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片山修『豊田章男』現場にいちばん近い社長でありたい。トヨタはこうして大企業であり続ける。

誰もが名前を知っている大企業、トヨタ自動車株式会社。

豊田喜一郎が創業した有名企業です。

豊田章男氏は、その豊田喜一郎の孫にあたる三代目。

一般的に、社長を息子が継ぐときって、「ああ、そういうものなんだな」と見てしまいがちですが、これほどの大企業になると、そんなに簡単なものではないことがわかります。

御曹司と揶揄されたり、三代目の坊っちゃんと偏見の目にさらされて生きてきます。

しかし、トヨタのリコール問題や、東日本大震災を乗り越え、名実ともにトヨタ社長としてリーダーシップを発揮する豊田章男氏の姿がこの本からわかります。

Contents

『豊田章男』の内容

『豊田章男』では、いきなり社長としての豊田章男氏を紹介しているわけではありません。

彼がどういう人物なのか、なぜそういう人物となりえたのか。

前半はそれを知るために必要な要素が盛り込まれています。

幼少期や学生時代の体験。

新入社員としてトヨタに入社してどういった扱いを受けてきたのか。

若いときから現場が好きで、わからないことがあれば、直接現地に行って知ろうとする姿。

ときには、御曹司と揶揄され、ときにはそれを関係なしとりつけてくれる暖かい存在と出会い、共に同じ方向を向いて歩んでくれる仲間を見つけ……。

そうした様々な経験が豊田章男という人間を形成していきます。

また、豊田章男という人間のもう一つの顔であり、ドライバーの「モリゾウ」に焦点をあてた章。

豊田章男氏とイチローの対話も見逃せません。

後半は、経営者としての豊田章男氏。

波乱に満ち溢れた社長就任から、トヨタ車のリコール問題の対応。

アメリカの公聴会出席にまつわるエピソード。

東日本大震災という未曽有の危機。

ただ経営者として上にいるだけでは、乗り越えることのできない多くの問題と直面し、失敗もしながら自身の軸をずらすことなく、リーダーシップを発揮する姿がみられます。

トヨタが大企業であり続けるのは、今のトヨタに慢心することなく、変革・改革の必要性を感じ、率先して進んでいく豊田章男氏の姿にあるのだと感じさせられる内容となっています。

「現場にいちばん近い社長でありたい」

『豊田章男』を読んで一番大切なのは、このことだと思います。

「現場にいちばん近い社長でありたい」

その信念のもと、実際に現場を見て、なにが必要か、どうすればいいのかを考える姿勢が、多くの職場で抜けている感覚なのだろうと感じます。

トヨタに入社してすぐに、経理部に配属される予定が、現場を知りたいといい、工場勤務を願い出ます。

会社を知るのに、現場を知らなくては何もできないという思いがあったのでしょう。

社長になってからも、行動が違うなと思います。

視察を行うこと一つとっても、ふつうであれば、事前にいつ社長が視察に来るという情報が流れます。

視察を受ける側は、大慌てで清掃をしたり、体裁を整えたり、大量の資料を用意したりします。

でも豊田章男氏はそういうことを嫌う。

実際の現場の姿が見たいのだといいます。

あらさがしをするために視察するのではなく、トヨタを良くしていくために必要なことを探しにきているということですね。

実際に私の職場でも、偉い人が来るとなると、見せていい部分と見せられない部分がはっきりとわかれますし、ふだんではないくらい、いろんなところが片付けられます。

なんのための視察なのかと思いますよね。

そういう姿勢があるからこそ、いち早く現場の声を聴くことができ、会社をよりよい方向に導く方策を考えられるのだと感じます。

豊田章男氏の提唱する「7つのムダ」

『豊田章男』の中で印象的だったのは、「7つのムダ」という言葉です。

「生産現場の7つのムダならぬ、事技職場の7つのムダを定義し、意識変革、改善活動に取り組んだ。7つのムダとは、「根回しのムダ」「会議のムダ」「資料のムダ」「調整のムダ」「上司のプライドのムダ」「マンネリのムダ」「ごっこのムダ」――である」

(片山修『豊田章男』第7章「慢心」より)

この「7つのムダ」について、職場を思い浮かべると、誰しもがそのとおりだなと感じるのではないかと思います。

私の職場でも、本当に上記のムダのなんと多いことか。

誰も聞いていないような話を延々と聞かされる会議を企画し、そのための大量の資料を用意し(ほとんどは終わったらシュレッダー)、事前に現場と上司との間で調整を行い……。

マンネリも本当にそのとおり。

かといって、新しいことを始めようとすると、必ず、

「これがうちのこれまでのやり方だから」

とよく考えもせずに反対する人たちがいる。

そしていつものやり方の中で、少しずつ惰性が生まれていく。

上司のプライドなんてもってのほかですよね。

こうしたムダをなくすためにはどうしたらいいかって、部下の側からだとなかなか変革するのが難しい部分です。

上に立つものが、「これはムダだったんだな」と気づいて、そのために動いてくれて初めて変化が出てくるのだと思います。

ピンチはピンチ?それを口にしないことの大切さ

もう一つ『豊田章男』との中で気に入った部分が下記になります。

「僕だって、ピンチはピンチと思っている。でも、僕がピンチと言ったらおしまいでしょう?だからピンチはチャンスだと言うんです」

(片山修『豊田章男』より)

よく「ピンチはチャンスだ!」と声高にいう人がいて、どうにも個人的にはすっきりとしませんでした。

でも、豊田章男氏のこの言葉を読んですごく納得。

やっぱりすごい経営者でも、リーダーでも、ピンチはピンチだと感じているのだと。

その上で、自分がそれをピンチだといってはいけない、それは乗り越えなければいけない場面なんだと思っているのだと。

苦しい場面になって、「ああ、これは困った!」と思うよりも、「どうすればいいのか」という点に意識を向けることができているからこその発言ですよね。

いまだに「ピンチをチャンス」ということ自体には抵抗がありますが、ピンチだろうがなんだろうが、そこは後ろ向きになっている暇なんてなんですから。

そういう場面でどう行動するのか、そのために気持ちをどう持っていくのかが大切だあることが学べました。

おわりに

このほかにも、『豊田章男』の中にはぜひ読んでほしい部分がたくさんあります。

豊田章男氏の経営者としての考え方。

経営者とは別の人間としての顔。

イチローとの対談から見る二人の共通点と偉大な人間の言動。

私たちにたくさんのことを教えてくれる内容になっています。

最近、車を購入しようと考えているときにこの本を読んだので、気持ちもぐっとトヨタ車を購入しようかなという方向に流れてしまいますね。

人間として、経営者として、会社や職場として……。

いろんな角度から学ぶことのできる一冊でした。