯人は、『佃潤一』となります!

 

終わりに

もともとミステリー小説は好きですが、自分で考えるのは苦手でした。

なので、この『どちらかが彼女を殺した』は頭を使ういい機会となりました。

個人的には、はっきり言ってくれた方がいいんですがたまにはいいですね。

 

<加賀恭一郎>シリーズの『私が彼を殺した』も同様に犯人を特定しない小説になります。

こちらも頭を悩ます面白い小説なのでぜひ手に取ってみてください。