人は生まれながらに平等か。
そう言われれば、
「平等なわけないじゃん」
というのが正直なところ。
生まれた時点で裕福な家庭に生まれたか貧しい家庭に生まれたかでそもそものスタートが違う。
見た目だって才能だって、ある程度は遺伝的な要素に頼る部分があるし、同じ努力をしたとしても、明らかに成果が出る人とどれだけ頑張ってもほどほどにしかならない人だっている。
「本人のやる気と努力と気力があればなんだってできる!」
なんていう人は、たいがい本人が恵まれている部分があるからなんだろうなって思います。
だから、他人を羨むのだって仕方ないし、
「あの人は恵まれている」
という感情はふつうのこと。
先日読んだ新川帆立さんの『倒産続きの彼女』の主人公である美馬玉子もそんな一人。
自身の容姿を客観的に見て美人とは思っていない。
だから少しでもよく見せようと努力するし、男ウケするようなキャラも作る。
合コンの場では相手が望むような人物を演じて、職場でも人間関係維持のために下手に出てみたり。
同じ法律事務所の一年先輩である剣持麗子に対しては、自分が持っていないものをたくさん持っている姿に嫉妬の気持ちも抱いてしまう。
そんなどこにでもいるような感情を持った人物です。
『倒産続きの彼女』は『元彼の遺言状』の続編なんですね。
前作の主人公であった剣持麗子は、相変わらずの傍若無人っぷりを発揮しながら玉子を引っ張っていきます。
やはり読んでいてテンポもよく、すっきりと進むのでおもしろい。
麗子と玉子を比べると、読者的にもついつい、キャラの立っている麗子に目がいってしまいますが、玉子もまた読み進めていくとその魅力が徐々に開花していきます。
本作は、たくさんの要素が詰め込まれ過ぎていて、ちょっとごちゃごちゃしたところはあるんですが、玉子の人間的な成長はとても好き。
序盤の自分を低く見積もって、それ相応の行動を取らないといけない、と考えてしまうところは読んでいてなかなかに不満を持ってしまう。
それは自分自身もそんな部分があったからだと思う。
女性としての魅力が足りないのだからこのあたりの男性がちょうどいい、とか、なにかにつけて自分の希望よりも、自分にあった程度を考えてしまう。
すごくわかるからこそすごく嫌な考え方。
自分の好きなものを堂々と好きと言えない。
自分のやりたいことを周囲を気にせずにすることはできない。
「でも、それって仕方ない」
そう思ってしまう現実ってやつも嫌になる。
それでも、自分はどうしたいのか、自分の気持ちはどこにあるのか、そうしたことも考えることができる作品ではあった気がします。
他人と比べたって意味がないことって本当にたくさんある。
そのことを知ることができるか、知らずに比べ続けて生きていくか。
知ったとしても受け止め消化できるかはその人次第でも、知ることって大きいよなって感じます。
ただ、個人的には『元彼の遺言状』のほうが好きでしたけども。
倒産に絡んだ首謀者側の理屈も動機もどうにもすっきりしませんし、裏組織っぽいものって現実味が一気に落ちるからどうにも。
そういう組織だから、でなんでもありになっちゃうこともあるんでどのレベルにするかって難しいのだとは思いますけど。
そうは言いつつも、このシリーズが続くならまた読みたいし、剣持麗子にはもっと活躍してほしい。
麗子の前作からのちょっと優しくなったところとか、気遣いを覚えたところとか、お相手さんの話がちょろっと出てきたへんとか、それもそれで楽しかったです。