『世界がもし100人の村だったら』
池田香代子 再話 C.ダグラス・スミス 対訳
この本は、2001年にマガジンハウスから出版されました。
一度読んだことはあったのですが、久しぶり手に取って読み返したので紹介します。
本書の冒頭はこんな文章から始まります。
中学校に通う長女の担任は生徒たちに、毎日メールで学級通信を送ってくださるすてきな先生です。
そのなかに、とても感動したメールがあったのでみなさんにも送ります。
少し長くてごめんなさい
『世界がもし100人の村だったら』は、この冒頭の文章のように、インターネット上をメールを介して広まった物語です。
メールを受け取った人が、それを次の人に送り、また次の人へ。
そうやってたくさんの人に読まれてきました。
この物語のオリジナルを書いたのは、アメリカのイリノイ州出身の環境学者ドネラ・メドウス教授とされています。
「ザ・グローバル・ヴィレッジ 村の現状報告」という題名で、世界をひとつの村にたとえ、人種、経済状態、政治体制、宗教などの差異に関する比率はそのままに、人口だけを1000人に縮小して説明したものです。
それがネットを介して伝えられていくうちに、1000人から100人に人数が減り、また部分的に削除されたり、逆に加筆されたりした内容もあります。
世界には63億人の人がいますが、もしもそれを100人の村に縮めるとどうなるでしょう。
100人のうち52人が女性です。48人が男性です。
70人が有色人種で30人が白人です
このあとも、
100人のうちアジア人が何人で、ヨーロッパ人が何人で……
異性愛者が何人で、同性愛者が何人で……
キリスト教が何人で、イスラム教が何人で……
といった形で、100人になった世界村にどのような人たちが暮らしているかを教えてくれています。
日本では、「ある学級通信」という題名で広まっていました。
中野祐弓さんがアメリカで働いていたときの元同僚からメールで受け取り、日本語に訳したものが最初であるとされています。
このときにはまだ、「ある学級通信」という題名がつくような冒頭の内容はなかったそうです。
人から人へと伝わる中で、たくさんの人の想いが込められて、形を変えながら更に次の人へと受け継がれていったことに、この物語の価値があります。
フジテレビのドキュメンタリー番組としてもこれまでに2003年から2009年までに6回放送されていました。
世界の過酷な状況で生きる子どもたちを取り上げた番組です。
私も一度だけ見たことがありますが、3回目のフィリピンのゴミ山で働く少女を取材した内容でした。
この本は、日本に暮らす私たちがどれだけ恵まれた国で、恵まれた暮らしをしているのかを教えてくれます。
そして、私たちが知らないところで、貧困や病、紛争に苦しんでいる人たちがいることを教えてくれます。
食べ物を満足に得ることができなく、安全な水も手に入らない、雨が降ってきてもそれをしのぐことができない、そんな生活を私は想像ができません。
空爆や襲撃や地雷、武装集団におびえながら暮らす生活を想像することができません。
大学の教育を受けることができるのも、100人の村人のうち、たった1人なんですね。
私自身、ほんとうに知らないことが多すぎるなと感じさせられました。
本書の最後には、
まずあなたが愛してください
あなた自身と、人がこの村でいきてあるということを
もしもたくさんのあたし・たちがこの村を愛することを知ったならまだ間にあいます
人々を引き裂いている非道な力からこの村を救えます
きっと
とあります。
世界村に住む1人として、この一文に込められた想いを感じていければと思います。